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zoom RSS 『弁護人』 - 「トガニ」に続く、韓国社会派エンタテインメント映画

<<   作成日時 : 2014/03/05 00:37   >>

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画像 盧武鉉元大統領をモデルにして作られた映画。昨年末に公開された後、圧倒的な観客動員を誇っており、ネティズン評かもDaumで9.6と極めて高い。監督はWeb連載漫画作者でもある、カン・ウソクならぬヤン・ウソクである。本作品は当初Web連載漫画としてシナリオが書かれたが、最終的に映画として世に出ることになった。

 高卒で司法試験に合格し大田地方法院(地裁)の判事として勤務していたソン・ウソク(ソン・ガンホ)は、判事を辞職し、弁護士事務所を開くべく、故郷に近い釜山にやってきた。釜山弁護士組合の会長、キム・サンピル(チョン・ウォンジュン)に挨拶した後、彼は不動産登記専門の弁護士として開業する。高卒でつてもあまりないうえ、通常の業務では競争も激しいと考えた彼は、全国不動産投資熱気で投機需要が急増した今、新たに弁護士に認められた不動産登記業務を主業務に据えれば、司法書士やブローカーに搾取されることを嫌ったニッチ需要を掘り起こせると考えたのだ。弁護士組合の寄り合いでは高卒の「特攻隊」だから登記業務に手を出すのだと馬鹿にされながらも、彼の狙いは大きく当たって大繁盛。新たに事務室長として、サンピルの紹介でパク・ドンホ(オ・ダルス)、そして喫茶店レジだったムン嬢(チャ・ウンジェ)を雇うまでに。さらに、儲けた金で、かつて建設工事に携わった因縁のマンションの一室も購入する。
 さらに、司法試験勉強時代に、司法試験の参考書を惜しんで、無銭飲食をしたテジトッパブ(豚丼)食堂にいき、女主人のスネ(キム・ヨンエ)にかつての自分の行動を謝りにも行く。
 やがて釜山の他の弁護士たちも不動産登記を手がけるようになり、司法書士からの風当たりも強くなったところで、妻スギョン(イ・ハンナ)の友人からの相談をきっかけに、税務専門弁護士として方向を転換し、さらに金を儲けてヨットを購入するまでになる。
 そんな中、弁護士組合の会長キム・サンピルは、国家保安法関連事件で濡れ衣を着せられた被告たちの救援活動に邁進していた。だが自身も当局から問題人物視され、弁護士資格の一時停止を受けるなど、自分自身が直接弁護活動をしていくことが困難になっていた。一方、釜山でもソウルのように法務法人を設立してはと考えたソン・ウソクは、世話になったキム・サンピルに、共に法務法人を設立しないかと持ちかけるが、それどころではなかったサンピルには「君とは行く道が違う。悪く思わないでくれ」と断られてしまう。
 だが、いよいよ自分の代わりに弁護活動をしてくれる弁護士の手配に窮したサンピルは、猫の手も借りる思いでウソクのもとへ国保法関連事件の弁護を引き受けてくれないかと訪ねてくる。だが刑事訴訟はウソクの専門外。今度はウソクが断ることになる。

 そんな中、ウソクは、酔っぱらって店内でけんかして以来、行きづらくてしばらく足が遠のいていたテジトッパブ食堂が店を閉めていることを知る。どうやら食堂のおばさんスネの息子ジヌ(シワン)が行方不明で、おばさんは息子を捜し歩いているのだという。ウソクは警察に行く所用のある事務長ドンホにジヌの消息が分かるかもしれないので、警察で聞いてみるよう頼む。だが彼がジヌの消息を警察で聞くと、実は国家保安法関連で捕まっているのだと言うことが分かる。これは一大事だと、彼は自分の胸にしまっておくことを決意する。
 その数日後、食堂のおばさんが弁護士事務所の前にうずくまっている。実は裁判所からジヌのの裁判の通知が来たというのだ。見ると国家保安法違反容疑である。その日、ウソクは韓国の10大建設会社の一つから顧問契約の予定が入っており、帰って来てから話を聞くからと言い置いてドンホと出かける。ドンホにジヌのことを問い質すと、知っていたが余りにも重大なので黙っていたという。
  数日後、ウソクはスネの自宅を訪ねると、不在であった。帰ってくるのを待つと、彼女は拘置所に接見に行ったが、却下されたのだという。そんなのは違法だと、ウソクはスネと共にジヌの接見に行くが、拘置所は接見を許可しようとしない。ウソクは担当者を告訴するとさんざん息巻くと、担当は公安担当のカン検事(チョ・ミンギ)に連絡、検事は、その弁護士が税務専門弁護士、ソン某だと聞いて、キム・サンピルの仲間ではなさそうだと、接見を許可する。
 ようやく、ジヌとの接見が許可されるが、出てきたジヌは... 恐るべき事になっていたのであった...

