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zoom RSS 『ノリゲ(慰みもの)』 - 第二の「トガニ」になり損ねた(?)性上納告発映画

<<   作成日時 : 2013/12/15 01:32   >>

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画像 本作品は、タレント、チャン・ジャヨンの自殺事件(2009年3月7日)1)をきっかけに最近韓国を賑わせている性上納(セックス接待)問題を告発しようという目的意識を持って作られた作品。ただネット評では、マ・ドンソク、イ・スンヨンの熱演にもかかわらず、第二の『トガニ』になり損ねた惜しい作品との声が。それでもネティズン評では8.4(Daum)、7.4(Cine21)(いずれも2013.12上旬現在)とまずまずの点数

 2年前、ある女優が自ら命を絶った。彼女の名はチョン・ジヒ(ミン・ジヒョン)。当初は単純な自殺として処理されたこの事件、だが彼女に生上納を強要された結果の自殺との疑惑が上がり、そして彼女の所属プロダクション社長、チャ・ジョンヒョク(ファン・テグァン)、映画監督チェ・チョルス(チャン・ヒョクジン)、韓国新聞会長ヒョン・ソンボン(キ・ジュボン)がわいせつ行為強要等の容疑で起訴され、公判が開かれる。この事件が起訴されるきっかけを作ったのは、放送記者だったイ・チャンホ(マ・ドンソク)。彼は、発信人が偽装されたメールを受けて、ジヒの自殺直前に性上納があったことを知ったのだ。だがチョン・ジヒの性上納疑惑を報じた後、放送局から解雇され、今はメンタン・ニュースというインターネットでニュースを流す自前のニュースプロダクション(といっても部下はオ・ジンテ[ソン・サムドン]ただ一人)を立ち上げ、事件のその後を追っている。
 この事件の担当検事は女性であるキム・ミヒョン(イ・スニョン)。彼女の父も有力法曹人であったエリート出身。一方被告弁護人は、彼女の父の友人で、彼女も幼いころから知っているユン・ギナム(パク・ヨンス)であった。
 裁判が開始され、しばらくするとユン弁護士からキム検事、裁判長イ・ソンリョル(ソ・テファ)と会食の申し出がある。幼馴染のユン弁護士からの申し出を断ることもできず、キム検事は出席するが、そこで例によってユン弁護士から、適当なところで手を打たないかとの申し出が... だがキム検事はかたくなに断る。

 一方裁判の方は難航していた。状況証拠はかなりあっても、なかなか性上納があった事実を裏付ける決定的物証や決定的な証言をしてくれる証人がいないのだ。決定的物証として有力視されているのは、ジヒが性上納の事実を記録していたという手帳。彼女の元マネージャーキム・ジシク(キム・グァンヨン)が、その存在を見たというのだが、自殺発見時、警察は事件性がないと判断していて、その物証を確保していなかったのだ。そして、決定的な証人としてはプロダクションの同僚ですでに売れっ子であった女優コ・ダリョン(イ・ドア)。だが、彼女は事件発覚後、心に衝撃を受けて休むと言い残し、海外に出ていて、裁判所の度々にわたる出廷要請にこたえようとしていなかった。
 イ・チャンホは経過を自分のニュースサイトで流しながら、その物証と、チョン・ジヒの周辺を追い始めるのだが、彼に終始尾行がついたり、さらにはメンタン・ニュースの事務所が荒らされるなどの事件が起こる... 果たして公判のゆくえはどうなるのか、真実は明らかにされるのか?

