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zoom RSS 日本人に欠けがちな宋文洲の視点

<<   作成日時 : 2017/01/13 08:43   >>

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日経ビジネスオンラインの以下の記事で、宋文洲がインタビューに答えている。

「宋文洲氏「トランプ政権で世界は平和になる」」 2017.1.11
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/010600013/011000002/

宋文洲は、トランプが候補者時代から一貫して評価している。個人的には宋文洲の議論には半分賛成で半分は同意できないといったところだが、ヒラリー・クリントン候補は、万年政治家だという指摘はその通りであろう。

 ただ、宋文洲には筆者が日本人に決定的に欠けていると思う視点がある。それはこのインタビューの2ページ目( http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/010600013/011000002/?P=2 )、の以下の部分である。

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− トランプ氏は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明しています。日本への影響をどのように見ていますか。

 私は元々、TPPには懐疑的でした。多くの国が集まってああだ、こうだ話しても全くまとまりませんよ。仮に形になっても大変な苦労が伴い、結局、機能しなかったでしょう。その意味で、トランプがもし本当にTPPから離脱してTPP自体が破棄されることになれば、日本にとってはよかったと感謝すべき話ですよ。

 商売の話に戻すけど、取り引きは結局、1対1ですよ。人間もそう。異性を愛するのは最終的には1対1。もし、複数と取り引きしている、複数の異性を愛しているというなら、それは1対1の関係が数多くあるということに過ぎない。

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 この彼の談話が示すことは、所詮「国際社会 (international community)」などというものは、国内社会や地域共同体のような、何らかの秩序やルールが確立されたものではなく、個々の国同士の力と力、あるいは取引と取引のせめぎあいの果てに、結果的に成立するものである、という視点である。これは非常に重要な視点であり、私がかねてから日本人に決定的に欠けている視点だと思っていたものである。ただ、私は宋文洲のような見方がグローバルスタンダードだと思う。

 例えば、9.11後に書かれた、マイケル・サンデルなどの公共哲学、正義論の研究者として知られる、小林正弥の『非戦の哲学』(ちくま新書, 2003年)は、私は、非常に示唆に富む書であり、現在でも読む価値に高い書だと個人的には評価している。しかし、唯一彼の大きな問題は、上で述べたような視点の欠けた典型的な日本人的国際社会認識を持っていることである。つまり、一枚岩の秩序が確立した「国際社会」がある程度成立している、あるいは成立する可能性が高いと見ている点である。それが「地球公共ネットワーク」を作ろうという主張だ。

 小林正弥は同書で、彼の考え方は、国際関係・平和学研究者の坂本義和から同意を得られなかったと書いている。坂本義和が小林の見解を批判的に見たのも、坂本はおそらく international "community"なるものが、所詮、一対一の国の間の関係の総和でしかなく、秩序が確立した真正のcommunityたりえない、つまり国際的"community"なるものはあくまで比喩でしかありえないという認識に基づくものであったと思う。つまり小林正弥もまさにこの日本人的な認識パターンから抜け出せなかったし、また日本人的な認識パターンの延長上に「地球公共ネットワーク」という概念が成立してたということだ。

 もちろん、安倍首相のTPP賛成論や日米同盟観も、この典型的な日本人的な国際秩序感覚を抜け出ることはないのは言うまでもない。また北朝鮮との拉致被害者問題が解決しないのも、日本人の多くはどこかに「国際社会秩序」というものが存在し、それによって北朝鮮が罰せられるべきだと思っているからである。だから北朝鮮と「取引」して譲歩を導き出すという考え方にいたらないので決して解決しないのだ。だが、北朝鮮を罰する資格のある「国際社会秩序」などどこにも存在しない。従って、不本意ながらも、北朝鮮と取引して妥協を引き出すという考え方のない日本には根本的に、この問題に対する解決力を欠いているのである。
 北朝鮮から見れば、拉致被害者を一部帰国させるという「譲歩」をしているのに、日本から何の見返りもなかったばかりか、却って態度は硬化してしまった、だから日本には「譲歩」しただけ損だ、もう日本には何の「譲歩」もしない、という話になる。もちろんそれは日本人からみれば「盗人丈だけしい」と感じられるだろうが、「盗っ人」である北朝鮮を罰するどころか、そもそも北朝鮮を「盗っ人」と判定できるような「国際社会」などどこにも存在しない、という話である。

 これも誰かが言っているのを読んだのだが、トランプには「同盟」という考え方はなく、「取引(ディール)」という考え方しかない、と指摘していた。まさにその通りであるが、その裏には上記のような国際秩序観の問題があると見てよい。

 だが日本人の多くは右から左まで、日本人的認識の罠にはまっている。日本人はトランプ的世界観を理解することはなく、翻弄され続けるだろう。そして安部内閣は、トランプが翻弄する国際「社会」で日本の利益を貫徹できる力は全く持ちあわせていない。

 さらにつけ加えれば、TPPに関して、私は宋文洲の考え方に賛成である。


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