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zoom RSS 今井正監督『望樓の決死隊』

<<   作成日時 : 2017/03/02 23:44   >>

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 本作品は戦後左派文化人として知られた今井正が戦時中に撮った国策プロパガンダ映画。こんなマイナーな作品がDVD化されるとは思わなかったが、デアゴスティーニ・ジャパンの戦争映画コレクションの一環としてDVD化された。この点についてはデアゴスティーニ・ジャパンに感謝したい。

本作品のあらすじはこちら
キネマ写真館 (映画演劇文化協会)「望楼の決死隊」
http://kinema-shashinkan.jp/cinema/detail/-/1_1082?PHPSESSID=6ddnd96lfc8f1elvdulnbhgsu2

 本作品は、朝鮮解放後撮影された『自由万歳』の監督として有名な崔寅奎が企画し、東宝映画作品として製作されたプロパガンダ映画。当時この企画が崔寅奎によって東宝に持ち込まれたときに、島津保次郎監督と当時新人だった今井正監督が手をあげ、結果的に今井正監督に軍配が上がった。その結果今井監督は島津監督と険悪な仲になってしまったという(崔盛旭, 2013: 119)。島津監督は満映との合作映画も撮っており、植民地との合作映画が撮りたかった様である。

 映画のプロットは1939年ウィリアム・ウェルマン監督の『ボー・ジェスト』を下敷きにして、舞台をインドから中国国境地帯の朝鮮半島北部に移している。脚本は山形雄策と八木隆一郎。

 主な登場人物たちは三つのグループに分かれる。一つは日本人の国境警備隊員たちである。そして朝鮮人の国境警備隊員たち。そして中華料理店主王龍ら中国人である。中国人の王龍親子は満州で共産匪賊の迫害に合い、朝鮮国境地帯に流れてきたという設定である。

 日本人の国境警備隊員は、故郷を遠く離れ、親の死に目にも会えず厳しい国境警備勤務を行っている。そして朝鮮人は日本人と協力してやはり国境警備に当たり、ときに匪賊にやられ殉職することもある立場である。明らかに帝国の一員として描かれる。曖昧なのは中国人である。王龍は日本に帰依していることになっている。しかし王龍の息子、王虎は共匪の一味に加わっている。つまり、中国人とは帝国にとって味方なのか敵なのか曖昧な存在である。
 この敵か味方か曖昧な存在である中国人を前にして日本人と朝鮮人が団結して戦っていくというのが基本ストーリーである。もちろん実際に共産匪賊が中国人に限られていたということはありえない。むしろ朝鮮人であったであろう。だからこの設定はフィクションである。逆に言えば、中国人を前にして日本人と朝鮮人の団結(内鮮一体)を強調することで、朝鮮人を帝国の一員、日本国民の一員として認めよというメッセージを、主として日本人に向けて発している作品(日本語発声映画であるから)と言えよう。
 なお崔盛旭はこの作品が帝国のプロパガンダである一方でいくつかの矛盾があることを指摘している。一つは映画にみられる「国語常用」という看板に矛盾するように、日本人と朝鮮人巡査が酒を飲むときに朝鮮人巡査が朝鮮語で民謡を歌う点である。崔盛旭はこの部分にむしろ朝鮮人に抑圧されている母語を改めて喚起させたのではないか、と指摘している(崔盛旭, 2013: 135)。もう一点は「匪賊」が当時の朝鮮では金日成率いる東北抗日聯軍であることは広く知られていたので、むしろ当時このフィルムを見た朝鮮人は「匪賊」というよりは抗日の英雄に見えていたのでは、と問題提起する(崔盛旭, 2013: 136-7)。崔盛旭はそれを今井が意図的に撮ったのかどうかは分からない、という。が、意図的でないとしても結果的に「植民地のハイブリッド性」を浮き彫りにしたのではないかと主張する。

 なお、崔盛旭の指摘に加えて言えば、ここに出てくる朝鮮人たちは誰一人創氏改名していない。いずれも民族名で出てくる。これは許泳が撮ったやはり国策プロパガンダ映画である『君と僕』と比較してみるとよくわかる。それも考えると今井正(& 崔寅奎)は崔盛旭が言う「植民地のハイブリッド性」をある程度意識していたのではないだろうか。少なくとも朝鮮人を日本人と完全に同化した存在として描くというよりは、帝国における朝鮮人の地位向上に向けた内地向けのプロパガンダ映画ということを意識していたのではないか、という気がする。ただこのような今井の朝鮮民族への「好意」は、結局帝国に朝鮮民族を包摂する方向に向かっていることは間違いない。それをどう評価するのかは難しい問題だと言えよう。

『望樓の決死隊』
監督: 今井正
1943年 日本映画 モノクロ スタンダード 95分

配役
高津警部補/主席 高田 稔
浅野巡査    斎藤英雄
杉山巡査    清水将夫
熊沢巡査    鳥羽陽之助
王龍(中華料理店主)
        菅井一郎
王燕(王龍の娘) 三谷幸子
高津由子(高津妻)原 節子
王虎(王龍息子) 佐山 亮
金巡査     秦 薫
柳東純(金の友人)沈 影
黄チャンドク  朱 仁奎
林巡査     田 澤二
安巡査     金 賢
金英淑     金 信哉
黄ヘオク    全 玉
黄ヨン     三谷幸子
林オクソン   戸川弓子
朴順子     木下 陽

参考文献 崔盛旭, 2013,『今井正 - 戦時と戦後のあいだ』, クレイン








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