 韓国国家人権員会による女性芸能人を対象にした人権侵害アンケート調査(2010)によると、女性芸能人、芸能人志願生中、45.3%が酒接待の要求経験、さらに60.2%が放送関係者や社会有力人士からセックス接待の提案を受けた経験があるという。本作品はこのような性上納(セックス接待)問題を告発しようという目的意識を持って作られた作品である。映画開始すぐ、「本作品出てくる人物、場所、団体、事件等は実際とは関係ない。この映画は架空の話である」旨クレジットが流れる。勿論その通りなのであろうが、逆説的にチャン・ジャヨン事件を想起させるのは明らかである2)。韓国のネット評では第二の『トガニ』になり損ねた、との声が見られるが、柳の下の二匹目のどじょうを狙ったことは否定できないだろう。
 映画は『トガニ』とは異なり、最初から法廷場面として展開され、その中で、陳述中に展開される回想場面が流れることで、事件の全貌を描いていく。
 権力を持つ被告側の弁護人は、裁判が進行してしばらくすると、非公式に裁判長、この事件を担当する女性検事の三者での会食を設定し、事件を上手く丸め込もうとする。しかし、女性検事は弁護士と子供の頃からの知り合いであるにもかかわらず、その要請を拒絶する。のちに被告側弁護人は、一向に退こうとしない女性検事を忌避すべく、女性検事の過去を明らかにするのだが、その中で同時に彼女がなぜ退こうとしない理由も明らかになる。
 この設定の裏には、おそらく韓国社会の中で、パワーエリート同士がぐるになって談合しているのではないかという、司法システムに対する根強い不信を示す一方、女性の存在がその談合社会を突き崩す契機になるのではないかという希望も描かれているのだろう。女性であれば、パワーエリートの側につくことなく、同じジェンダーを通した精神的な連帯が可能だという... それだけ、韓国社会の中で置かれている女性の立場の厳しさを象徴しているとも言える。

 ところで、「第二の『トガニ』になり損ねた」という点だが、最初に事件を描き、その後裁判場面を描き、淡々と進行させたた『トガニ』よりも、本作の法廷場面を展開しながら回想の中で事件を明らかにするという構成は、映画的なまとまりという点では悪くないはずである。しかし、ネット評にもあるように、確かに本作の方がインパクトが弱いのは否めない。今一つ売れない状況に対するタレントの焦りに乗じて、SMプレイを強要する卑劣さなどは確かに描かれているのだが...

 その原因の一つは性上納事件に対する下世話な想像以上のものが映画の中で提示できなかったことにあるのかもしれない。例えば『トガニ』の場合は、ストーリー展開的には非常にべたな筈なのに、ホラー映画を見ているような権力を持つ側の、あるいはある種コミュニティの底知れぬ恐ろしさが描かれていた。それはmise-en-sceneの力だったのかもしれない。それが『トガニ』の場合の大きな説得力の源泉になっていた。だが、本作にはそのようなオーラが感じられなかった。制作側の問題意識には真摯なものがあったとは思うのだが... このあたりが映画作りの難しさなのだろう。

 本作品の韓国公開日は2013年4月28日。韓国観客動員数は169,064人と今ひとつ。国内未公開。

 本作の監督チェ・スンホは1974年生まれ。西江大学法学部卒業後、東国大学大学院演劇映画科映画専攻修士課程修了。その後映画制作プロダクション、エイムハイ・ピクチャーズ設立。2009年映画振興委員会の支援を受け同性愛を扱った『ハロー・マイ・ラブ』(監督:キム・アロン)を制作するなど活動。2011年、音楽ドキュメンタリー『ファンタスティック・モダン・カヤグマー(伽耶琴奏者)』の制作・監督。そして2012年本作を製作し、本年劇場公開。

1) チャン・ジャヨン自殺事件の経緯についてはWikipedia日本語版「チャン・ジャヨン」の項参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/チャン・ジャヨン

2) チャン・ジャヨン事件も上記Wikipediaの記事を見る限り、大山鳴動鼠一匹で終わってしまったようだ。

原題『노기개』 英題『Norigae』 監督:최승호
2012年 韓国映画 カラー 1:2.35 95分

[韓国盤ビデオディスク情報]
タイトル:原題に同じ メディア:DVD 販売元:Nova Media 希望価格: W22000
発売日: 2013.10.1 字幕:韓/英 音声: Dolby 5.1 画面: 16:9 Anamorphic 96分 リージョン:ALL

国内盤DVD発売決定(邦題『おもちゃ 玩具 -虐げられる女たち-』)



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