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zoom RSS 『恋愛の目的』 - セクハラの微妙な危うさを描く2005年度韓国映画

<<   作成日時 : 2014/10/19 12:55   >>

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画像 『優雅な世界』『顔相師』のハン・ジェリム監督の長編劇映画デビュー作。2003年映画振興委員会シナリオ優秀作を受賞し映画化した作品。

あらすじはこちら (Movie Walker)
http://movie.walkerplus.com/mv43612/

 本作品は今まで見逃していたのだが、『恋愛の温度』のノ・ドク監督が大好きな作品に挙げていたので、遅まきながら改めて見た。国内のネット上の評や感想では、納得できないという声が結構多く、なぜ韓国で評判になったか理解できないという声が上がっているが、個人的には高い評価を与えたい。
 たぶん、この作品をラブ・ロマンス作品と見ると何なんだ、ということになりそうなのだが、ラブ・ロマンスを装ったセクハラ問題を扱った映画と見ると、非常に納得できるのではないかと思う。なお、以下の記述にはラストにかかわる記述を含むのでご注意。
 たぶん、セクハラというと、世間的には権力を笠に着て、いやよいやよというのを無理矢理強姦したり、触ったり... という認識が一般的であろう。もちろんそういういかにも典型的なセクハラもあるのだが、実際には、それだけではなく、どこまでが恋愛でどこまでがセクハラかという線引きが難しいケースもたくさんあると思う。もちろん、露骨な権力を振りかざした実行者が、後で裁判等に問われたときに、恋愛だった、合意の上だったと、言い逃れるケースもあるだろうが、微妙なケースも少なくないのではないかと思う。そのあたりの危うさを非常に上手く描いているとともに、男性に実感を以て共感しがたいシテュエーションを、最後に男女の立場を入れ替えることで、説得的に描くことに成功していると言いうるだろう。

 パク・ヘイル演じるイ・ユリムは、世間的な判断基準では典型的なセクハラ教師である。しかも、つきあうこと=結婚を前提という観念が強い韓国では、別に婚約者がありながらも、「恋愛」だけしよう、というのは、明らかに女を弄んでいるだけ、と判断されるケースだ。そして「被害」を受けるチェ・ホン(カン・ヘジョン)にも婚約者がいて、しかも教育実習生という弱い立場。「客観」的にはどう考えてもセクハラと言わざるを得ないシテュエーションである。
 だが実際には、チェ・ホンは以前の不倫経験からPTSDを引きずっており、婚約者が忙しいこともあって、婚約者に恋愛感情をもてない。その反動として、内心ユリムに引き寄せられる部分がある。ユリムはそこを本能的に感じ取っており、まさに韓国のことわざ「百回打ち付けて倒れない木はない」を実践する。そしてホンもユリムの熱心さにひょっとして、「真情」があるのではないかと思わされてしまうし、さらに彼に安らぎ、必要性さえ感じてしまう。
 だが、彼らの「不倫」関係が校内で明るみに出たとき、イ・ユリムは、結局結果的に、社会的保身のために、他の不倫男たちと何も変わらない態度をとる。そのことでホンはかつてPTSDを受けた手痛い恋愛経験の悪夢の再現に追い込まれかける。
 その時、ホンはユリムをセクハラで告発するという大逆転を仕掛ける。それは、ユリムをかつての自分と同じ位置に陥れることで、逆に彼を自分の手中にするという、捨て身の戦略なのである。ただ、ホンはユリムが解雇されるところまでは予想していなかったし、望んでもいなかった。
 だが、結果的にユリムが社会的地位を失い、ヒジョンとも別離に追い込まれることで、ホンはユリムを自分の手にすることがはじめて可能になるのである。いわばそこではじめて女が男とフィフティ・フィフティのフェアな関係になれたのだ。

 と同時に、男が、セクハラ状況でしばしばありうる、女にすべての責任が負わされ、実行者が不問にされるという状況が逆に男に回ってきたらどうなるか、というあたりを如実に描く。そして男性側にも、かつて女性がしばしばおかれた苦しさを感覚的に理解させる。
 もちろん、「客観的」には、チェ・ホンの告発は100%正当である。だが、そのような言わば「法的」な責任論を超えたところで、必ずしもその責任のありどころが100対0で切りきれないシテュエーションも実は多いのではないかと思う。そのあたりの微妙さ、そして、どちらかが一方的に正義でどちらかが一方的に悪と言い切れない微妙さを、固定観念にとらわれず、非常に巧みに描いた作品だと言える。

 逆にこの作品が理解できない日本人が多いということは、どこか固定観念にとらわれていて、自分が100%正義だと思ってしまう人々が多いということでもあり、ちょっと恐ろしい。

 ホンの「責任の取り」方にも潔さを感じる一方、男も不倫するなら、自分の人生、社会生活をすべてかける覚悟をしろよ、というメッセージもなかなか良いように思うのだが...

 そして、まだ美しかったカン・ヘジョンの魅力が全開な点も推薦。

 本作品は、20015年6月10日韓国封切り。韓国での観客動員数は1,437,244人(Cine21データ)。国内公開、DVDリリース済み。

原題『연애의 목적』 英題『Rules of Dating』 監督: 한재림
2005年 韓国映画 カラー 1:1.85 118分

ハン・ジェリム監督『顔相』
http://yohnishi.at.webry.info/201402/article_3.html

ノ・ドク監督『恋愛の温度』
http://yohnishi.at.webry.info/201309/article_12.html






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