 盧武鉉元大統領が大学を卒業せず高卒で苦労して司法試験に合格した人権弁護士出身という話は知っていたが、元々は人権問題に関心のない税務専門弁護士だったという話はこの映画を見るまで全く知らなかった。映画の初めに、「この映画は実在の人物をもとに作られているが、フィクションである」とのクレジットが入る。実際登場人物名も、実在人物から変更されている。
 どこまでが事実なのだろうとネットで情報を探すと、Wikipedia韓国語版などの記述を見る限り、基本的な部分は事実に基づくようだ。盧武鉉は実際、釜山商業高校を卒業後、独学で司法試験に合格し、税務専門弁護士として釜山地域で五指に入る高収入弁護士として鳴らした様で、ヨットも楽しんだというのも事実の様だ。とくに釜山の有力企業企業家の相続税対策で辣腕をふるい、税金問題の民事訴訟では勝率9割を誇る辣腕弁護士だった様である。
 この映画は1981年9月に起った釜林(プリム)事件1)を中心に描いているがこの事件は盧武鉉が税務専門弁護士から人権弁護士へ転身する大きなきっかけになった事件である。盧武鉉は中学一年の時に、学内の李承晩顕彰イヴェントに抗議したりして、学校から処分を受けたりした経歴がある様なので、全く政治に関心がなかったわけではないだろうが、盧武鉉自身の著書『運命だ -盧武鉉自著伝』(2010, 出版社:トルベゲ 9788971993873)『あなた、私を手伝って』(2002, 出版社:セト 9788987175195)(韓国語)の記述によれば、1979年の「釜馬民主抗争」(1979年10月、釜山、馬山一帯で起った、民主化を要求した反政府デモ運動)で、釜山の人権弁護士として知られたキム・グァンイル、イ・フンロク弁護士が不当に拘束されたときも、噂に聞くだけでほとんど関心がなかったという。
 だが、公安当局によって、単なる読書学習会を共産主義者の違法組織にでっち上げた釜林事件が起ったとき、キム・グァンイル弁護士は公安当局の脅迫により、被害者の弁護を受けることが出来ず、手が足りなかったため、盧武鉉が司法試験の独学しているときに多少指導した縁で彼を含む数名の弁護士に弁護を依頼したという。
 盧武鉉自著の記述によると、そもそも事件の概要も何も知らなかったので却って怖いもの知らずで引き受けたらしい。だが余りにも酷い当局の捏造に怒りを感じて、さらにのめり込んでいったという。
 映画のジヌのモデルになったらしい、被害者の一人、ソン・ビョングンの場合、当時24歳で釜山大法学部卒業後工場に勤務していたが、盧武鉉が接見したときは、映画とは異なり既に拷問からしばらくたっていて、治療を受けて拷問の痕のかなりの部分は回復していた様だが、それでも痣などの拷問の痕跡が多数見られたという。また母親が、死んでいるのではないかと、変死体が出るたびに死体置き場を探し回ったのも事実の様である。

