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zoom RSS 海外版DVDでしか見られない日本映画(5) - 安部公房が脚本『壁あつき部屋』

<<   作成日時 : 2013/09/18 06:45   >>

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画像 小林正樹監督の第三作目で、それまで松竹ホームドラマを撮っていた小林が初めて本来彼が主張したいテーマで撮った作品。そのテーマとはB, C級戦犯問題である。本作品は巣鴨拘置所に服役中のB, C級戦犯の手記集(「壁あつき部屋 -BC級戦犯手記-」理論社刊)を原作に、何と安部公房が脚本を執筆している1)。音楽は木下忠司。撮影は『二十四の瞳』の楠田浩之。製作は新鋭プロダクションの名で行われ、配給が松竹となっている。
 因みに本作が撮られたのは1953年。しかし、GHQの検閲に引っかかることを恐れた松竹上層部によって一部場面のカットを求められたが小林がそれを拒絶したため、1956年まで公開されなかった。

本作のあらすじはこちら(MovieWalker)
http://movie.walkerplus.com/mv23682/

 本作を見ると当時B,C級戦犯の問題が非常に微妙な政治的問題であったことが明らかで、日本の戦後史を学びたい人には必見の歴史的教材と言える。
 B,C級戦犯のおそらく多くの人々は、この映画の、助けてくれた地元民を殺した罪で入獄した山下(浜田寅彦扮)のエピソードに典型的に描かれているように、上司の命令で心ならずもやったことが戦争犯罪に問われたと受け止めていたであろうこと2)、そして往々にしてその上司は責任逃れをして、その罪をすべてなすりつけられてしまったと感じていたこと、そしてひどい場合は、伊藤雄之介演じる朝鮮人許のように、何もやっていなくても上司の罪をなすりつけられてしまったケースがあることが示唆される。

 このことが同じ戦犯釈放運動でも二種類の運動があり、対立があったことも描かれている。一方はA級戦犯釈放運動のように、「お国のためにやったこと」が戦争犯罪に問われること自体がおかしいという、日本の戦争を正当化する右翼側からの解放運動。もう一方は(この映画で描かれている限り)、B,C級戦犯側の、日本の戦争行為の不当性を認める一方、不当にもその責任・罪をすべて背負わされてしまったとして抗議する立場からの釈放運動である。この運動を典型的に担うのが、横田である。
 そして、A級戦犯側からは、皆被害者ではあるものの、自分たちは政治犯であり(つまり本来の犯罪者ではない)、BC級は刑事犯(本来の犯罪者)であるとの認識が臆面もなくひけらかされ、この両者に衝突があったことも描かれる。

 本作を見て改めて認識させられるのは、安倍首相に見られるような戦後の「再評価」の動きというのは、このB,C級戦犯、あるいは最前線で生死をさまよわされた人々の立場の忘却の上に立つものであるということである。いわばA級戦犯的認識のみで戦争や戦後の評価を覆い尽くそうということが試図されているという点が最大の問題であろう。

 本作品の問題提起は非常に重要で、むしろ今日こそ再度見直されるべきである。ただ小林の演出面ではやはりまだ未熟で、後のぐんぐん人を引き込んでいくようなメリハリにはまだ欠けているのが玉に瑕である。とはいえ本作が『軍旗はためく下に』同様、未だ国内盤DVDで見られないのは非常に残念という他はない。

 なお同じB,C級戦犯を扱った作品に『私は貝になりたい』(フランキー堺主演、TVドラマ版、オリジナル版)があるが、こちらの方はどちらかといえば被害者意識のみに焦点を当てたような面があった。当時の政治的位相におけるB,C級戦犯問題を考えるには本作こそ必見。


1) シナリオは新潮社発行『安部公房全集 4』(1997年刊)に収録されている。
2) 他に英語通訳だった横田(三島耕扮)は上司の命令で嫌々させられた捕虜虐待致死、獄中で自殺してしまった川西(信欣三)は無理矢理強要された肝試し(無抵抗の捕虜を銃剣で突き殺すこと)で戦犯に問われた。

原題『壁あつき部屋』英題『The Thick-Walled Room』監督:小林正樹
1953年 日本映画 1:1.33 110分

DVD(米国盤「Eclipse Series 38: Masaki Kobayashi Against the System」DVD Box)情報
発行・発売 Criterion 画面: NTSC/4:3(1:1.33)[本作] 音声: Dolby1 日本語
本編:110分(本作) リージョン1 字幕: 英(On/Off可) 片面二層(4枚組) 2013年 4月発行 
希望価格 $59.95
※再生にはリージョン1再生可能なDVDプレイヤー等が必要

『あなた買います』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201309/article_3.html

『黒い河』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201309/article_6.html

『軍旗はためく下に』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201108/article_7.html

2016.10.5 国内盤発売(松竹)









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