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zoom RSS 『公正社会』 - 児童性暴行に無関心な社会を告発する韓国映画

<<   作成日時 : 2013/08/10 08:03   >>

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画像 子供が性暴力にさらされた母親の復習劇の映画。性暴力に対する社会の無関心を告発する側面も持つが、そのいささか「本音」むき出しの解決方向には賛否両論がありそうだ。映画の進行には時間軸の交錯があるが、以下のあらすじでは基本的に時間軸通り紹介していく。なお、英題は『Azooma』とあるが、これは韓国語の「アジュンマ(おばさん)」の発音をそのままアルファベット表記したもののようだ。

 有能な歯科医であるアジュンマ(チャン・ヨンナム)。彼女は、高名な歯科医である夫(ペ・ソンウ)との間に娘(イ・ジェヒ)がいるが、夫とは離婚。しかも離婚した元夫は娘に関心を持とうとせず、仕事に子育てに奮闘する毎日。だが、ある日学校に娘を迎えに行く時間に彼女は打ち合わせのためすぐに駆けつけられなかった。娘は母親に電話を入れるが、母親は邪魔になってはと娘からの電話に出ず切ってしまう。
 打ち合わせが終わり、遅れて学校に娘を迎えに行くアジュンマ。だが、娘は、通りかかった車(ファン・テグァン)の男に家まで送ってあげると声を掛けられ、車に乗せられ連れ去られたのだ。いつまでも帰ってこない娘に心配になったアジュンマは警察に駆け込むが、通り一遍の受付をした後、たいてい子供は帰ってくるから大丈夫と、深刻に考えてくれない。
 結局娘は男により強姦され、生きたままボストンバックに入れられゴミ捨て場に放置された。娘は負傷しながらも生きて戻ったが、精神的ショックは大きい。すぐ、元夫の勤務する病院に入院させるが、夫は離婚して人目があるのになぜこの病院に入院させたとアジュンマを責め、容態が落ち着いたら他の病院に移せと、娘に対し非常に冷たい。

 事件は幼児強姦事件として捜査対象になるが、担当のマ刑事(マ・ドンソク)のやる気と思いやりのない捜査ぶりはアジュンマをいらつかせる。娘の精神的ショックに対し何一つ配慮なく、あからさまに何があったのかと無神経に聞くマ刑事。アジュンマの抗議で、尋問に女性警官が当たってくれることにはなったものの、それでも尋問のカメラの前で娘はおびえる。
 官僚的な警察の捜査ぶりに腹を立てるアジュンマだが、知人からは今時の警官は一人あたり4,50件も事件を抱えておりとうてい事件一件一件丁寧に捜査できる状況ではない、といさめられる。
 堪忍袋の緒が切れたアジュンマは娘からの聞き取りと娘が描いた絵などから、犯人のアパートの場所を突き止め、犯人の部屋に踏み込もうとするのだが...

 この映画は2006年3月、ソウル近郊で実際に起こった、小学校5年生の娘を強姦した犯人を自分で捜して警察に捕まえるように通報した母親のエピソードをモデルに作られている(元の記事は'딸 성폭행한 범인 직접 찾아낸 엄마의 40일 추적기-세상의 모든 엄마가 울었다')。警察の手抜き捜査に我慢できず、40日間掛けて自分自身で犯人の所在を突き止めたという。但し映画の後半部は全くのフィクション。また、実際の事件は、子供が自宅で留守番したところ、犯人が地図を書いて欲しいと外に連れ出して無理矢理車に乗せたという。またモデルになった家庭も母子家庭ではなく共働き家庭。映画は、実際には晴らせなかった母親の無念の思いを晴らす方向に創作されている。

 日本でもストーカー事件に対する警察の軽視ぶり、やる気のなさが問題になっているが、韓国では子供たちに対する性暴力に対する警察の軽視ぶりが問題になっているようだ。ただ、そのバックグラウンドとしては捜査員たちが、常時大量の捜査案件を抱えこみ過労、疲労困憊気味という構造的問題があると思われる。このような警察捜査員のオーバーワーク状況は過去の韓国映画でも繰り返し描かれてきている。それは、ポン・ジュノの『殺人の追憶』に描かれたように、警察における公安対策重視、刑事捜査軽視という歴史的、構造的問題があるのだろう(日本でも公安担当が警察の出世コースで刑事や交通はなかなか報われないのではないか)。
 その上に、家父長的価値観優位のためか、強姦などの性暴力事件が軽く扱われる傾向にあるのだろう(日本でもストーカー犯罪が軽く見られてきたのと同様か)。

 そのような、フェミニズム的立場から見ると苛つかせられるような社会状況を告発すると共に、機能不全に陥っているシステムの外部から、いささか短絡的であるが「本音」の解決策をずんずん探る主人公に、カタルシスを求めるという構成の作品。いわばこの主人公のアジュンマはフェミニズム版「橋下徹」的存在と言うべきか。

 なお、時間軸を交錯させる編集には、韓国のネット評では賛否両論。個人的には、あまりにもストレート過ぎる解決策を追求する主人公への違和感を減らす意味でもその効果を肯定的に見たいが、却って分かりにくくて、もどかしさを増すだけだとの声もある。

 本作品は、2013年4月18日韓国封切り。韓国観客動員数は14,459人(KOBIS 2013年7月初旬基準データ)。封切り2週間で劇場から消えてしまったが、ネットでは見過ごして残念、という声も聞かれる。国内未公開。なお、本作の製作予算は5000万ウォンと低予算で、小型デジカムで3-4日ほどで撮られたという。資金調達も困難を極め、スタッフ、キャストのギャラも「ランニング・ギャランティ」(要は前借りということ?)で撮られたという1)。

 監督のイ・ジスンは漢陽大学演劇映画学科を卒業後、ニューヨーク大学に留学し映画理論を専攻、帰国後泰興映画者に入社、『セブンティーン』、『春香伝』等の製作経験後、フリーランスとして『色即是空(セックス・イズ・ゼロ)』『青春漫画』『海雲台(TSUNAMI)』『疼痛(痛み)』等のプロデューサーとして活躍、4年前から韓国映画振興委員会付設韓国映画アカデミー長編映画統括責任教授としても在任し、本作が長編映画デビュー。彼は、イ・グォンテク監督作品などを製作した泰興映画社、イ・テウォン代表の三男2)。

1) 以下の記事参照。
「公正社会」で監督デビュー、イ・ジスン監督(スポーツ京郷 2012.6.20付記事)
http://sports.khan.co.kr/news/sk_index.html?art_id=201206202035493&sec_id=540401

2) 以上の情報も前掲記事参照。

原題『공정사회』 英題『Azooma』 監督: 이지승
2012年 韓国映画 カラー 1:1.85 74分




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