 この映画は何と言っても脚本(ヤン・ウソク+ユン・ヒョノ)がよい。前半に出てくる何でもないことが、一つ一つ後半の伏線となっている。そして、軽く明るく始まる導入部から、笑わせながらも楽しく見せる成功談が、後半一転大きく変化する。しかもその反転において、政治に何も関心のなかった主人公が、強く権力への怒りを感じる転身の心情描写が非常に説得力を持って描かれている。
 それとやはり主人公の造形がよい。特に高卒弁護士として業界から差別され、一方自身も劣等感をもちながらも、「特攻隊」として、それを逆手にとって、今までの既存概念にとらわれない領域を開拓する。そして、それが後半の被告たちの弁護にも活きていく。SKY(ソウル、高麗、延世大)出身の法曹関係者は、判事であれ、検事であれ、弁護士であれ、例え対立する立場であってもある種の仲間内感覚にあふれている。その中で一種のコンテキスト、雰囲気の共有が行われる。だが、高卒のウソクはそのコンテキストを共有しない。だから弁護対象である被告、クライアントの利益を第一に闘おうとする。そのため弁護団長ともぎくしゃくし、ウソクは一人で突っ走ることになる。だが、よく考えるとウソクの態度はやはり基本なのだ。こういった人物像が非常に魅力的に描けている。やはりソン・ガンホかこの役を受けたのも『殺人の追憶』の高卒刑事役の影響なのだろうか。
 それと何と言ってもやはり盧武鉉の知られざる(?)原点を見せてくれるのがよい。『トガニ』に次ぐ社会派エンタテインメント映画として推薦したい。韓国の現代史に関心のある方には必見であろう。
 因みに主人公の役名、ソン・ウソクという名前は、当初、ノ・ムヒョン[盧武鉉]をもじってノ・ウヒョン[愚賢]にしようと思っていたらしい。しかしフィクション化しているので、最終的には自分たちがストーリーの責任を取るという意味で、俳優のソン・ガンホと監督のヤン・ウソクの名前を足して二つに割って決めたという(下記監督インタビュー記事参照)。
 本作品は、2013年12月18日韓国封切り。現在もロードショー中。韓国観客動員数は1130万8672人(Cine21, 2014.2.9現在)。国内未公開。

 監督のヤン・ウソクは1969年ソウル生まれ。高麗大学で哲学および英文学を学ぶ。大学卒業後放送局に入社(KBSか?)。「映画音楽室」という番組製作に携わる。その後、カン・ジェギュフィルム、MBC映画企画室、(株)ロボットテコンVと映画製作会社を転々としてプロデューサーや脚本に携わる。その傍ら、趣味としてWeb漫画を書き始め、南北核危機を扱った「スティール・レイン」を発表、そして釜林事件を扱った「弁護人」をWeb漫画として準備していたが、最終的に映画としてつくられた。本作が監督デビュー作。
 以上スターニュース2014.1.10付けのヤン・ウソク監督インタビュー記事を参考に執筆
1. http://star.mt.co.kr/stview.php?no=2014011008200014970&type=3
2. http://star.mt.co.kr/stview.php?no=2014011009451543689&type=3
 なお。ヤン・ウソク監督は監督デビュー歴代興行記録第1位を今回記録。今までの一位は2008年『過速スキャンダル』でデビューした、カン・ヒョンチョル監督(822万)、次いで『隠密に偉大に』のチャン・チョルス(2013年、695万)、『オオカミ少年』のチョ・ソンヒ(2012年、665万)。デビュー作で1000万突破は韓国映画史上新記録。
(以上スターニュース「『弁護人』ヤン・ウソク監督、デビュー監督最高記録目前」
http://star.mt.co.kr/stview.php?no=2014010707565950296&type=3  より)

参考資料
「『弁護人』実際人物『盧武鉉、実際に判事と闘いました』」ハンギョレ 2013.12.27付
http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/617377.html?_ns=c1
「映画『弁護人』盧武鉉と釜林事件の全て」2013.11.29付 匿名個人ブログ
http://blog.naver.com/PostView.nhn?blogId=inizios&logNo=10180800260

1) なお「釜林事件」という名前は、ソウルで起った、全斗煥新軍部政府による学生運動団体を一網打http://blog.naver.com/PostView.nhn?blogId=inizios&logNo=10180800260尽にした「学林事件」の釜山版ということから名付けられた。Wikipedia韓国語版「釜林事件」参照( http://ko.wikipedia.org/wiki/%EB%B6%80%EB%A6%BC_%EC%82%AC%EA%B1%B4 )

原題『변호인』英題『The Attorney』監督: 양우석
2013年 韓国映画 カラー 1:1.85 127分


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