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zoom RSS ETV特集「キミのこと聞かせてよ〜木原雅子さんの出張授業〜」

<<   作成日時 : 2017/07/13 08:36   >>

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 先日(2017.7.8)のETV特集は「キミのこと聞かせてよ〜木原雅子さんの出張授業〜」であった。
 元々はAIDSの研究者である京都大学医学部の木原雅子氏が、中・高生にAIDS防止のための啓蒙教育をしようと、最新の知識をわかりやすく盛り込んだ授業に取り組んできても、一向に生徒たちに伝わらない。その中で始めたことが、生徒たちの話をじっくり聞くという取り組みであった。こうなると最早医学と言うよりは教育学の研究と言うべきであろう。

 番組の中で紹介されたのは学級崩壊に悩む九州の中学校。ここで半年間掛けて生徒たちの話をじっくり聞き、生徒たちの人間関係を分析しながら、性教育を含めた何回かの授業を行うと、生徒たちの授業に取り組む姿勢が変わっていった。

 この中学の場合、木原氏の分析では、学級崩壊の原因 (仮説) は次の通りであった。
まず、背景要因として
・思春期のホルモンバランスの崩れによって元々子供たちは心理的に不安定になりやすい・家庭などの社会環境の問題からくるストレス
・子どもたちのなかの同調圧力(友だちからいじめられたくない、本音を見せられず表面的に取り繕わざるを得ない etc.)

 そして直接要因としては、
・子どもたちの人間関係に問題があって(グループ間の対立や、個人間の人間関係のきしみ)、それらのきしみを、教師に対する敵意に転嫁することによって、それらのきしみの表面化が防止されていた。それが学級崩壊につながった。

 従って
・もし、むりやり学級秩序の回復を図ると、教師への敵意に転嫁されていた、子供たちの人間関係のきしみが表面化し、いじめが発生する虞れが高い

 これは1986年に発生した、中野富士見中事件で、いじめの対象となった生徒の「葬式ごっこ」に、教師も助長するような行動をとっていたことが問題になったが、教師が「葬式ごっこ」に一枚かんだのも、自分自身への生徒からの敵意の転嫁を防ぐためだったと考えると、非常に納得のいく解釈である。

 さらに
・子供たちの大半(7割以上)は、今の学級崩壊状況を良くないと考えている
・しかし、学級崩壊状況を是正しようと他の生徒に呼びかけると今度は矛先が自分に向かいいじめの対象になると怖れていた
 ことも明らかになった。

 Noelle-Neumannの言う「沈黙の螺旋」に類似した現象が発生していたことになる。ただ、沈黙したのは少数派ではなく、サイレント・マジョリティであった。ノイジー・マイノリティに状況が支配されたとすれば今のネット上に似た状況にあったことになる。

 これに対して木原雅子氏がとった対応は、生徒一人一人の話をじっくり聞くことであった。また性教育等を通じて、自分自身の不安定な状況に向き合ってもらうこと。さらに生徒同士の話し合いを通じて (但し既存のグループは解体する) 生徒同士の信頼関係の回復を図り、その上で自主的に行うミニ練習問題(プチスタ)を通じて忙しい先生と生徒の対話を図る (練習問題の添削の過程で生徒が先生にメッセージを投げやすいため)、というような対策を行った。

 要は生徒間および生徒と教師間の信頼関係を回復し、生徒たち同士の敵意や殺伐した状況を変えることで、転嫁的な先生への敵意の噴出も抑え、学級秩序を回復するという措置を行ったのである。

 このような実践が、同時に仮説検証過程になっていたということでもある。

 この結果、学級崩壊状態だったものが、授業状態が大きく改善され、成績も伸びるようになった。

 背景として先生たちが書類書きに追われて (近年、文部科学省の指示や教育委員会の指示により、現場に膨大な報告書の提出がもとめられるようになっている)、生徒一人一人に向き合う時間が少なくなっている、というような状況も指摘された。

 なお、木原氏の教育的介入を仮説検証過程と考えた場合、本来の仮説検証過程とは一点欠けた点がある。それは、対照群が設定されていないという点である。つまり、本来ならば同一条件にある二つのグループを用意し、介入を行ったグループと、行わなかったグループを比較対照し、行ったグループのみ改善されれば、やはり仮説が正しかったと言えることになる。しかし、その条件が整わなくても、この「仮説検証」過程は意外に説得力を持っている。なぜならば、介入を行わなければ、このクラスがこのまま学級崩壊したままとどまることが容易に予想されるからである。そのことが実際には比較対象群がなくても実質的に比較対象群を準備したのと同様な説得力効果を持つのである。

 また、木原氏の実践の持つ意義は、仮説−検証過程が、単に研究上要請される手続きだというだけではなく、日常的な社会実践にも有効なことを身をもって示したということであろう。やみくもに対症療法 (生徒を𠮟りつける等) を行うのではなく、しっかり問題の原因について仮説を立てて対処することの方が、はるかに効果的であるということだ。と同時に、やはりしっかりとした仮説を考えるには予備調査が必要だということも示している。つまり、予備調査の結果この中学校では上記のような仮説が導き出されたが、当然中学校によっては別の原因によって、あるいは別の要因が加わって学級崩壊が起こっているかもしれないのである。学級崩壊発生のメカニズムが異なる中学校に、闇雲にこの事例と同じ処方箋を与えても同じ効果があるとは限らない。
 例えば、番組で紹介された木原氏の実践は、まず生徒たちの間での同調圧力を弱め、相互に多様性に寛容になるような方向に導いて、生徒同士のコミュニケーションを円滑化したうえで、次のステップとして、ミニ練習問題を通じた生徒と先生との間のコミュニケーションの改善を図っていった。逆に言えば生徒同士の寛容性の拡大やコミュニケーションの円滑化を置き去りにしたまま、生徒と先生とのコミュニケーションの円滑化を図っても、果たして好ましい結果が得られたかどうかはわからない。

 中野富士見中事件も今となっては真相はわからないが、いじめに回った生徒と先生との間のコミュニケーションがなまじ円滑だったからこそ、先生がいじめに加担するような行為を行ってしまったのかも知れないのだ。

 従って、木原氏のこの中学での取り組みの意義を、単に「先生が生徒の声に耳を傾ければ問題は解決する」というように単純化して捉えるべきではない、ということは強く警告しておきたい。なによりもきちんと調査し、仮説を立てて対処することが重要なのである。



番組紹介Webページ
http://www4.nhk.or.jp/etv21c/x/2017-07-08/31/10543/2259566/






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