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zoom RSS 孫崎亨著 『戦後史の正体』は陰謀論か?(1)

<<   作成日時 : 2014/06/18 21:28   >>

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孫崎亨(まごさき・うける), 2012,『戦後史の正体』, 創元社 (戦後再発見双書)
 創元社から、「戦後再発見双書」の第一弾として2年前に刊行された本書。ベストセラーとなりかなり話題になった本だが今さらながら読んでみた。刊行当初、朝日新聞の書評欄のベストセラーを扱うコーナーで、評論家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、アメリカ陰謀論だ、と断じていたのを記憶しているが1)、果たしてどうなのか。
 孫崎氏は本書の中で、すでに佐々木俊尚氏のような反応を織込み済みだった。「こうした事実を現場で実際に体験していないと『それは陰謀論だろう』などと安易にいってしまうことになります。しかし少しでも歴史の勉強をすると、国際政治のかなりの部分が謀略によって動いていることがわかります。日本も戦前、中国大陸では数々の謀略をしかけていますし、米国もベトナム戦争でトンキン湾事件という謀略をしかけ、北爆[北ベトナムへの空爆]の口実としてことがあきらかになっています。もっとひどい例としては、米国の軍部がケネディ政権時代、自国の船を撃沈するなど、偽のテロ活動を行って、それを理由にキューバに侵攻する計画を立てていたことがわかっています(「ノースウッド作戦」)。ケネディ政権はこの計画を却下したので実行はされませんでしたが、当時の参謀本部議長のサインが入った関連文書を、ジョージ・ワシントン大学公文書館のサイト(http://www.gwu.edu/~nsarchiv/news/20010430/)で見ることができます。学者や評論家がそうした事実を知らないまま国際政治を語っているのは、おそらく世界で日本だけでしょう」(本書 p11)「だから基本は、証拠は絶対に表に出ないのです。しかし現実には裏工作は存在する。『証拠がないからそれは陰謀論だ』などといっては、話にならないのです」(本書 p13)。おそらく孫崎氏に言わせれば、佐々木俊尚氏は外交の現場も知らず、歴史も不勉強な評論家と一蹴することになるのだろう。
 だが、私は外交の現場を知らないが、チリのアジェンデ政権崩壊にCIAが関わっていたことは明らかだし、日本だけアメリカの謀略工作をのがれていたと考える方が、私も不自然だと思う。

 本書を読んで面白かったところを引用してみよう。本書104-105ページにウィキリークスによる暴露文書の中で2008年在日米国大使館が国務省にあてた電報の紹介があった。内容は駐日イラク大使がイラン大使の訪問を受けた際の会談内容である。イラク大使は米大使館に報告していたのだ。これは米がイラクの原子力開発を止めさせようとしているが、その際イランに軍事力を行使するつもりがあるかどうかという点に関するものである。


[引用開始]
「まずイラン大使が『米国がイランを攻撃しないことはだれも知っている』と述べた。それに対してイラク大使は次のように説明した。『そういう結論を出すことは深刻なまちがいにつながります。われわれは他国の政策がどうかを正確に知ることはできません。たとえ一時的にそれを知りえたとしても、その後のさまざまな出来事や認識の変化によって、政策は急に変わります。米国はイランを決して攻撃しないというように、特定の出来事が起らないと推定し、その推定にもとづいて政策を立てるのはまちがいです。かつてサダム・フセインが米国に対してそういう推定をして、致命的失敗を犯しました。イランは同じような失敗を繰り返すべきではありません』
 イラク大使が二度の対米戦争から、貴重な事実を学んでいることがわかります。一方、それに対してイラン大使の方は、物事がよくわかっていないように思えます。(中略)しかし、私はここに登場する駐日イラン大使をよく知っています。たいへん知性の高い外交官です。そのイラン大使がなぜ、このような意見を述べているのでしょうか。
 事情はおそらくこうです。イランは国家の方針として原子力開発を進めています。しかし米国は軍事攻撃をちらつかせて、それをやめるよう圧力をかけています。そんなときにイラン大使が本国へ、「米国の軍事攻撃はありえます」などという電報を送ると、「なんだ、あいつは。原子力開発をやめろというのか。本国の方針に逆らうつもりか」となって、最悪の場合、解任されてしまうこともありえます。
 だから自分ではいえない。しかし「イラク大使が軍事攻撃はあるといっています。ひょっとすると正しい判断かもしれません」という形で警告するのはセーフです。そこでイラン大使は、わざと「米国は軍事攻撃をしてこない」と発言し、イラク大使に反論させているのです。おそらくその反論を本国に伝えたと思います。外交官はよくこういう形をとって本国に進言します。
[引用終わり]

 私は、これを読んで、ああそうだったのかと合点がいった。それは、民主党政権時代、中国大使に、中国に通じた元伊藤忠会長の丹羽宇一郎氏を起用しながら、尖閣諸島への対応を大きく誤った点についてである。丹羽氏は尖閣諸島国有化が日中関係に危機をもたらす、と直言した。しかし民主党政権はその提言を却下した。そもそも民主党政権こそ、丹羽氏なら中国事情について正確な情報を挙げられるだろうと、彼を起用したはずなのに...
 だが孫崎氏の記述を読んで疑問が氷解した。おそらく丹羽氏は企業人だから、孫崎氏が描いたような、もってまわった外交術の知恵に欠けていたのだ。だから、自分の信じることを政府に直言したのだろう。しかも、それをメディアの前で公言してしまった。だがそれは孫崎氏が指摘したような落とし穴にはまってしまったのだ。例えば、丹羽氏が駐中米大使と会談し、米大使のアドバイスとして伝えれば、政府も無闇に彼のアドバイスを却下しなかった、ということなのだろう。事実、丹羽氏は雑誌メディアから中国の立場を支持する売国奴大使などと散々たたかれた。

 この記述を読んだとき、これが「外交現場のリアリティ」か、と目から鱗が落ちる思いであった。また、そもそも孫崎氏がこれを書いたのも、イラン大使のエピソードから、当時の丹羽駐中大使の状況を示唆する意図で書いたのかもしれない。

1) 2012.9.30付け、朝日新聞書評欄

[この項続く]

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2014/06/25 23:56
孫崎亨『戦後史の正体』は陰謀論か?(3)
 そして、これは孫崎氏だけではなく、他の国際ジャーナリストらも指摘していることであるが(それにもかかわらず日本において主流の認識になっていない)、1980年代後半以降、特に1989年の冷戦体制崩壊以降、アメリカの最大の敵は、冗談ではなく、日本になっていたにもかかわらず、日本側には全くその自覚がなかった、という指摘の重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。  ドルショック、銀行へのBIS規制の導入、そして本書に指摘はないが、日本企業への国際会計基準の適用など、アメリカの組織的な日本経... ...続きを見る
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