『アザー・ハーフ』 - 中国インディペンデント映画 -

 中国インディペンデント映画祭での上映作品。四川省の地方都市を舞台に地方都市の閉塞感、生活感覚を伝える映画。

 恋人と同棲している小芬は弁護士事務所でクライアントとの相談内容を記録する書記の仕事にありつく。彼女は毎日離婚の相談、労働問題の相談、さらに化学工場に勤めていて健康被害を受けたから会社を訴えたいという労働者からの相談等々、今日の中国の日常生活に起こるありとあらゆる問題を記録していく。
 一方彼女自身も問題を抱えていた。同棲する恋人は職もなく、毎日酒とギャンブルに明け暮れている。日中はぶらぶらし、彼女が疲れて帰宅すると、友だちと酒を飲むといっては出かける毎日。たまに彼女に近寄ってくる時は金の無心。周囲からはあんなろくでなしさっさと見限って、まともな男と見合いするようしつこく勧められるが、彼女には恋人と別れる気はない。
 そんなある日、恋人が突然どこからか大金を持ってきたと思ったら、その翌日忽然と姿を消してしまった。心配になって幼なじみの警察官に相談に行く小芬。しばらくして彼が会社社長殺人事件の容疑者として指名手配されたという連絡を受ける。
 やがて、その町最大のベンゼンを生産している化学工場が爆発事故を起こす...

 本作品の物語には3つのレイヤーがある。1つめは毎日法律相談に訪れる人々の相談。ここでは中国の民衆が日常的にどのような生活問題に直面しているのかが語られる。2つめは小芬自身をめぐる物語。ここでは地方都市における人々の閉塞感、そこからの脱出を図ろうともがく人々の姿。3つめは映画の背景に流れる広報放送やニュースのレイヤー。このニュースや放送の内容が中国の日常社会における公共性レベルの空気を伝える。ここでは地元の最大の化学工場の環境汚染疑惑のニュースが流れたと思うと、それが一転して市や省当局によって、優良工場としての認定を受けたというニュースが流れる。それにも拘わらず化学工場は爆発を起こし、毒ガスが市内に流れ出し、人々は避難を余儀なくされる。やがて、広報放送で「爆発は収まりました」と放送が流れるのだが、警察当局を含めて誰も信用せず、市外に避難を進める姿が描かれる。つまり公共性が崩壊しており、一般民衆は誰も公権力を信用していない、そういう日常感覚がリアルに描写されているのだ。
 このような構成を取ることにより、プライベートから公共レベルに至る、中国民衆の生き生きとした日常生活感覚が巧みに活写されている。

 監督の応亮は1977年上海生まれ。北京師範大学を経て重慶大学映画学部監督コース卒業。2005年の長編処女作『アヒルを背負った少年』で国際的注目を集め、本作品は第2作。

原題『另一半』監督:応亮(Ying Liang)
2006年中国映画(DVCAM)

中国インディペンデント映画祭公式ページ
http://cifft.net/

応亮監督インタビュー (World Socialist Web Site 英語)
http://www.wsws.org/articles/2008/nov2008/ying-n15.shtml

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