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zoom RSS 吉野直也著 (2016) 『「核なき世界」の終着点』 - 書籍

<<   作成日時 : 2018/06/11 18:13   >>

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吉野直也, 2016,『「核なき世界」の終着点: オバマ対日外交の深層』,日本経済新聞出版社

 トランプ当選直前に出された(また安倍首相真珠湾訪問前に編集終了)、日経新聞記者によるオバマ広島訪問をめぐるルポルタージュ。
 私としては、おおむね予想通りの内容であった。ただ、言及に値する点としては、オバマ大統領は就任後早い時期に広島訪問を探っていたが(おそらく2009年11月の初訪日時に)、日本政府はその際はオバマ大統領の広島訪問にネガティブな態度を取っていたこと、そして、最終的にオバマ政権内で最もオバマ大統領の広島訪問に反対していたのは、コンドリーサ・ライスであった点を指摘している点であろうか。

 前者に関しては、2009年8月のジョン・ルース駐日大使−藪中三十ニ外務次官 (いずれも当時)の会談において、藪中次官が「時機が熟していない premature」としてオバマ広島訪問を断ったことが、ウィキリークス文書によって明らかになったことを指摘している(pp. 52-55)。これについて、藪中氏は取材(pp. 68-71)に対し「premature」と言ったこと自体は否定しているが、しかしオバマ広島訪問にネガティブだったことは認めている(「大統領が相互訪問で広島や長崎に行くのはあまり感心しないと(ルース氏に)言った記憶はある」(p. 70))。また、ルース氏は、藪中氏がオバマ広島訪問自体に否定的であったとは考えていないが、細部の調整や準備がかなり必要であり、藪中氏はそのことを指摘していた旨回答している(p. 89)。但し、ワシントンポスト紙のデビッド・ナカムラ記者は、ウィキリークス文書は信用できるし、ルース大使から、日本政府がオバマ大統領訪問を快く思っておらず、なぜ今オバマ大統領が広島に行くのか理解できないと言っていたとの話を聞いたと答えている(pp. 212-214)。

 2017.9.20に始まった「核兵器禁止条約」の発効手続開始に日本政府が反対した1)ことの伏線がこの頃からあったということであろう。


 後者に関しては、大統領補佐官ライスは、1) 米中国交正常化をなしたキッシンジャーの薫陶を受けており、その世界観を受け継いでいる、2) そのため、プーチンに再登板によりぎくしゃくしたロシアと対峙するための戦略のカードとして(政権内で唯一)中国を使おうとした、と本書は指摘している(pp. 116-7)。このため、中国や韓国の立場に配慮しオバマの広島訪問に反対したという(p. 199)。

 とはいえ、実際のオバマ広島訪問実現に向けて大きな黒子役を務めたのは、キャロライン・ケネディ駐日大使(そしてケネディに説得されたケリー国務長官)だったと指摘しているが(pp. 197-200)、これは思っていたとおりだった。

 とはいえ、本書を読んで改めて思い返されたのはオバマ外交は針のむしろの連続だったということだ。私はオバマの、理想の理念を高く掲げる政治姿勢は、高く評価したい。そして極力その理念に忠実であろうとする政治姿勢も好ましいように思われる。だが、それ故、オバマの出方を他国から見透かされやすいということもあった。それを見透かして行動した代表例がプーチンによるクリミア侵攻であろう。それ故、オバマは「弱腰大統領」だと批判を受けた。

 今日、オバマの後を受けて登板したトランプは、極力、他のプレイヤーから予測不可能な態度を取ることで、相手から見透かされまいと行動している。そして相手が見透かすような行動を取ると、すぐさま反撃する(代表例は、一旦米朝会談を反故にすると発言したことである)。ある意味、それはオバマの轍を踏むまいとの作戦であることを、本書を読むことにより改めて痛感させられる。しかし、それにより世界の不安定化が進んでいることも事実である。

 安倍首相は、トランプから裏切られないと信じたいだろうが、必要があれば何の躊躇もなく日本を裏切るのが(既に、トランプは、日本に対し、日本からの輸入品に高額の関税を掛ける関税戦争を仕掛けているが、日本は他国とは異なりやられっぱなしである)トランプ流だと言うことを肝に銘じなければならない。

 なお、2013.12の安倍首相の靖国神社参拝にオバマ政権(特にバイデン副大統領)がなぜ激怒したのかも触れられている。これは、その直前、中国が防空識別圏を設定した直後にバイデンが日中韓三カ国を歴訪した際、バイデンは「日本は自制しているのだから」と、日本に肩入れして、中韓に自制を求めたのだが、その直後、日本が自らその「自制」を水の泡にしたからだそうである。結局バイデンが日本のために行った努力を、日本が頭を後ろから殴りつけるように、水泡に帰させてしまったためである (pp. 114-5)。
 とはいえ、吉野は、ライスを中心とする、オバマ政権の中国寄りの姿勢に安倍政権が不満を募らせていたのが、その背景にあったのではないかと解釈している(pp.116-8)。

1) [核禁止条約に50カ国が署名 発効へ前進] 東京新聞 2017.9.21
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201709/CK2017092102000263.html

[核兵器禁止条約に参加しない日本に被爆者の怒り「どこの国の総理ですか?」] Aera.dot 2017.9.26
https://dot.asahi.com/aera/2017092500061.html?page=1



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