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zoom RSS 企業価値の本質をどう定めるか - 円谷英明, 2013,『ウルトラマンが泣いている』

<<   作成日時 : 2016/05/11 00:43   >>

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 3年前に刊行された、いわゆる円谷プロのお家騒動を、当事者の一方が明らかにした本。もちろん、当事者の一方の主張なので、それを以って客観的な事実と見なすことはできないが、騒動の一端を知ることはできる。

 本書を読んで一番驚いた、というか意外だったのは、円谷プロは決して特撮技術を企業のコアに置いた企業ではなかったという点である。今まで特撮技術こそが円谷プロの売りであると思い込んでいたが、そうではなかったのである。では当事者たちは何を円谷プロの本質だと思っていたかというと、著作権管理企業ということになる。

 本書によると、円谷プロはもっとも社員が少ないときで5人だったという。もちろん、円谷英二、一氏が生きていた時代は、かなり多数の社員を抱えていた時代もあったそうだ。だが円谷プロの「去る者は追わず」の伝統、さらに円谷一氏の死後、円谷プロの経営危機の際に大幅な人材カットを行ったのだ。そして円谷プロが持っていた様々な資産も東宝やTBSの援助によるものが多く、東宝やTBSとの関係悪化後失ってしまったものも多かったようだ。
 てっきり、円谷プロは、特撮職人や設備を抱えた特撮プロダクションだと思っていたが、その部分は結局円谷のブランドイメージで一時的にかつて関係のあった職人を集めてしのいでいただけで、特撮のノウハウが企業内で蓄積されていたわけではなかったのである。結局、円谷プロが特撮プロダクションであったのは円谷一氏の代までで、その後蓄積していたのはウルトラマンの著作権だけであった。その著作権も、海外でのキャラクター販売権はタイの企業に移ってしまい (英明氏はその経緯も不透明だと言うが...)、結局国内展開しかできなくなっている。

 英明氏は結局、ウルトラマンのコンセプトが、キャラクター商法に引きずられて番組ターゲットが低年齢化するなど、定まらなかったことが一番の敗因だと分析している。ただそのことは、「特撮の円谷プロ」と世間で思われたこととは裏腹に、関係者が考えていた円谷プロのコアが決して特撮であった訳ではなかったことの結果でもあったように思われる。

 英明氏はこうすれば良かった、ああすれば良かったという指摘もしている。ただ、もっと企業コンプライアンスをしっかりすべきだった、という点は確かであったとしても、他の指摘は、円谷プロの企業価値のコアが特撮技術でなくなってしまった以上、英明氏の指摘通りにやれば上手くいった、とは私には思われなかった。事実英明氏は独立して起こした中国事業に失敗している。

 正社員として技術者を抱え込むのではなく、企画毎に、職人、技術者と契約して製作にあたり、必要なければ契約解除、という円谷プロの運営は、ある視点から見れば身軽な、欧米流のドライで臨機応変な企業運営の模範例と見ることもできるだろう。決定だって早い。だが本当にそれでよいのか?

 欧米流の選択と集中というかけ声の下、ずいぶん多くの企業が日本流の経営を捨ててしまった、あるいは捨てようとしている。あるいは株主のための企業へ、配当重視の経営転換を迫られている。だが本当にそれでよいのか、それで国際的競争力が高まるのか。円谷プロの末路は多くの日本企業にとって決して他人事ではないように思われた。


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