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zoom RSS 『赤い家族 (レッド・ファミリー)』 - まもなく公開 北朝鮮スパイ偽装家族を題材にした韓国映画

<<   作成日時 : 2014/09/08 08:17   >>

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画像 キム・ギドクフィルムで製作された北朝鮮スパイ一家を描いた作品。監督はイ・ジュヒョンで長編劇映画デビュー作。脚本はキム・ギドク自身。基本的には、やはりキム・ギドクフィルムで製作された『豊山犬』の延長上にある作品で、映画の中でも『豊山犬』の場面の引用が見られる。

 傍目には、お互いを慈しみ合い情愛溢れるかに見える、祖父、夫婦、娘の四人家族。だが、その姿は家に帰ると一変する。「祖父」は「嫁」に尊敬語を使い、「嫁」は他の家族全員に冷徹な命令を下す... そう、実は彼らは家族などではなく、「嫁」役のリーダー、ペク・スンヘ同志(キム・ユミ)、「祖父」役のチョ・ミョンシク同志(ソン・ビョンホ)、「息子」役のキム・ジェホン同志(チョン・ウ)、「娘」役のオ・ミンジ同志(パク・ソヨン)からなる、家族を偽装した北朝鮮工作員グループだったのだ。彼らは北からの指令を受けての諜報活動や、裏切り者の粛清に忙しい。彼らの功は勲章をもらうほどであった。
 ところがその隣に彼らと対照的な韓国人家族がいた。ミンジと同じ高校に通うチャンス(オ・ジェム)と祖母(カン・ドウン)、父(パク・ビョンウン)、母(カン・ウンジン)の一家である。特に、チャンスの父母は金遣いのことで隣まで聞こえる大声で言い争うことが度々であった。そんな息子夫婦の様子を見て、チャンスの祖母は隣家の慈しみ合う姿をうらやましがった。
 最初はそんな家族の姿を、南朝鮮の資本主義に毒された腐れ一家として冷ややかに眺めていた工作員「一家」だったが、ミンジはいじめられているチャンスを救ったり、ミョンシクはチャンスの祖母と話を交わしたり、さらにチャンス祖母の誕生日に招かれたりしているうちに徐々に彼らの一家に情が移ってくる。

 北朝鮮に残してきた家族を気遣う工作員「一家」。スンへはリーダーとして、韓国にいる指令役の上司(ソン・ミンス)や彼らの監視役である「影(구림자)」と接触して彼らに家族の情報を伝えていた。彼らは家族が「人質」として残っているからこそ、そして彼らの家の中の発言は「影」たちによって盗聴されているからこそ、本国に忠誠を尽くすしかないのであった。画像
 だが、スンへとミョンシクはジェホン同志の妻が脱北しようとして失敗し、当局に逮捕されたことを知る。このままではジェホンもジェホンの妻も粛清を免れない。どうしようかと思案する二人。鉄のように冷徹に見えたスンへも、長年一緒に住みながらいつのまにかジェホンに情が移っていたのだ。そこでスンへは自発的に大物の脱北裏切り者を粛清すれば、当局もその功に免じてジェホンを見逃してくれるのではと考え、残りの二人には当局の指示だと嘘をつき、その大物売国奴の粛清を敢行する。
 だが、それはスンへの大きな誤算だった。じつはその大物「売国奴」は、北当局が情報を得るために南に泳がせていた大物情報源であった。さらに「影」たちの情報収集で彼らが、南朝鮮の腐った思想にかぶれたのではないかとの疑惑も抱かれていた。今までの功績に免じて何とか見逃して欲しいと懇願するスンへに上司は、彼らに過酷な指令を下す...

 模範的に見えた家族が、実は家族では全くなく、その一方、真の家族こそ争いが絶えないという皮肉。だが、その争いの絶えなかった家族は、工作員たちの助けを借りることで家族としてのまとまりを取り戻す一方、工作員たちも命令や使命ではない「情」の大切さに気付いていく。工作員たちはミョンシクの体調の悪化にも気付いていなかったが、やがて互いに気遣うようになる。そしてその情とは、必ずしも「血脈」によるものではない...
 そんな、固定観念に対する異議申し立てを行うとともに、「情」に反する国家や命令体系に対する批判が込められた作品。と同時に、外では情愛溢れるかに見えた家族が家へ一歩踏み込めば全く変わってしまう姿など、一種のコメディ、ユーモア感覚も込められている。
 最近、『隠密に偉大に』『義兄弟』など北朝鮮スパイもの映画が増えているが、単に固定観念、図式に乗るだけではなく、そこに一ひねりを加え、自らの社会に対しても批判的視点を忘れないという点でも評価したい。
 そして、もちろん娯楽映画という点からも、観客を楽しませ引き込む力が十分あるのも評価ポイント。個人的にはミンジのチャーミングさが忘れられないし、そこに映画の救いもまた掛かっている。

 本作品の韓国封切りは2013.11.6。韓国での観客動員数は3,756人(KOBIS 2013.12データ)。映画の出来に比べて観客動員数が少ない。映画の出来を考えるとヒットとはいかないまでも10〜20万人程度の動員は可能だったように思われる。国内では2013年の東京国際映画祭で上映され観客賞を受賞。またギャガが配給権を購入し模様1)、本年10/4より一般劇場公開予定。


 監督のイ・ジュヒョンは1977年生まれ。韓国で美術を専攻した後、2004年から7年間、フランスのEuropean School of Visual Arts Poitiersで映画とドキュメンタリーを学んだ。フィルモグラフィーとして、短編アニメ『Moving Work Way』2009年、中編ドキュメンタリー『朝が来て終わる夜を見たことがない (We’ve never seen a night which has finished by reaching a day)』(2010, 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011で上映)等。本作が長編劇映画デビュー作。
※YIDFF記事(http://www.yidff.jp/2011/cat039/11c062.html)、European young talents forum記事(http://www.emaf.de/deutsch/projekte/transit.html)およびDaum映画データベースを参考に執筆

1) 「イ・ジュン主演『俳優は俳優だ』日本、マレーシアに販売」 毎日経済 2014.2.17付記事(韓国語)参照
http://news.mk.co.kr/newsReadPrint.php?year=2014&no=257321

原題『붉은 가족』英題『Red Family』監督:이주형
2013年 韓国映画 カラー 1:1.85 99分

韓国版ビデオ情報
[DL File]
720p 16:9 99分 DRM Free 1984MB 価格W2500
※韓国盤ビデオディスク販売なし

国内公式サイト
http://redfamily.gaga.ne.jp/

最近の北朝鮮スパイ映画評

『隠密に偉大に』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201402/article_9.html

『義兄弟』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201007/article_6.html




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