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zoom RSS 日本の集団的自衛権行使可能化と「戦後レジームの脱却」は両立しない

<<   作成日時 : 2014/03/24 08:03   >>

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 2014年3月14日午前の参院予算委員会で、安倍首相が河野談話の継承の表明に追い込まれた1)。これに対し、安倍首相は「戦後レジームの脱却」を目標していたはずなのに、なぜだ、という声がネット上に出ている。あるいは「戦後レジームの脱却」のための「高等戦術」なのだと何とか解釈しようという向きもあるようだ。
 だが、あの河野洋平元首相が憑依したかのような「筆舌に尽くしがたい、つらい思いをされた方々を思い、非常に心が痛む」との修飾語をつけての河野談話の継承表明に、そんな「高等戦術」などあるわけがない。アメリカの圧力に屈した、ただそれだけだ。

 もっとも安倍首相が日米同盟強化を意味する集団的自衛権を認めさせようとしてきたことを考えると、極めて当然の帰結である。私に言わせれば、むしろ不可解なのは、なぜ今まで安倍首相は集団的自衛権の見直しと「戦後レジームからの脱却」が両立可能だと考えていたかという点である。
 本来日米安保体制こそ戦後レジームそのものであって、その日米安保体制を強化しようという日本の集団的自衛権行使可能化と「戦後レジームからの脱却」は両立不可能なはずである。アメリカを相手とした集団的自衛権行使を認めさせようとする限り、むしろ「戦後レジーム」は強化されるほかない。今回の事象は、そういった安部路線の矛盾が露呈したにすぎない。

 では、そもそもなぜ、安倍首相は(そして日本のネトウヨもそれに何の疑問も感じていなかったのだろうが)集団的自衛権の見直し=日米同盟の強化と「戦後レジームからの脱却」が両立可能だと考えていたのだろうか。一部でも指摘されているが、おそらく安倍首相は祖父である岸元首相のやりたかったことを、ただ闇雲になしとげたい、というのが彼の望みなのだろう。
 仮に岸元首相が安倍首相が今日論じているような「戦後レジームからの脱却」を狙っていたと仮定すると(本当にそうなのかどうかは検討の余地があるが)、では、岸元首相はなぜ日米同盟の強化と「戦後レジームからの脱却」が両立可能と踏んでいたのだろうか。おそらくそれは冷戦体制という時代的背景があったからだ。1960-70年代、冷戦体制最盛期、アメリカは反共防波堤として各地の軍事独裁政権を支援・活用していた。例えば、台湾の蒋介石体制しかり、韓国の朴正煕体制しかり、アルゼンチンの軍事独裁体制、チリのピノチェット政権しかりである。あのイラクのフセインの軍事独裁体制も、もともとはイランに対する抵抗勢力としてアメリカが育ててきたのだ。その子飼いの犬に手をかまれてしまったのが湾岸戦争であったのだ。
 おそらく岸元首相は、アメリカは反共防波堤として日本をもっと働かせるために、日本がある程度軍事体制に戻るのを容認するだろうと考えて、その中で日本の「戦後レジーム」からの脱却をアメリカがある程度認める余地があるはずだと踏んでいたのであろう。

 だが冷戦体制の崩壊に伴い、反共防波堤は不要となった。その中で軍事独裁体制のような、自由、人権、民主主義的価値を尊重しない体制をアメリカが認める意味がなくなってしまい、岸元首相が踏んでいたような余地はなくなったのだ。
 今や、中国は世界最大の米国債の買い手であるとともに、アメリカの利益を稼ぎ出のに重要な世界最大の市場である。米中関係は単なる対立関係ではなく、対立と協力が絡まる複雑な相互依存関係である。それこそアメリカは日中の領土戦争などに巻き込まれたくない。
 このような中、日米同盟の強化は、日本のアメリカ的価値観へのさらなる従属が求められることを意味する。そんな中、欧米の価値観とはそぐわない「戦後レジームからの脱却」なぞアメリカから許されるはずがない。それが可能と見るのは時代錯誤な認識である。集団的自衛権を行使できるようにすると言うなら、「つべこべ言わずに、アメリカの言うとおり米日韓の軍事協力体制作りをやれ」「そのために韓国の機嫌を損ねるような、従軍慰安婦の否定など許さん」「中国を軍事的に挑発しかねない、靖国神社参拝など止めろ」... 要はそういうことなのだろう。安倍首相が集団的自衛権に前のめりになればなるほど、ますますアメリカからの圧力は強くなる構図である。
 そういう中、日本は中国との間に領土問題をという弱みを抱え、いざとなればアメリカの助けが切実に必要なため、アメリカに自分の要求を飲ませるだけの材料がない。アメリカにとってみれば、何かの時にはアメリカの艦船を助ける程度のメリットしか日本が提供できないのであれば、自分たちが日中の領土戦争に巻き込まれたときのリスクの方が遙かに大きい。もし日中戦争が勃発すれば東アジアの成長力を取り込もうというTPPも含めた展望が台無しになりかねず、アメリカからすれば全く割に合わない話だ。アメリカに恩を売るどころではない2)。
 従って、日本はアメリカから「いざとなってアメリカに助けて欲しいのなら、アメリカの言うとおりにしろ。アメリカの意に反して中国を挑発して領土戦争を起こしたら助けてやらないからな」と恫喝されれば、安倍首相は「アメリカ様の言うとおりに致しますだ」と平伏するしかない。それが今回の河野談話維持表明なのだ。

