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zoom RSS 金正恩の北朝鮮は崩壊しない (2)

<<   作成日時 : 2014/07/03 21:24   >>

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 やはり先週末都内で行われた別の北朝鮮関連ワークショップ。こちらでは韓国で北朝鮮問題となると必ずテレビにコメンテーターとして呼ばれる(但し最近は、韓国の北朝鮮問題への関心の薄まりから、あまりコメンテーターとして呼ばれる機会が少ないそうだが)金根植・慶南大教授をメインパネリストとして呼ばれて行われた。

 こちらでも金正恩体制には安定性の増大の側面と弱体化の側面の両面があるが、短期的には安定度が増していることが指摘された。特に経済面で非常に順調であって、これは諸外国から経済制裁を受けつつもこれだけ順調なのは驚異的であり、これが国内的に強い支持を呼んでいるという点が強調された。

 これらの韓国側の北朝鮮問題専門家の見方が、仮に正しいとすれば、今日本で言われている、北朝鮮は八方ふさがりの状況をなんとか打開し、日本からの援助ほしさで、拉致問題での譲歩を考えているだろう、との一部日本側の観測は全く的外れ、ということになる。

 金根植教授の主張の要点は次の通り。

 金正日時代は、金日成の「主体主義」を純粋イデオロギー(あくまでも理念的なイデオロギー)として棚上げし、「先軍思想」を具体的な実践イデオロギーとして採用していたが、金正恩時代は、「先軍思想」も「主体主義」と併せて純粋イデオロギーとして棚上げし、新しい実践イデオロギーを採用しつつあるのではないか。その実践イデオロギーの暫定的な言説として提唱されているのが、「祖国愛」「人民愛」「後世代愛」1)の三愛からなる「金正日愛国主義」と思われる。つまり事実上「先軍思想」を否定はしないものの棚上げしていく可能性があるのではないか。

 金正日時代の対外戦略は対米安保依存(アメリカから自国の体制維持保証を取り付けること)と対南経済依存(韓国の援助に経済的に依存する)の二本柱だった。だが金正日の晩年にこの方針は間違いだったと総括された可能性がある。そこで金正恩体制では、「選択的平行戦略」を取ろうとしているものと思われる。「選択的平行戦略」とは、中国が大きく存在感を浮上させたことを背景に、安保面では中国と米国の対立を前提に、両者を天秤に掛けながら最大利益を確保するともに、経済面では中国と韓国の間で利益を確保、さらにはロシア、日本も睨みながら多方面外交を展開し利益を確保しようというものである。

 これらを可能にする背景として、今、金正恩の政権運営が非常に上手く行っている点が指摘できる。まず金正恩の権力掌握能力について、事前には懐疑的に見られていたが、実際には予想以上に素晴らしかった。さらに経済状況が食糧事情の改善を中心に大幅に改善されており、中朝交易も順調に伸びていて、5M (Money [貨幣流通], Market [市場], Mobiles [携帯電話], Motor cars [自動車], Middle class [中産階層])の拡大が著しい。これらが、対外的に経済制裁を受けながら実現していることを考えると驚異的なことである。また市場が拡大し、これはもはや抑えられないが、これは必ずしも不安定化をもたらすものではなく、市場から利益を得る勢力と政治権力の結託によりむしろ安定化をもたらす可能性が出てきている。
 これらは朴奉珠(元総理)/金敬姫が2000年代前半に種を蒔いた成果が今ようやく出てきた結果と評価出来る。

 情報公開もかつてないスピードで進んでいるが(ミサイル失敗の発表や張成沢の処刑など)、これは携帯電話時代になって中国側からの情報流入が阻止できないという現実を踏まえ、中国側から情報が国内に入る以前に発表するという姿勢が徹底した結果である。

 この中で金正恩は今、危機を切り抜けることができたと、非常に自信を持って政権運営を行っている。国民には「強盛大国」は既に実現できたとアピールでき、先軍主義を棚上げし新しい方向を模索する政治的余裕が生まれている。この中で、金正恩は「苦難の行軍の時代(=金正日時代)には戻らない」と表明し国民の支持を集めている。

 対外政策の方向性が、対外融和なのか強硬策を取るのかはっきりせずふらついているという見方もあるが、自分は同意しない。それはむしろ、金正恩の政権運営自信の表れと見ている。つまりどの大国(対中、米、韓)にも期待する必要はなく媚びることなく是々非々で臨めるフリーハンドを確保できているというアピールと見ている。
 また核を放棄せず、経済開発も併せて行う「併進路線」への意思を表明しているが、これは核の保有によって国防費の追加支出なしに戦争の抑止力と防衛力を高め、経済建設と人民生活向上に力を集中させることが出来ると位置づけている。また10年、20年のスパンで見ると、各国との関係が改善されれば、インドのように北朝鮮の核所有が国際的に容認される事態もあり得るのではないか。
 また金正恩のリゾート開発への注力をバカにする見方もあるが、貧者が手っ取り早く外貨を稼ぐ方法は観光であり、世界的な奥地観光ブームもあって、かなり有効な外貨稼ぎの手段になる可能性がある。
 
 もちろん、金正恩体制は長期的には不安定要因を増す可能性もある。今は張成沢の処刑による恐怖政治の効果で短期的には安定性を増しているが、それが、金正恩にNoと言えなくなり、不都合でも、成果がすぐ出にくくても国にとってやらなければならないような政策が回避される、とか、経済発展による利権の増大に伴うエリート間の葛藤の深刻化などの可能性が挙げられる。さらに、韓国が過去そうであったように、そもそも民主化は経済発展が達成されてこそ可能になるものであり、発展を達成すれば長期的には体制転覆の可能性は出てくるだろう。あるいは金正恩が政策が上手く行っていると慢心する可能性もある。
 さらに、金正恩の政策は米中間の緊張・対立を前提とした政策であり、米中が手を結べば一挙にその構図が崩壊するだろう。

 しかし、今、北朝鮮は最大危機を克服したことは間違いなく、当面内部からの変化の醸成を待つしかない。北朝鮮をやっつけたり、崩壊を前提とする政策ではもはやダメである。このなかで韓国は、相手を愛しもせず憎みもせず、北朝鮮との、中年夫婦のような共存関係を探る必要がある。


1)「人民愛」は党幹部の横領と腐敗への厳重処罰の意思表明、そしてある程度の「民主」化、そして「後世代愛」は次世代に対し経済発展と人民生活の向上をアピールするもの。

[この項続く]

[前項]
http://yohnishi.at.webry.info/201407/article_2.html


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金正恩の北朝鮮は崩壊しない (1)
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