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zoom RSS 井上準之介はどのように間違い、高橋是清はなぜ正解にたどり着いたか? (2)

<<   作成日時 : 2015/08/26 08:10   >>

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 ではマルキストはこのような状況をどう見ていたのだろうか。長の素晴らしいところはマルキストへ照明を当てることも決して忘れない点である。

 長の議論を先取りして言ってしまうと、日本のマルキストたちは、教条主義、あるいははやる革命的実践にとらわれ、理論的目を曇らせてしまった、マルクスの指摘した含意を十分展開できなかった、ということになる。

 例えば、当時先鋭なマルクス主義貨幣理論家であった笠信太郎については長は次のように評す。「笠の眼光は金本位制維持を主張したマクミラン委員会報告が実質において『金基礎を離脱しようとしている』と見抜くことにおいて鋭いし (中略) 通貨管理性の将来を予知はしている。しかも国際協調の必要性を指摘することにおいて、ケインズのいわゆる金本位制下の近隣窮乏化政策にかわる協調的政庁政策がはらむ困難さを見とおしている。しかし、にもかかわらず、笠においてもまた、『再禁止』=管理通貨制度への自然発生的移行がもつ否定的側面ないし矛盾を抉り出すことにおいて鮮やかではあるが、それが国家独占資本主義の段階における国家介入により資本の再生産に新しい局面を切り開く"資本の自己対応"でもあり、そのことによって資本主義経済の内部矛盾における諸モメントの対抗関係=利害状況が質的に転化してゆく可能性を見ようとはしなかった。したがって、結局は第三期資本主義の没落必死の挽歌をイデオロギー的に高唱することにおわることになる」(長, 2001: 166)。

 マルクス経済学者猪俣津南雄に対してはどうか。長は、猪俣がマルクスの『資本論』第三部第32章で展開している信用論理解の不十分さを指摘する (長, 2001: 169-70)。この点は、私も全く長に全面的に賛成である。猪俣の議論は、マルクスが指摘する、信用 (あるいは中央銀行が発行する非兌換券) が実質、貨幣・決済手段の役割を果たし、これらを弾力的に運用すれば恐慌の激化を緩和できるという点を全く理解していない議論である。その結果インフレーション (あるいはリフレ) 政策の有効性を猪俣は全く理解できないのだ。

 河上肇に至っては、貨幣の自動調節に関する理解はほとんど井上と同一であると長は言う。そして金本位制の瓦解=資本主義の瓦解になってしまうのである (長, 2001: 182-3)。そのため川上の批判の矛先は (資本主義を生き延びさせようとする?) 石橋湛山のインフレ論に向かうのである。

 長はマルクスの理論からインフレ論を構成する時の注意点として次の二点を指摘する (長, 2001: 185-9)。

1.マルクスがリカード流貨幣数量説を批判した切り札となる「貨幣蓄蔵」の機能に注意。貨幣蓄蔵が増加しつつあり消費・投資支出が減退している場合、公債で民間貯蓄を引き上げ公共投資に振り替え支出するような、追加購買力の投入は、貨幣の遊休状態を活性化することであり、貨幣の増発にはならない。

2.マルクスの紙幣流通の諸法則の理解の注意。
 追加購買力の投入 (公債を発行して公共投資を増やす等) は、必ずしも金余り=インフレを引き起こすとは限らない。というのは、流通速度や取引量も変わりうるからである。追加購買力の投入=貨幣流通量の増大は、取引量が増えれば (あるいは流通速度が遅くなれば) 市場に出回る財の価値の総量 (流通必要金量) と釣り合いが取れるので財の単価が上がらない。
 つまり労働力と資本 (設備・原材料) がフル稼働状態でない限り、追加購買力の投入に対して流通必要金量は弾力的に反応しうる。河上のインフレ論はこの点を全く理解していなかった。

 つまりマルクスは貨幣数量説を批判し、信用拡張については通貨主義を否定し、銀行主義的な立場を取っている。これはケインズと基本的に共通点をもっていたと長は言う。この点について、日本のマルキストたちの理解が不十分あるいは全く無理解だったのである。

 こうしてみると、ほとんどマルクスはアベノミクスを理論づけているような... その一方で日本のマルキストたちはマルクス読みのマルクス知らずに陥っていたという...

 何たる歴史の皮肉...

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