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zoom RSS 『カシコッ(いばら)』 - 強姦の痛みを異色の視点から描く韓国インディー映画

<<   作成日時 : 2013/12/21 00:31   >>

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画像 加害者の立場から強姦の罪意識を描いた、異色の韓国のインディー映画。ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品作。

 イ・ソンゴン(ナム・ヨヌ)は28歳(数え)の縫製工場で働く工場労働者。住居は考試院(コシウォン)、外国人労働者と共に最低賃金で働く、小心で内気な若者である。そんな彼は10年前、高校生の時嫌な記憶があった。
 当時、イム・セウン(カン・ギドン)、ノ・ヒョンウ(キム・ヒソン)、イ・ギュサン(フン・ジョンホ)悪童三人の「シタバリ(使い走り)」的存在であったソンゴンは、彼らがある集合住宅の一室に押し入り、そこに一人でいた女性を輪姦するのに無理矢理つきあわされる。
 10年経ち、セウンは自動車修理工場の経営者、ヒョンウはサラリーマンに、ギュサンは相変わらずナルラリ(遊び人)生活とばらばらになっているが、ソンゴンは相変わらずギュサンのシタバリ的存在。自分は薄給で喫茶店にも入ったことがないにもかかわらず、ギュサンに酒をおごらされても黙って金を差し出す便利な存在。
 そんな彼は町で宗教の勧誘をしていた女性に目を引かれる。彼女はひょっとしてあのとき強姦した娘では... だがギュサンに早く来いとせかされ、その場を立ち去る。だが、その後ギュサンのせいで、何の理由なく殴られ、落ち込んでいる彼は工場の同僚から教会へ誘われる。そこで、彼はあのとき宗教勧誘をしていた気になる女性、パク・チャンミ(ヤン・ジョア)に再び出会う。「次も必ず来てね」と分かれたチャンミの帰り道を密かにつけるソンゴン。果たして彼女の住まいはあのアパートだった。
 教会に通ううちにどんどん彼女と親しくなっていくソンゴン。だが一方でかつての罪意識もどんどん大きくなる。彼女に罪を告白して彼女の容赦を得ようと妄想はするが実行することは出来ない。はてはギュサンにも教会に出て、罪を償うよう説得までするが、ギュサンにはうざったがられるだけであった。
 そして、彼は縫製工場をやめ、彼女と同じ喫茶店でアルバイトまでするまでに。そんな中、チャンミを含む教会の仲間と泊まりがけで海岸沿いに遊びに行く。その夜、お互いに罪の懺悔をするなかで、チャンミが10年前の強姦で激しい衝撃を受けていたことを知り、そして犯人を未だに激しく憎んでいることを知ったソンゴンは衝撃を受ける。到底彼女から10年前の容赦など得られないと知ったソンゴンはある決意を固める...

 300万ウォンという超低予算に僅か4人の現場スタッフで撮られたというインディー映画。カメラもビデオカメラが借りられずに、デジタル一眼カメラを借りて(もっとも最近ビデオカメラよりデジタル一眼カメラがプロレベルでもむしろ良いと評価されているという話もあるが... )撮影され、コンテも綿密に計算して、ほぼその通り必要最低限の撮影しかしなかったという。撮影期間中は食事もコンビニのおにぎりで済ませて資金節約に励んだというこの超低予算映画は第17回釜山国際映画祭に出品され注目を集めたそうである。 最近の韓国では、チョ・ドゥスン事件1)、密陽強姦事件2)、羅州強姦事件3)などが、世間の耳目を集め、このような強姦事件に対する批判が強まっており、ホット・イシューとなっている。その中で、強姦の加害者が、被害者自身ならびに彼女の痛みを知り、罪意識を持つという異色の素材。加害者が軽い遊び感覚であっても、被害者にとってどれほどの恐怖であり、どれほど心の傷を与えるのかを感覚的に描けている点で高く評価できる。また、視聴者を引きつける緊張感の持続も特筆に値する。
 強姦するうちに相手もよがってくる、強姦から始まる恋愛もある、といったアダルトビデオに出てくるような設定など、対等な人間として考えるならばとてもあり得ないという点が説得的に描けている。
 最終的にソンゴンが選んだ選択には賛否両論あり得るだろうが、しかし被害者の痛みは、あそこまでの行動に匹敵すると示す必要がやはりあったのではないかと個人的には思わされる。
 なお、チャンミという名前は「薔薇」という意味があり、「カシコッ(いばら/とげのある花)」というタイトルとの引っかけになっている。

 本作品の韓国封切りは2013年8月20日。韓国での観客動員数は1,643人(KOBIS 2013年12月中旬データ)。国内未公開。

 監督・脚本のイ・ドングは1984年生まれ。東亜放送芸術大学放送演芸科卒業。2002年、ヒップホップを題材にしたダンス映画『ターン・イット・アップ』(カン・ヨンギュ監督)に主演し映画界に足を踏み入れる。東亜放送芸術大学で演技を学び卒業後『虎患ママ』『おじいさんの筆箱』等演劇俳優として活動。短編映画『犬の暮らし』『HELP』の演出を経て、2年間の準備を経て撮った本作で長編劇映画デビュー。

1) チョ・ドゥスン事件は2008年12月、犯人チョ・ドゥスンが8歳の幼女を強姦し、身体的・精神的に生涯治すことの出来ない傷を与えたおぞましい事件で、当時韓国社会に大きな論議を巻き起こした。この事件後、韓国政府は「児童性暴行再発防止対策」を発表し、これに従い2010年1月以降、警察が持っている性暴行犯罪者情報をインターネットサイトを通じて公開するようになった。 Wikipedia韓国版「チョ・ドゥスン事件」参照 http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%A1%B0%EB%91%90%EC%88%9C_%EC%82%AC%EA%B1%B4

2) 密陽強姦事件は2004年1月-11月に掛けて、密陽地域の3高校に在学中の生徒115名によって、蔚山、昌原等慶尚南道地域の40人以上の女子中学生が集団で強姦された事件。なお、本事件をモデルに2012年映画『ドント・クライ・ママ』が製作され公開された。Wikipedia韓国版「密陽地域高校生-女中生集団性暴行事件」参照 http://ko.wikipedia.org/wiki/%EB%B0%80%EC%96%91%EC%A7%80%EC%97%AD_%EA%B3%A0%EA%B5%90%EC%83%9D%EC%9D%98_%EC%97%AC%EC%A4%91%EC%83%9D_%EC%A7%91%EB%8B%A8_%EC%84%B1%ED%8F%AD%ED%96%89_%EC%82%AC%EA%B1%B4

3) 羅州強姦事件は、2012年8月、侵入した家で寝ていた7歳の小学生の少女を、布団ごと拉致し、強姦した後放置した事件。Wikipedia韓国版「2012年羅州初等学生性暴行事件」参照 http://ko.wikipedia.org/wiki/2012%EB%85%84_%EB%82%98%EC%A3%BC_%EC%B4%88%EB%93%B1%ED%95%99%EC%83%9D_%EC%84%B1%ED%8F%AD%ED%96%89_%EC%82%AC%EA%B1%B4

原題『가시꽃』英題『Fatal』監督:이돈구
2012年 韓国映画 カラー 1:1.85 103分

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http://yohnishi.at.webry.info/201401/article_3.html

2015.2 『血の贖罪』との邦題で国内盤DVD刊行


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『ソウォン(願い)』 - 子供が性暴行の被害にあった家族の姿を描く韓国映画
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