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zoom RSS 『冥王星』 - 競争でゆがむ高校生たちを描いたアンチ・シンデレラ殺人ミステリー

<<   作成日時 : 2014/09/18 00:02   >>

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画像 まず、映画の始まる前にある自殺した小学6年生の日記からの抜粋が提示される。

「死にたい時が多い。おとなのパパは2日間、20時間仕事して28時間休むのに、子どもの僕は27時間30分勉強して20時間30分休む。
 なぜおとなより子どもが自由時間が少ないのか理解できない。さかなのように自由になりたい。」

 ソウル近郊にある有数の全寮制の進学校である(そして富裕層の子息も集まる)セヨン高校。そこで殺人事件が起こる。学校の裏山で常に学年トップだった韓国系米国人、ユージン・テイラー(ソン・ジュン)が殺されたのだ。現場に落ちていた携帯電話から、その持ち主であるキム・ジュン(イ・ダウィッ)が逮捕される。だがジュンは容疑を否認する。
 捜査のためパク捜査班長(チョ・ホンハ)らは、高校に向かう。そこはかつて保安司令部の所在地だった。高校側からは、受験を直前に迎えているとの理由で、「たかが一人の学生のためうるさくしないで下さい」と極めて協力に消極的。
 だが、殺人推定時刻にジュンが寄宿舎にいた監視カメラ画像が出て、ジュンは釈放される。
 釈放されたジュンは、地下にある秘密アジトに向かう。そこには、同じ勉強グループの仲間だったハン・ミョンホ(キム・グォン)、カン・ミラ(ソン・ジュア)、パク・ジョンジェ(ユ・ギョンス)らが、ケーキを持って集まっていた。

 ジュンは2年前、上渓(サンゲ)洞の高校から転校してきた。キム・ジュンの家庭は母子家庭。母が保険の外交員をしながら、勉強の出来るキム・ジュンの将来を考えて無理してセヨン高校に転校させたのだ。ジュンは寄宿舎で学年トップのユージンと同じ部屋になる。だが、以前の高校ではトップであったジュンもこの高校ではぱっとした成績を上げることが出来ない。さらに上渓洞から来たということだけで、金持ちの子息ばかりである同級生たちから暗黙のうちに見下される。そんなジュンの肩を持つのは、上位グループの仲間になるのを放棄したチョン・スジン(キム・コッピ)だけだった。
 ジュンは、ユージンの仲間である優等生のミラにもあこがれるが、その気持ちをミラ自身の手によって皆の前で侮辱される。
 何とか成績上位に食い込もうとするジュン。だがそこには完全に乗り越えがたい所得差に伴う機会の壁があった。
 やがてジュンはトップグループの生徒たちは彼ら独自の勉強グループを作り、彼ら同士で独自の情報を共有しているからこそトップクラスの成績を維持手来ているという秘密をスジンから知らされる。

 ジュンが釈放されて数時間後、ソウル大学に推薦入学が決まった生徒と保護者を祝う祝賀会が学校で開かれるはずだった。だが、ミョンホら、進学の決まったトップ学生たちの姿が時間が過ぎても見えない。そんな中、父母たちの携帯電話に彼らが拘束された姿が送りつけられたのだった...

 非常に過酷な受験競争に晒された韓国の高校生たち。その高校生たちの中にひそむ、優越感、序列意識、ライバル関係などをバックグラウンドに描かれた殺人ミステリー。実際に彼らが日夜このような熾烈な心理状態に追い込まれているのかどうかは分からないが、それらを非常にリアルにえぐり出す、ショッキングな作品。
 それとともに、韓国ドラマには貧乏(だが美人)の女の子がふとしたきっかけで金持ちのコミュニティに入り、そこで金持ちの男の子に見初められて... というシンデレラストーリーが横溢しているが、本作品は、逆に貧乏人の男の子が金持ちのコミュニティに入ったらどうなるか... という徹底したアンチ・シンデレラ・ストーリーとも言えよう。

 ジュンは比較的所得が低い人たちが住む上渓洞であり、また他の学生のように高価な家庭教師や塾も頼めない状況で、バカにされ序列づけられてしまう。そして、何とか上昇したいというジュンの意識につけ込んで、上位の生徒たちはジュンを好きなように操る。ただ、トップを維持していたユージンだけは、上位の生徒の中でもやや両義的な存在だった。というのは、アメリカで極めて上昇志向の強い父親から成績をめぐってDVを受けており、そこから逃れるように韓国に渡ってきていたからだ。だから彼が勉強するのも韓国トップのソウル大に入学して、そのまま退学し、父親に復讐をしてやろう、というのが最大の動機だった。だからこそ、他の生徒たちのようにジュンに対して冷徹になりきれないのだった。
 そんな韓国の競争社会にひそむどす黒い感情やジレンマ、競争でゆがめられた感情、それが殺人ドラマを通して赤裸々にえぐり出されるのである。第63回ベルリン映画祭審査員特別言及受賞も納得の作品。
 そして、『テロ、ライブ』『高地戦』『詩』などのイ・ダウィッの旬の姿が見られるのも良い。

 ところで、海外映画祭で受賞しているのに、韓国で今ひとつ観客動員が伸びていない。下のK-Styleの記事によれば、劇場側が上映に乗り気でなかったようなのだが... 結局本作のアンチ−シンデレラストーリーぶりが『もう一つの約束』のように劇場から敬遠された原因となったのではないか?シンデレラストーリーであれば、富裕層は世間知らずではあるが「いい人」として描かれる。だがアンチ−シンデレラストーリーだと、富裕層は「悪人」として描かれ、イメージダウンにつながる。それが『もう一つの約束』同様の反応を招いたのではないかと疑われる。ただ実態は、こちらの方に近いのではないかという気がするのだが...

 本作品の韓国封切りは2013年7月11日。韓国での観客動員数は16,835人(KOBIS 2013.12data)。国内未公開。なお、韓国以外にイギリスでDVDおよびBlu-ray(但しリージョンB)がリリースされている(2014.1 Third Windows Film)。

 監督のシン・スウォンは1967年ソウル生まれ。ソウル大学独語教育学科を卒業後、教職に就く。この間2編の青少年向け長編小説を執筆。その後韓国芸術総合学校映像院映画科に入学しシナリオ執筆を専攻。そのご映画プロダクションに就職してシナリオ作家生活を送る。さらに2002年短編『飴より甘い』2003年短編『ひげを剃る』を発表。そして2009年初長編『レインボー』で全州国際映画祭JJスター賞受賞。本作は長編第2作。

原題『명왕성』英題『Pluto』監督:이수원
2012年 韓国映画 カラー 1:1.85 107分

韓国盤ビデオ情報
[DVD]
発行・販売: EOS Entertainment 画面: Anamorphic 1:1.85 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:102分 リージョン 3
字幕: 韓/英 2013年 10月発行 希望価格W25300
[DL File]
720p 16:9 107分 DRM Free 1348MB 価格W2000

予告編 (韓国語 YES24)
http://vod.yes24.com/MovieContents/MovieDetail.aspx?did=M000044324


『レインボー』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201111/article_11.html

「『冥王星』側が交差上映に苦言…“韓国の現状に言葉も出ない”」 K-style 2013.7.12
http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=1973267

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