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zoom RSS 『夜の女王』 - 保守的な非モテ系男子の視点から描く韓国ラブコメ映画

<<   作成日時 : 2013/12/24 01:50   >>

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画像 今まで女の子に全くモテなかった男性が、突然棚ボタのようにきれいな女性と出会って結婚したものの、却って心配が... というややありがちな設定のラブコメ。監督&脚本は本作が初長編作らしい、キム・ジェヨン。なお本作の売りは、2005年に放映され、ビリヤードブームを巻き起こしたSBSドラマ『ファッション70s』の主演二人が再び主演する映画、ということらしい。

 ヨンス(チョン・ジョンミョン)はセキュリティ警備会社に勤務するコンピュータエンジニア。彼は割引カード王と呼ばれ、あちらこちらのお店の割引カードを集め、安く飲食をするのが生き甲斐。だが、お見合いの場で、割引カードを忘れて職場に取りに行って相手から飽きられるなど、空気が読めないこともあり、生まれてから30年間、全くモテなかった。
 そんな彼がファストフードショップでアルバイトするヒジュ(キム・ミンジョン)に一目惚れ。その店に通いハンバーガーを買うこと18万ウォンにして、ようやくヒジュの目にとまることが出来た。彼の誠実な性格を認めた彼女は無事彼とゴールイン。幸せな結婚生活を始める。
 だが、そんな彼らの生活に波風が立つ。きっかけは大学の同窓パーティー。大学でも地味だったヨンスは、今まで同窓パーティーに出かけても多くの同窓生から、君誰だっけ、と言われるような存在だった。だが、妻を同伴して同窓パーティーに出ると、一躍美形の嫁さんを貰ったことでいきなり皆の羨望の的に。かつての片思い相手で、レポート作成代行などさんざ良いように使われたあげく振り向いて貰えなかったムンスク(イ・ジュウォン)にも一矢を報いた。
 友人たちに散々妻自慢をした所で帰ろうとした矢先、パーティーのパフォーマンス大会での一等商品がキムチ冷蔵庫と知って、突然妻の目が輝く。実は姑にキムチ冷蔵庫をプレゼントしてあげたいと思っていたのだ。彼女は見事なセクシーダンスで、一等を獲得し、姑に冷蔵庫をプレゼントできたことは良かったものの、逆にそれがヨンスの心に波風を立てる。
 もともとヨンスは非常に堅物。10年あまり前の軍隊時代、同じ部隊の友人たちが、TVに映るイ・ヒョリのセクシーな姿に魅了されていた中、ひとりあんな「ナルラリ(遊び人、プレイガール)」みたいな女なんてと背を向けていた。
 ヒジュは帰国子女で英語も堪能だと聞いていた。だが彼女の過去についてはほとんど何も知らない。そんな中彼女が密かに封印していたアルバムを見て、その中の彼女の写真にショックを受ける。また、彼女が特異な英語を活かして通訳や翻訳の仕事を一所懸命やろうとしていたのも、彼女に専業主婦でいることを望んでいたヨンスは気に入らなかった。
 ひょっとすると彼女は過去「ナルラリ」だったのではないか。そんな疑惑に駆られたヨンスは友人ジョンベ(キム・ギバン)を頼って彼女の過去探索kに乗り出すのだが...

 男性が自分の恋人や妻が完璧であると、相手に対し劣等感を感じ、それが男性の自尊心と衝突して不安感に駆られることはよくある。例えば漫画家の西原理恵子の元夫で、癌のため亡くなった鴨志田穣がアルコール中毒に溺れたのも1)、おそらくは彼の目には自分の妻が余りにも完璧に見えたにもかかわらず、自分はそれに釣り合わないのではないかという劣等感との戦いがずっとあり、それが彼を酒やDVに走らせていたのではないかと思われる。おそらく、西原自身は彼の無頼ぶりも含めてありのままの鴨志田を受け入れるつもりでいたと思う。しかしおそらく、鴨志田自身は、彼の無頼ぶりは自ら選択したものではなく、そう生きるしかなかったからそう生きてきたという劣等感に苛まされ、自己肯定ができず、それと男性の自尊心との葛藤の中で、西原の自分に対する気持ちをどうしても信じることが出来なかったのだろう。
 本作品は、まさにそのような男性の弱みを突き、それを慰撫するラブコメ映画である。その背景として、家父長的価値観はそのままであり、男性の自尊心に対する要求水準も高いままであるにもかかわらず、韓国社会の過当競争社会化、ならびに急速な少子化の進行に伴う韓国家族システム弱体化の進行により(映画の中でも家族の影が薄い)、男性が「強い」男性でいることが困難となり、男性が自尊心を維持することが極めて困難になっているという二律背反の社会状況があると思う。

 主人公ヨンスは、良く言えば「堅い」、生活保守主義的価値観の持ち主でありながらも、「恋愛市場」における弱者であった。そんな恋愛市場のニッチに彼の救世主として現れたのが、ヒジュであった。それでも「市場」と関係なく二人だけで過ごせていられれば幸せだった。だが、大学同窓パーティーという場で彼女の「恋愛市場」での価値の高さが明るみになる。それだけなら市場価値の低い自分が大金星を射止めたで済んでいたのであろうが、彼女が「ナルラリ」だったかもしれない、という疑惑がわくことで、彼女が「恋愛市場」のみならず「性愛市場」にても強者であったことが「明らか」になるにつれ、ヨンスの男性としての自尊心は崩壊の頂点に向かう。
 だが、最終的に彼女はヨンスの想像するような「ナルラリ」などではなく、ヨンスにとって「都合の良い女」であることが最終的に明らかになることにより、ヨンスの崩壊しかけた自尊心は慰撫され、回復に向かい、夫婦関係は修復される。いわば韓国社会が厳しさを増す中、立てることの難しくなった男権意識を慰撫するところに本作品のセールスポイントがあるである。とはいえ、その男権意識はもはや昔のようなマッチョでパワフルで栄光に満ちた男権ではもはやあり得ない。

 ちなみに、本作品の人間関係の市場化を巡る構図は途中までは木下順二の戯曲「夕鶴」に似ている(とはいえ男権保守的意識は全くない)。但し「夕鶴」の場合、女房つうの価値を市場化しようとしたよひょうのもとを、つうが羽織を一枚残して旅立ってしまうことを通じて、人間価値の市場化を徹底的に拒否する視点を持っていたのだが、本作品にはそのような批判的視点は一切無い。

 個人的には、もし自分が女性だったら、たとえいくら真面目であっても、ヨンスのように自分の価値観を女性に押し付けるような男性はご勘弁願いたいな、と思ってしまうのだが... あるいは一歩間違えればストーカーになるキャラ、という感じで、本作のスタンスは個人的には支持しかねる。

 なお、イ・ヒョリが過去形で語られるのも、時代の波の流れの速さを痛感させられる。

 本作の韓国封切り日は、2013年10月17日。韓国での観客動員数は252,468人(KOBIS 2013.12中旬現在)。国内未公開。

 なお、監督・脚本のキム・ジェヨンはDaum映画データベースによると、安養芸術高校卒業後、2002年、ソウル芸大映画学科入学。過去に短編映画『青春』『同行』などを演出。他に『ワンダフルラジオ』の脚本、『ミニトマト』のプロデュース等を経験。

 原題『밤의 여왕』英題『Queen of The Night』監督:김제영
2013年 韓国映画 1:1.85 カラー 113分

1)次の書籍参照 鴨志田穰2010(2006)「酔いがさめたら家に帰ろう」講談社文庫

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