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zoom RSS 小林正樹監督『日本の青春』

<<   作成日時 : 2017/02/08 23:13   >>

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 1968年、小林正樹監督が東宝にて製作した映画。

本作品のあらすじはこちら
Movie Walker『日本の青春』
http://movie.walkerplus.com/mv22240/

 この作品は以前から見てみたいと思っていたのだが、DVD化されていないこともあり最近まで見る機会がなかった。ようやく小林正樹監督生誕100周年特集上映で見る機会を得たので評をしるしたい。

 実は本作品を知ったのは、NHK他が国際共同制作したドキュメンタリー、"Music of the movies: Toru Takemitsu"1)で本作が紹介されているのを見たのがきっかけだった。この中で紹介されているうち本作以外はすべて見たのだが、本作だけは見ることがかなわず、しかも未だにDVD化されていない。
 この中で紹介されるぐらいであるから、間違いなく武満徹が音楽を書いた映画の中の代表作の一つであることは間違いない。どんな映画なのだろうとワクワクして見たが、その期待を違えることはない作品であった。傑作である。

 映画は封切られた当時の「現在」すなわち1968年と、20数年前主人公向坂善作(藤田まこと)が学徒動員で動員された当時の軍隊生活の回想が交錯する。1968年といえば、日本は高度成長時代の真っただ中。人々は生活の豊かさを享受しつつある時代である。そんな中に電車で居眠りするさえない平凡な中年男、向坂善作、いや、彼だけではない、そんな平和の中にまどろんでいる平凡な中年男が、当時も、幾らでもあふれていた。だが、そんな平平凡凡な中年男たちも、ほんの20数年前までは、いやでも死に直面するドラマティックな暮らしを(しかもドラマディックであることは必ずしも良いことではない)、嫌でも強いられていたのだ。そのすさまじい歴史的ギャップを埋めようとする... それがこの映画が製作された目的だと思う。そう言った意味で昭和時代の時代感覚の変遷を知るには絶好の資料なのだ。それが今だビデオディスク化されていないのは返す返すも残念でならない。

 息子廉二(黒沢年男)の目から見れば、彼は、母さん(美代 = 奈良岡朋子)に小言を言われ続ける冴えないオヤジであり、同時に、息子には、自分自身のことはさておいて、自分の趣向を押し付けようとする横暴なオヤジである。そんな父に、廉二は、自分と同様の人間的弱点を見つけ、父親を理解、連帯しようとするのだが、父善作は、息子からの歩み寄りを振り払い、あくまでも父親面をしようとして息子と衝突する。そのあたりの心理がうまく描けている。
 だが、父親は父親で軍隊生活に矛盾を感じ、決してあの戦時下の状況を子供たちに受け継がせまいと、息子たちからは理解されないながらも、それなりにつっぱっているのだ。善作の突っ張りは、よく考えてみると理不尽なものである。彼の許しがたい元上官で敵である鈴木武則(佐藤慶)が、善作を負け犬扱いするのも一理はある。だが、負け犬ながらも逃げずに問題に立ち向かおうとする善作の小市民的勇気は、理解されるべきである... そう小林正樹は主張したいようだ。

 小林正樹は戦時中出征経験者であるだけに、軍隊生活や、戦後帰国した将官たちの傲慢な姿は非常にリアル。映画で描かれている元将官の傲慢な姿勢や発想は、ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて神軍』などから判断するに、かなりリアルなものだと思う。善作の思いは、実際に軍隊生活を送った小林正樹の思いそのものであろう。

 だが、小林正樹は映画の中で教条的平和主義を生硬に押し通すことはない。例えば廉二が、口先だけのインテリ左翼学者に愛想をつかし、防衛大学生にあこがれる姿をきちんと描いているし、息子に父親に対して、過去のことばかり考えても前に進まないのではないのか、と批判させている。なんだか、今日の左翼批判を見ているようだ。決して一面的、イデオロギー的に人物を描くことはしない。人間観察眼の冴えが見られるところである。非常に上手い。今こそ、またみられるべき映画という思いを強く感じさせる映画である。ユーモア感覚もGood!

 藤田まことは、冴えなさそうで内面芯のある人物を好演しているし、奈良岡朋子は、小言ばかり言う、夫から見てすっかり魅力を失った中年主婦が非常にリアル。黒沢年男は、学生にしては、今の感覚ではいささかとうが立っている感じだが、当時はあんなものだったのかもしれない。そして酒井和歌子は、こうやってみると第二の吉永小百合だなぁという感じがする。そして主人公のあこがれだった新珠美千代もはまっている。往年の名演技が画面に横溢している。

 ちなみになぜ東宝はいまだに本作をビデオディスク化しないのか。ひょっとすると最後に廉二の恋人、鈴木真理子(酒井和歌子)に「防衛大学だけはだめよ」と言わせているからなのか、という気もするのであるが...

 ともあれ、東宝にぜひDVD化を要望したいところであるが...

1)紹介記事は http://yohnishi.at.webry.info/200804/article_3.html

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