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zoom RSS 『後宮の秘密』 - コーリアン・エロス映画という解釈を越えた先に...

<<   作成日時 : 2013/05/30 20:12   >>

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画像 国内でも5月18日より劇場公開が始まった韓国映画『後宮: 帝王の妾(公開邦題:後宮の秘密)』。時代劇とエロチシズムということで、てっきり『房子伝』『淫乱書生』のキム・デウ監督作品と取り違えていたら、実は監督は『バンジージャンプをする』『秋へ(公開邦題: ノートに眠った願いごと)』『血の涙』のキム・デスン監督だった。

 朝鮮王朝を舞台にした結構露骨に艶めかしいシーンがあり、国内でも18歳未満観覧不可指定となっているので、当然エロチシズムをウリに宣伝されているが、キム・デウ監督同様、意外に社会批評精神精神旺盛な作品。
 政治と「性」治の交錯する朝鮮宮廷の政治権力闘争を描きながらも、その裏に現代韓国社会で問題になっている、密着しすぎた母子関係が風刺されていると見て間違いないだろう。なお、物語は特定の実在の王がモデルになっているのではなく、基本的にはフィクションのようだ。

 宮廷高官、シン参判(アン・ソッカン)の娘ファヨン(チョ・ヨジョン)は、王の異母弟であるソンウォン大君(王子、キム・ドンウク)に見初められ、恋人であったクォニュ(キム・ミンジュン)から無理矢理引き離され、不本意にも後宮へ入る。だが、大君の母である大妃(パク・ジヨン)はそれが気に入らず、彼女を王の側室として後宮に送り込むと共に、大君へは自分の気に入る正室をあてがうことを王(チョン・チャン)に承諾させる。
 5年後、男の子を産んだファヨンは王、大君を巡って大君の母である大妃とパワーバランスゲームを繰り広げるが、このあたりは現代韓国のある種嫁姑関係のカルカチュア。そしてシン参判によって、ファヨンと恋愛関係にあった罰として、一物を切り取られてしまったクォニュは、その復讐を心に秘めて、宦官(内侍)として宮殿に上がる。
 だが、先王は不審死を遂げ、その死により、ファヨンこそ追放されなかったものの、ファヨンの父シン参判は濡れ衣を着せられ処刑される。実はその裏に大妃の側についた内侍クォンユの暗躍があったが、ファヨンはそれを知らなかった。画像
 そして大君が王位に就くが、実権は大妃が握り、大君はその操り人形状態。そんななかでも最初に見初めたファヨンに対し執着する大君に対し、「本物の王になったらいらして下さい」と、ファヨンは関係を拒否。大君はすっかりいじけてしまい正室(中宮殿、パク・ミンジョン)との交接を拒否。ファヨンの代用品としてファヨンの小間使いだったクモク(チョ・ウンジ)にお手つきまでしてしまう。
 そんな中、大妃は、邪魔者であるファヨンを葬ろうと画策するのだが、大君、クムオク、クォニュらの思惑、そして自分の息子を命を賭して守ろうとするファヨンの思惑の交錯から、事態は思わぬ方向へ進んでしまう...

 ここで描かれるのは、母親の息子への徹底的な執着心。その執着心は、夫や恋人をないがしろにするにまで至るのだが、このあたりは、まぎれもなくキロギアッパ1)を多数産みだし、さらには家族崩壊まで続出している、狂気にも近い韓国現代社会状況の風刺であるだろう(ちなみに先王を大君の異母兄ではなく、父親にするとより意図がストレートに伝わったと思う。西欧のエディプス・コンプレックスのストーリーにも乗るし、海外にもわかりやすくなると思うのだが。ただ、父親の妾を息子が受け入れるという設定にすると、韓国の社会的タブーコードに引っかかるのか?)。だが、その息子への執着も、結局、本当に子どもの身になって考えている訳ではなく、ある種母親自身の権力欲であることが示唆される。

 また、物語の中で濡れ衣を着せられ、姑的存在である大妃からいじめられるファヨン。最後の1/3からは、ファヨンの濡れ衣を晴らす闘いになるのだが、多分、悪=大妃、正義=ファヨンという図式で解釈されてしまうと、ちょっとつまらないな、まずいんじゃないかな、と思っていたら、最後の最後で思いっきりバックギア。
 この急展開は、おそらく何でここで唐突にこんな場面を入れるのだ、と思う人も多いと思うが、これはキム・デスン監督の、何が何でも正邪の図式で解釈させたくないという意志の反映だろう。そうしないと風刺が伝わらないと考えたに違いない。いささか強引過ぎるのは確かであるが、キム・デスン監督の意図は良くわかる。

 ああ、あんなに男に純情だったファヨンが、結局自分の子ども(に仮託した自分の欲望)のためには、男を徹底的に利用し尽くすのも厭わないなんて...

 韓国雌カマキリに徹底的に食われる雄カマキリこそ哀れ... でも、それはどこか人間の根源的欲望であり、(好ましくはないんだけれど)善悪論で切れないんだよなぁ、というあたりが本作のメッセージか。

 チョ・ヨジョンは確かに美人だが、どこかで見かけたような雰囲気と思ったら『房子伝』に出ていた。彼女の容姿、雰囲気はソン・イェジンと堀北真希を足して2で割った感じ(堀北真希って朝鮮=弥生系の顔だった、ということか)。こういうのを見ると、韓国の芸能人って(特に女優は)、常に代替可能な存在だなぁ、と思わされる。また、薬房内侍役のパク・チョルミンの演技がかなり良い。パク・チョルミンは、以前は韓国の「竹中直人」で何を演じてもパク・チョルミンにしか見えなかったが、今作ではかなり渋い押さえた演技をしており、演技力が上がっている。大君役のキム・ドンウクは経験不足か。

原題『후궁: 제왕의 첩』英題『Queen』監督: 김대승
2012年 韓国映画 カラー 122分

1)キロギ・アッパについては、例えば以下のサイト参照
イ・スンヒ「韓国人の過度な教育熱が生んだ家族崩壊現象、キロギアッパ(雁父さん;一人暮らしの父親) 」
(インコリア・マガジン 2011.5.13) http://www.inkorea.co.jp/detail.php?number=856&thread=23r04


国内公式サイトはこちら
http://www.koukyu-movie.com/

国内盤DVD 2013.12.13発売 邦題『後宮の秘密』



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