 日本がアメリカに対して、自らの主張を飲ませるためには、アメリカに対して、対中領土紛争のような弱みを抱えないことが絶対必要だ。だが、安倍首相は、自己満足的な主張を繰り返すことで、近隣諸国との紛争要因を増大し、アメリカに対する弱みを増やしている。その結果外交的選択肢を自ら狭めるという墓穴を掘っているのが、今の日本の姿である。集団的自衛権と「戦後レジームの脱却」を両立させたいなら同盟相手を変えるしかない。だがどこを相手に同盟を組むのか?

 逆に今の自民党内の中からは安倍首相に手がつけられないので、集団的自衛権を認めてアメリカへの依存を深め、アメリカから安倍首相を牽制させよう... そういう考えで解釈変更に賛成している自民党政治家もいるのではないだろうか?

1) 東京新聞の報道によれば、

「首相は第二次安倍内閣では、慰安婦問題について『つらい思いをされた方々にお見舞い申し上げたい気持ちは歴代内閣と変わらない』としつつ、河野談話の見直しや評価については『官房長官による対応が適当だ』と明言を避けていた。
 一方では第二次内閣発足直前の二〇一二年の自民党総裁選で、』『河野談話で子や孫の代に不名誉を背負わせるわけにはいかない』と見直しに意欲を示していた。首相就任後も『(軍が直接関与した)強制連行を示す証拠はなかった』と強調していた。」

(東京新聞「慰安婦問題 首相、河野談話の継承明言 官房長官『検証は実施』」2014年3月14日夕刊)

また、官房長官は昨年の5月にも「河野談話は見直さない」との表明を行っている(「官房長官、河野談話の見直し否定 米前駐日大使の懸念に」朝日新聞 2014.5.7)。今回も菅官房長官同様のコメントで切り抜けようとしたが、アメリカにバックドロップを決められ、ついに首相自身の表明に追い込まれたのだろう。

 もっとも安倍首相は第1次内閣であった2007年4月に、慰安婦問題について当時のブッシュ大統領に対して謝罪した、と日本の各紙に報じられており、当時既にアメリカから河野談話の見直しについて牽制されていた。ワシントンポストのインタビューにも

(記者) Your comments on "comfort women" caused an outcry in the United States. Do you really believe that the Imperial Army had no program to force Korean, Chinese and other women to provide sexual services to the Japanese Imperial Army?

(安部)I have to express sympathy from the bottom of my heart to those people who were taken as wartime comfort women. As a human being, I would like to express my sympathies, and also as prime minister of Japan I need to apologize to them.

と、慰安婦に対する謝罪の表明に追い込まれていた。だが、記者から、それはあなたが国会で元々言っていたことと異なるではないか、と突っ込まれると

(記者) But that's not what you said originally in the Diet. You said that there was no evidence.

(安部)I wasn't the first to make the remarks that I made.

(記者)You were not the first to say that there wasn't evidence of links to the Imperial Army?

(安部)What I was saying is that I wasn't the first to comment on the facts.

と責任逃れの返答。さらに

(安部)My administration has been saying all along that we continue to stand by the Kono Statement. We feel responsible for having forced these women to go through that hardship and pain as comfort women under the circumstances at the time.
と、今回と同様河野談話の維持と、従軍慰安婦に対して責任があると感じているとの表明に追い込まれていた。

出典: "A Conversation With Shinzo Abe" The Washington Post 2007.4.22
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/04/20/AR2007042001930_pf.htm

結局、今回の事態は安倍首相が国内向けと国外向けに二枚舌を使っていたのが、国外向けの一枚舌しか使えなくなった、と見ることもできよう。

2) そもそも「恩を売る」という発想は対米外交では無効だと私は思うが、日本政府も国民も良くわかっていないようだ。

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