yohnishi's blog (韓国語 映画他)

アクセスカウンタ

zoom RSS 『ジスル - 続・終わりなき歳月』 - 済州島4.3事件を正面から扱った韓国映画

<<   作成日時 : 2013/11/15 22:08   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像 韓国映画の中で済州4.3事件を扱った映画はなかなかなかったが、本ブログでも紹介した、『花雨』『グランプリ』あたりでようやく済州4.3事件に言及できるようになっていた。しかし、本作は済州島4.3事件(厳密に言うと1948年からの済州焦土化作戦)を正面から扱った作品。その意味では韓国映画史上言及必至の映画であることは間違いない。監督は『おもり』のオ・ミョル。なお題名の『ジスル』は済州方言でじゃがいもの意味とのこと。
 なお題名に「続・終わりなき歳月」と副題がついているのは、2004年に作られ、初めて済州4.3事件を扱ったキム・ギョンニュル監督(2005年脳溢血のため死去)の『終わりなき歳月』の続編という意味合い。映画の冒頭にも故キム・ギョンリュル監督へ捧げる旨クレジットが出る。なお、以前『花雨』を初めて済州4.3事件を扱った映画と紹介したが訂正する。

 1948年11月、米軍および韓国新政府軍は、済州島海岸線5キロを越える中山間地域にある村を全て敵(共産主義者)の村と見なして戒厳令を布告し、この地域の村の住民を皆殺しにする済州焦土化作戦を開始する。
 この中山間地域にあるある村ではこの布告を見て慌てて村から離れて山の洞窟に逃げ込むことを決意する。だが、そもそもその布告に書かれたハングル(文字)が読めないも者もおり、日本の植民地時代にも、日本当局に色々言われたが結局たいしたことはなかったではないかと言う者、そして足が不自由だと避難を拒否する年寄りと様々。
 結局避難しないと固執する者を残して大きな洞窟に避難する村民。とはいえ彼らも数日経てばすぐに事態は収拾するだろうと考えていた。画像
 その一方、多くの者が避難した村に進駐してきた政府軍。だが政府軍のメンバーもその考え方は色々だった。ある北から逃れてきて政府軍に志願してきた者は、共産主義者に父母を殺され、共産主義者は皆殺しにすべきだと強い決意を持っている一方、そのような決意を持てない新兵たちは、このままいては罪のない者を殺すことになると迷う者もいた。そんな、「覚悟の持てない」兵たちは、共産主義者に強い憎しみを持つ上司たちから懲罰を科せられていた。
 一方、さほど長くかからないだろうと甘く見ていた洞窟に避難していた村民たちは、僅かに持ってきていた生のジャガイモをかじって飢えをしのぐ。だが、避難生活が長引くにつれ、飼っていた豚が心配だと村に戻ろうとする者、もっと山奥に行き、反乱軍と合流すれば何とかなるのではないかと主張する者、村に置いてきた年寄りが心配だと村に戻ろうとする者、密かに恋い焦がれていた女性が政府軍に捕まったのではないかと心配して村に戻る者など色々だった。
 だが、政府軍による、残ったり、村に戻った村人に対する仕打ちは過酷だった...
画像
 本作の方法論は、米軍による老斤里虐殺事件を描いた『小さな池』に似ており、島民たち、あるいは討伐政府軍の日常を、あたかも事態がリアルタイムに進行しているかのように感じられるような、ミニマルに描いていくという方法論に徹している。決して大上段に振りかぶったり、声高に主張を繰り広げるといった方法論を採っていない。とはいえ、『小さい池』は殆ど何の解説もなく、予備知識の一切ないものにはいささか当惑させるような側面があったが、本作では最初と最後に多少の解説文が付加され、事情を知らない者でもよりわかりやすくなっている。
 当初はいささか当惑しながら、半信半疑で洞窟に避難する村人たち。時には笑えるような場面もちりばめてある。見ている人びとにとっても、日常描写の延長のような場面が延々続き、一体これから何が起こるのか、いささか当惑させられるような側面も。だがやがて徐々に事態が緊迫し、村民たちに過酷な運命が襲いかかっていく... のどかな日常がいつの間にか一転して緊迫感あふれる情景へと転換していく描写が見事。

 モノクロームで派手な描写を押さえ、バストショット、もしくは焦点距離の長いレンズを多用した、その場に共にいるようなミクロな描写を強調した絵作り、最小限に抑えたBGM等、計算されたmise-en-sceneなども見所。もともと大学での専攻は韓国画(基本的には水墨画のようである)だったという監督の美意識が発揮されている。

 ちなみに監督インタビューなどを見ると、本映画の製作費として2億5000万ウォンほどかかったということである。多くの韓国の映画作品の中では決して多くない製作費であるが、監督としては破格の予算がかかった映画になったそうである。

 本作を見て頂ければ、なぜ大阪の生野や東京の三河島にあれほど済州出身の在日朝鮮人が多いのか、そしてヤン・ヨンヒの映画に描かれたように、彼らの中に熱心な総連活動家が多かったのかがリアルに理解できるであろう。

 本作の韓国での封切りは2013年3月1日(済州)、またソウルでの封切りは3月21日。韓国での観客動員数は、143,765人(KOBIS、10月初旬データ)。低予算の自主製作映画としては観客動員10万人越えでヒットと言える数字。本作は2012年の釜山国際映画祭に出品されネットパック賞受賞。また第29回サンダンス国際映画祭審査委員賞受賞。国内では本年11月始めに同志社大学(11/1)および北海道大学(11/4)で自主上映会が開かれた。画像

 なお本作は海外での反響の割には韓国内での反響が鈍い。釜山国際映画祭(2012)でネットパック賞、そしてやはり釜山映画評論家協会賞(2013)で大賞を受賞しているが、ソウルの映画祭からは一切受賞していない。済州4.3事件が未だ韓国社会で敏感な話題なのかも知れないが、それ以上に韓国映画業界のソウル中心地方無視という極端な傾向の結果のように思われる。オ・ミョル監督も地方で映画を作り続けることの辛さをインタビュー記事等で吐露している。

 監督のオ・ミョルは1971年済州生まれ。2003年撮影の短編『頭に花を』(釜山映画祭出品作)で映画界に名前を知られるようになる。2009年初長編のコメディ『おもり(뽕똘)』そして音楽映画『あれまぁあのアホ(어이그 저 궛것)』、さらに2011年に10代の未婚母を扱った『イオ島』(全州独立映画祭特別賞)を撮る。現在「Terror J」代表ならびに済州独立映画協会共同代表。

原題『지슬 - 끝나지 않은 세월2』英題『Jiseul』監督:오멸
2012年 韓国映画 モノクロ(オープニング・バックのみカラー) 1:1.85 108分

[韓国盤ビデオディスク情報]
タイトル:原題に同じ メディア:DVD 販売元:Art Service 希望価格: W25300
発売日: 2013.10.17 字幕:韓/英 音声: Dolby 5.1 画面: 16:9 Anamorphic 108分 リージョン:3


『花雨』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201102/article_3.html

『グランプリ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201105/article_14.html

『小さな池』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201104/article_6.html

本作品は『チスル』との邦題で2014.3.29より国内一般公開開始
国内公式サイト
http://www.u-picc.com/Jiseul/







テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『ジスル - 続・終わりなき歳月』 - 済州島4.3事件を正面から扱った韓国映画 yohnishi's blog (韓国語 映画他)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる