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zoom RSS 『26年』- 光州市民の恨みの深さを思い知らされる韓国映画

<<   作成日時 : 2013/07/01 08:55   >>

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画像 2012年に韓国で封切られた、「民主化運動三部作」の一作。本作品の原作は2006年4月から9月に掛けて連載されたカンフルの同名の漫画1)。光州事件から26年目ということでこの題名に。この映画化権を映画プロダクション、青於藍(チョンオラム)が購入し、監督にイ・ヘヨン(『横綱マドンナ』など)を指名して2009年公開を目指し、題名も「29年」に変更して製作に入ったが、映画投資環境の悪化で、台本の読み合わせに入ったところで中断。その後監督を美術監督としては10年以上のキャリアを誇るが、監督としてはデビューとなる、チョ・グンヒョンに変更、キャスティングも入れ替えて2012年に公開にこぎ着けた(以上Wikipedia韓国版の情報を参考に執筆)。
 内容は全斗煥前大統領暗殺計画という物議を醸しそうな内容。もっともブッシュ暗殺を扱った『Death of a President』(但しアメリカ映画ではなくイギリス映画。図らずも2006年9月トロント映画祭で初公開)という先例はある。とはいえこのことから容易に想像されるように韓国のネット評も高評価と低評価の両極端に分かれている。
 映画のクレジットラスト6分間は、映画製作資金の寄付者の名前が延々と続くのだが、光州事件後32年経ってこのような映画が多くの市民の寄付を元に作られるということ自体に、光州市民の恨みが我々の想像以上にもっと深く、彼らの受けた精神的な傷は決して癒えていないという厳然たる事実を改めて突きつけられる思いである。

 1980年5月、ある夫婦が生まれてきた女の子の名をミジンと決めた直後、軍の発砲した流れ弾に妻は倒れる。そして、全羅南道道庁前、抗議する市民の波の中にいた姉弟。だが軍の発砲に姉は倒れ、幼かった弟だけは命を助けられる。そして事件後死体の山から夫の亡骸をさがし泣き崩れる妻。その姿を見つめる息子。そして戒厳軍として道庁に入り、ナイフで抵抗する男を思わず射殺する新兵。彼は自分の犯した行為の恐ろしさにおののき震えるのであった。
 やがてミジンと名付けられた女の子、シム・ミジン(ハン・ヘジン)は、父(イ・サンフン)と共に上京し、やがてエアライフルの国家代表選手に。だがソウルで古書店を運営していた父は全斗煥が2003年特別赦免を受けたことに抗議し全斗煥邸近くで焼身自殺する。
 一方、父を失い母子家族となった少年クァク・ジンベ(ジン・グ)は兵役後、母(イ・ミド)が運営していた屋台を引き継ぐが、地元ヤクザ、アン・スホ(アン・ソックヮン)に見込まれ、彼の組で頭角を現していく。
 そして、姉を殺されて残された弟、クォン・ジョンヒョク(イム・スリョン)は警官になって市民を守るという姉との約束を果たすべく警官になってソウルに配属されるが、全斗煥の車を通過させるために、信号の制御を行う毎日に、自分は何のため警官になったのかと自問自答する。

 そんな三人に、キム・ガプセ(イ・ギョンヨン)とその秘書というキム・スアン(ペ・スビン)と名乗る二人の男が近づいてくる。彼らは、彼らの誰もが知っているある男を暗殺してほしいのだという。
 彼らの依頼を受けて、光州にいたクァク・ジンベは、「ソウルにたばこを買いに行きます」と告げて、親分であるスホに暇乞いをする。
 そしてソウルのある場所で彼らは一堂に会したのだった...

 まず、イデオロギー的なところを離れて考えても娯楽作として十分に楽しめる。彼らがどんな因縁を持って、この計画に集まっていくのか、そして非常に厳重な警戒をくぐって彼らがどうやって暗殺計画を実行しようとするのか、あたりが見所となる。ただ暗殺計画を実行しようとするキム・ガプセ、彼の心情はイ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディ』に出てきたキム・ヨンホともだぶる部分があるのだが、それでもなお敢えてそこまでしようとする動機の説得力が弱いと言えば弱い(もっとも必ずしも暗殺が目的ではなく、謝罪させるのが第一目的だったということはあるのだが)。
 韓国では、実際に朴正煕元大統領が暗殺されているので、こういうストーリーも100%空想だと切って捨てられないというリアリティがある。

 ただ、何と言っても圧倒されるのは光州の人たちの光州事件への恨みの深さ。もちろん、光州出身の大統領も輩出したし、2003年の全斗煥赦免も国民統合を狙ったのだろうが、それによりやはり傷ついた人々がいたということに圧倒される。何よりもクレジットの最後に延々と流される制作費寄付者の多さに感嘆。

 なお、「全斗煥」という名前は映画には一切出ておらず、クレジットは「あの人」になっている。そして配役は『トガニ』で双子の校長&事務長の一人二役を演じたチャン・グァン。ちなみに韓国ドラマ「第五共和国」では全斗煥役はイ・ドックァが演じていたが無理があった。『トガニ』のオーディオコメンタリーではチャン・グァンは『トガニ』出演前はかなり禿頭を気にしていたというが、おそらく今後韓国の映画、ドラマの全斗煥役は、彼の頭も幸いして、チャン・グァンで決まり、になりそうだ。

 本作品の韓国封切りは2012年11月29日。韓国観客動員数は、2,940,498人(KOBIS 2012年データ)。国内未公開。

 監督のチョ・グンヒョンは2000年代初めより美術監督として活躍。2002年の『バス停留場』が美術監督デビュー。2003年の『薔花、紅蓮(邦題: 箪笥)』で韓国映画大賞美術賞受賞。また『伝説の故郷』(2007)ではその伝統的空間の再現が注目される。ほかに『デュエリスト』カンプル原作の『バカ』『淫乱書生』『ラジオデイズ』『ゴーゴー70』『後宮』ほか多数の美術監督を務める。本作が脚色、監督デビュー作。

1) Wikipedia韓国版「カンプル(강풀)」の項参照。
2) Wikipedia日本語版「大統領暗殺」の項参照。

原題『26년』英題『26years』監督:조근현
2012年 韓国映画 カラー 135分(韓国) 画面比1:2.35


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