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zoom RSS 『鉄道の涙』 - 韓国鉄道労組のロジック (2)

<<   作成日時 : 2014/02/03 23:02   >>

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画像 本書は韓国の鉄道の様々な問題を取り上げているが、これらから韓国の鉄道の置かれた現状を概観すると、次のようなことが指摘できる。

 かつて日本の国鉄が民営化された当時、当時の日本国有鉄道がかかえた莫大な赤字や違法ストを行う組合に対する批判から、民営化を支持する声が非常に多かった。だが、今日の韓国では必ずしも国鉄の民営化に対して歓迎する声ばかりが強いわけではない。むしろ一般国民の間からも民営化を懸念する声がかなり出ている1)。
 一つは現在極めて低廉に押さえられている鉄道運賃が民営化を機に大幅に値上げされるのではないかという危機感が国民の間に共有されているからであろう2)。本書の主張によれば、韓国では日本のように会社側が通勤手当を支給するという慣行がなく、通勤のための交通費は勤労者が自腹を切ることを余儀なくされている。このため韓国でも日本のように民営化して、日本並みに交通費水準が上昇すればそれだけ多くの人の家計を直撃することになり、とうてい認められない。従って、政府は鉄道公社の赤字は「良き赤字」として、政府が補填すべきであるということである3)。
 この中で水西発KTXのように、鉄道事業の儲かる部分が民営化/民間につまみ食いされ、部分的に運賃に引き下げがあったとしても、国の鉄道網全体としては赤字がふくらみ、結局その部分が運賃引き上げ等の形で国民負担の増大につながりかねないという懸念が拡がっている4)。

 もう一つ指摘しておきたいことは、韓国の財閥あるいは外資に対する批判的な視点。特に民間資本の鉄道事業は、国が損失補填を保証し、財閥や外資が何のリスクもなく金儲けする機会を提供することになりかねないという批判だ。
 このような批判のバックグラウンドとして、今の韓国社会で格差の二極分化が進み、財閥の一人勝ち状況が国民からの批判を浴びているという点が指摘できる。
 さらに、韓国初の私鉄であった仁川空港鉄道事業の大失敗。空港鉄道は現代建設が出資して韓国初の私鉄として出発したが、この事業で韓国政府から多額の補助金を引き出して建設された。しかし、実際開業すると、乗客の輸送実績は予測想定需要のわずか7%。過大な輸送需要予測の元に建設されたのだ。このため空港鉄道は莫大な赤字をかかえることに。結局赤字を抱えきれなくなった現代建設側は、空港鉄道の投資ファンドへの売却を画策。しかし、さすがに韓国政府は莫大な補助金を投入させておいて勝手に投資ファンドに売るのは看過できないと、投資ファンドへの売却を許可しなかった。結局、韓国鉄道公社(KORAIL)が有償で買い取ることとなり、現在仁川空港鉄道は鉄道公社の子会社となっている。だが民間資本の尻ぬぐいとして空港鉄道の莫大な赤字はKORAILに転嫁されたのだ。これではKORAILは莫大な赤字を抱えているから民営化すべきという政府の主張に労組が反発するのも当然である。
 そして韓国初の私鉄成功例とされる地下鉄9号線。地下鉄初の待避施設を備えた急行運転など民営鉄道の成功例として賞賛されている。しかし、本書によればこれも大問題だという。まずソウル市が運営赤字の損失補填を約束しているので、民間資本は全く投資リスクを負わなくて済んでいる。もちろん建設時にはソウル市から建設費に対し莫大な補助金を得ている。しかも地下鉄9号線は、地下鉄を保有する地下鉄9号線(株)と運営を担当する会社(サウスリンク9)に分かれ、保有会社は運営会社に運営委託費を払う契約を行っている。問題は運営会社が莫大な利益を上げているにもかかわらず、保有会社は赤字だという。つまり運営委託費が過大すぎるのである。そしてソウル市は保有会社に対して赤字補填を約束している... つまり名目上保有、運営会社に分けた上で、保有会社に赤字を出させることにより、ソウル市から金を搾り取る構造になっているという訳である。
 問題はまだある。地下鉄9号線は、当初首都圏電鉄の統一運賃体系の参加を拒否して、独自に高い料金を取りたいと主張した。これはソウル市が何とかなだめすかせて統一運賃体系に参加させることにしたが、他の地下鉄、国鉄が行っているバスとの乗り継ぎ割引は継続拒否。つまり地下鉄9号線から直接バスに乗り継いでも料金割引はない。このためバス料金の割引を受けたい人は9号線からわざわざ他の地下鉄に乗り継いでどこかの駅に降りてさらにバスに乗り継ぐという不便を余儀なくされている。
 さらに9号線に次ぐ民鉄として出発した新盆唐線は、従来の盆唐線よりも速いという理由で、ついに電鉄統一運賃体系より高い運賃を徴収することをソウル市、政府に認めさせた。
 つまり今韓国の民間鉄道事業とは、政府や自治体に尻ぬぐいをさせつつ、財閥や外資が何のリスクも背負うことなく金儲けできる道具になっている、との批判である。さらに利用者に高い料金やバス乗り継ぎ割引の拒否等で、利用者に対する不便を掛けているという主張である。


1) 例えば、あるタレントが自分のブログに、朴槿恵大統領がそんなに鉄道を売りたいのなら、先に自分の体を売れ、と書き込んで物議を醸した事件が起っている。
2) 因みに日本でも民営化前に初乗り料金が60円から140円に段階的に引き上げられた。それが日本で容認されたのは、バブル時代という時代背景が大きいであろう。
 ちなみに国鉄運賃の変遷は、1969年 30円、1975年 60円、1978年 80円、1979年 100円、1981年 110円、1982年 120円、1984年 130円、1985年 140円となっている。

3) ちなみに韓国の国鉄は、2004年まで鉄道庁による政府直営事業として運営され、2005年1月に韓国鉄道公社が設立され、独立採算の公社事業となった。国鉄が長年政府直営事業であったのは、南北軍事対立を背景として、鉄道が準軍事施設として位置づけられていたこともあるだろう。

4) 日本でも高速バスの規制緩和が進み、貸切バス会社などが多数高速バス事業に参入した結果、確かに高速バス料金は大幅に低下した。しかし一方で、高速バス事業の収益で赤字ローカルバス路線を維持していた地方の多くの路線バス会社は収支が悪化し、ローカルバス路線を支えきれなくなりつつある。さらに一昨年の関越高速バス事故のように、運転手の労働条件も切り詰められ悪化、それが多数の死亡者を出す事故につながっている。
 同様の事態が、韓国の鉄道で起ることが懸念されていると言えよう。

5) 日本では、1991年5月14日に発生した信楽高原鉄道列車衝突事故(信楽高原鉄道の気動車とJR西日本の気動車が正面衝突し、42名が死亡、614名が重軽傷を負う事故)のあと、鉄道の「上下分離」に対する危険性が認識され、直通運転などで他社車両が乗り入れる場合でも、他社乗務員が運転したまま乗り入れさせることはほぼ行われなくなり、自社乗務員に交代させ運転させることが原則となった。Wikipedia日本語版「信楽高原鐵道列車衝突事故」項目参照。


※新盆唐線
新盆唐線株式会社 斗山建設42.78%、大林産業(14.31%)、大宇建設(14.31%)
BTO方式、完工後国に所有権移転、30年間管理運営権付与

運営: ネオトランス株式会社
無人運転
当初、中央線、京義線と直通運転計画もあったが、鉄道設備の差異から直通は中止となった。
都市鉄道法が適用されない広域鉄道

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