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zoom RSS ドラマ『未生』 vs. 漫画『未生』

<<   作成日時 : 2015/05/27 07:10   >>

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 ドラマ『未生』の原作漫画を入手した。特別普及版と称する9巻本のセット72000ウォン。もはや本の値段もすっかり日本並みである。

 これを読み始めているが、改めてドラマの脚本がよく練られていると思わされた。今読んでいる範囲内で比較すると、漫画はやはりチャン・グレの主人公としての存在感が圧倒的で、周辺人物のキャラ立ちは、チャン・グレと同じチーム内のオ営業第3チーム長やキム代理を除くとドラマほどではない。だが、ドラマはアン・ヨンイ、チャン・ベッキ、ハン・ソンユルの内面描写が深められ、群像劇の様相が濃くなっている。また韓国における会社内コミュニケーションに対する問題提起 (学歴差別意識、セクハラ、パワハラ、正社員・非正規格差問題、新入社員のやる気喪失等々) もドラマの方が鋭くなっている。

 原作漫画ではチャン・ベッキは確かにスペックを誇ってはいるが、それを妙に鼻に掛けたりせずこだわりなくチャン・グレに協力してくれる良い人で、チャン・グレに対する複雑な意識は薄い。ドラマでは何かとチャン・グレに絡んでくるが、漫画ではそんなことはない。また、チャン・ベッキは自分の能力を会社が活かしてくれないと、入社数ヶ月後に転職まで検討するのだが、漫画ではもちろん多少悩みはするのだが、ドラマほど思い詰めることはない。チャン・グレに対するやっかみも少ない。
 アン・ヨンイの位置づけも、ドラマではやはりセクハラ問題提起における重要な対象として位置づけられているが、漫画では位置づけが異なり、むしろ彼女の有能ぶりが先任たちをたじたじとさせる存在になっている。後に資源部長のパワハラの対象にはなるのではあるが... 。
 またチャン・グレが他のインターンたちから虐められる描写も漫画にはなくドラマで付加されたエピソード。ただ何の学歴もない「落下傘 (コネ入社)」が、熾烈な学歴競争社会である韓国で怨嗟の対象になるというエピソードはいかにも韓国でありそうなエピソードだ。
 また、ドラマではイ・ギョンヨン演じる専務が、社内政治や会社のロジックを象徴・体現する人物として重要な役割を果たすのだが、これも漫画にはない。漫画では専務はいることはいるのだが、ドラマでも出てきたパク課長のヨルダン中古車輸出不正事件で専務は切られ、交代する。

 一方で漫画にあってドラマで削られているエピソードもある。営業第3チームとは、漫画では新規事業を企画・創出して、アイディアが社内で承認されれば、その事業は他のチームに引き継がれるという位置づけになっている。そんな中で常に新しい営業アイテムを検討するのだが、ドラマで削られたその一つに、チャン・グレが検討する韓国米輸出というアイディアがある。
 これを読むと韓国の農業、米事情が垣間見えてくる。例えば今韓国の米の自給率は80%程度で100%まかなえているわけではない。また韓国の米は糧穀管理法 (日本の食管法のようなものか) で管理されており、輸出には、複雑な手続きを踏んで、政府による承認を取る必要である。もちろん国際的にも生産コストが高く輸出競争力がないというのも日本と同様である。また京畿道で作られる米の大半の品種は「コシヒカリ」である。従って、もし輸出するなら、米を使った菓子など付加価値をつけた加工品として輸出するしかない (糧穀管理法の管理からも外れる)。
 これを見る限り、韓国の米政策は、かなり日本を範としていることが伺える。またおそらく農作物の新品種開発力も日本よりかなり水準が落ちるのではないだろうか。逆に言えば、日本の各道府県などで設置している農業試験所等はかなり高い開発力を持っているのではないかということに気づかされる。
 また韓国では2015年度に米輸入を自由化する約束をさせられているようである。

 その一方で、米の国際市場で今最も高い競争力を持っているのがタイであるが、これはタイ政府によるかなり徹底した農産物の品質保障政策に支えられているということも紹介されている。日本でも十数年前、天候不順により米の収量が不足しタイから緊急輸入したことがあった。その時、タイ米はまずいという評判がずいぶん聞かれたが、それはタイ米が低品質というよりは、インディカ米にふさわしくない調理方法で食べられたことにあると言えそうだ。沖縄の泡盛も大半はタイ米から作られている。

 また漫画では、韓国の総合商社が日本の三菱や丸紅などの商社を一枚上手のライバルとして相当意識していることも描かれているが、ドラマでは日本を意識した場面はほとんどない。ただ、ドラマの初めの方で外国人バイヤーをチャン・グレが「ゲーム」でもてなしてチーム長の到着の遅れをカバーした場面で、バイヤーがこのゲームは何という名なのかと聞かれて、オ・チーム長が「ゴー (碁: 日本語起源の名詞)」と答えると、チャン・グレがムキになって「パドゥク (囲碁を意味する韓国語)」と訂正するという場面だけである。
 チャン・グレが意識する囲碁界の名人の中にも韓国人棋士だけではなく日本人、中国人棋士の名前がでてくる。そういう意味では囲碁という題材は東アジアに置かれた韓国の経済的位置づけを象徴する意味もありそうだ。

 このような知識的な側面はやはりドラマには乗りにくいのだろう。この点はやはり本で読むべき内容と言える。

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