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zoom RSS 『二度の結婚式と一度の葬式』 - 同性愛者の偽装結婚を扱ったクィア・コメディ

<<   作成日時 : 2013/02/13 00:06   >>

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画像 2012年韓国のクィア(性的マイノリティを扱った)・コメディ映画。

 医師のミンス(キム・ドンユン)は病院の同僚医師のヒョジン(リュ・ヒョンギョン)との結婚を決める。実はミンスもヒョジンも同性愛者。しかし韓国は同性愛者同士の結婚はもちろん、同性愛者であることが明るみになると厳しい社会的差別を受ける、同性愛者にとって暗黒の国。
 そんな中、ミンスは、結婚しろ結婚しろとしつこい両親からの攻撃の撃退と、結婚すれば6億ウォンのマンションを買ってくれるという約束を頂くため、そしてヒョジンは、実は孤児院に引き取りたい赤ちゃんを見つけたのだが、正式に結婚しないと養子にするのは難しいと聞いて、二人は偽装結婚の契約を取り交わしたのだ。そしてミンスのマンションの部屋の前には、ヒョジンのパートナーであるソヨン(チョン・エヨン)の部屋を準備、普段はヒョジンとソヨンは同居しながら、両親が来たときだけ、ヒョジンがミンスの部屋に来て何とか誤魔化そうという作戦。そして一年程度経ったら離婚しようという腹だった。新婚旅行も実は行っていないのだが、二人でタイに行ったことにしようと、口裏を合わせておく。
 だがミンスのお母さんからの攻撃はなかなか執拗で、ヒョジンに対して息子の好物も知らないのか、新居披露(チプトリ)はいつやるのかとうるさく、さらに新郎に家にも時々訪問せざるを得ず、ヒョジンもその撃退に四苦八苦。
 やがて、ゲイの友人はいたものの、恋人のいなかったミンスにも恋人、ソク(ソン・ヨンジン)が出来る。自分には恋人がいるのにミンスに恋人がいなかったのを気にかけていたヒョジンも一安心。だが、朝、ミンスとソクがベッドにいるところに、お母さんがお父さんを連れていきなり押しかけ一騒動。画像
 さらに、結婚式を挙げたことで安心したミンスはなかなか役所に婚姻申告を提出せず、ヒョジンが引き取ろうと思った赤ちゃんの引き渡しが拒まれることも。
 二人は実際の夫婦さながらの夫婦げんかを展開することに。とはいえ二人の結婚生活の真相は何とか周囲にばれずに順調に進んでいるように見えた。

 しかし、ある日ミンスが勤務中に匿名のメールが届く。そのメールには、あなたの奥さんであるヒョジンはマンションの前の住人ソヨンと同性愛関係にあり、あなたを裏切っていると書かれていた。
 そのメールを見て、自分たちが偽装結婚をしている同性愛者であると周囲にばれるのではないかと、ミンスはパニックに陥る...

 日本でも同性愛に対しては偏見があるが、韓国の同性愛への偏見はかなり凄まじく、親や周囲にカミングアウト出来ないまま、家族とのしがらみで意に染まない結婚を強いられるケースもある。その延長上にあるのかどうか、韓国社会はホモソーシャル、またはミソジニー(女性嫌悪)を通した男同士の連帯傾向も強く 1)、ヒットした『バンジージャンプをする』『王の男』もかなりぎりぎりまでクィア映画の世界に迫っていたとはいえ、ホモソーシャルなのかホモセクシャルなのか、そのあたりがあいまいにされていた。ユン・ジョンビン監督の『許されざる者』もその境界領域にある作品だろう。
 そんな中、韓国における同性愛差別を真っ正面に取り上げた作品として印象に残るのは、2002年ファン・ジョンミンが出演した『ロード・ムービー』(監督:キム・インシク)であろう。また本作品の監督であるキムチョ・グァンスが製作した『後悔しない』(イソン・ヒイル監督)も明確にクィア映画と位置づけられるだろう。ただここ最近、シリアスに同性愛を描くだけではなく、コメディタッチで同性愛を扱った映画が出てきている。
 その一つは以前紹介したキム・アロン監督の『ハロー・マイラブ』(国内未公開)であるが、おそらく、キム・アロン監督は同性愛者ではないように思う。そして今回、『後悔しない』を製作し、さらに明るく同性愛を扱った短編『少年、少年に会う』を監督したキムチョ・グァンス監督による本作がでてきた。同性愛当事者である監督による、おそらく韓国初のクィア・コメディ長編劇映画ではないかと思う。

 やはり、当事者ならではの、周囲にばれてしまったらどうなるかという悩みを非常にリアルに描きつつも、同性愛者同士の偽装結婚というプロットを通して、上手くコメディに昇華させている。そして中間、韓国社会の冷酷な現実を反映した悲劇が起こるものの、最後は前向きな方向にまとめていく脚本構成力はなかなか(脚本はパク・ヘヨンとキム・ユンシン)。
画像 そして娯楽性と社会性を上手く両立させて、韓国における同性愛者差別問題に対する訴求力を獲得することに成功した作品と評価できるだろう。

 また、日本でも公開すれば、従来の韓流層とは異なる層(例えば「腐女子」層)に十分訴求力がありそうな作品だ。主人公を演じたキム・ドンユン(NHK放映の韓国ドラマ「トンイ」でもシム・ユンテク役で出演)も結構甘いマスクであるし。
 そしてベテランが所々カメオ出演しているのも楽しい。例えば神父役のイ・ムンシク、タクシー運転手役のチョン・インギ、同僚医師役のクォン・ヘヒョ、お父さん役のチェ・イルファなど。
 そして、ヒョジン役のリュ・ヒョンギョンが、かなり存在感ある。どうも彼女はどこかで見た... と思ったら『ママ』『グッバイ・ボーイ』『シラノ恋愛操作団』『房子伝』などで見かけていた。意外にベテラン。それにミンスの友人で、ミンスに一方的に片思いするティナ役のパク・ジョンピョ(この記事の2番目の映像キャプチャ右側)がはまっている。

 本作品は、2012年6月21日韓国封切り。韓国での観客動員数は51,049人(KOBISデータ2012年)。2012年第21回釜日映画祭新人監督賞候補、第32回ハワイ国際映画祭招待、第17回釜山国際映画祭 韓国映画の今日-パノラマ部門招待。国内未公開。

 監督のキムチョ・グァンスは1965年生まれ。漢陽大演劇映画科卒。在学中全国大学生代表者協議会(全大協)および韓国大学総学生会連合(韓総連)の文化局で活動。この頃のことを後に韓国日報のインタビューで 2)、世界の革命史を見ると同性愛者を同志と見ることはなく粛清対象だったことを知って、学生運動に身を投じながら非常に苦しかった、と告白している。
 卒業後大学の後輩たちと映画製作会社「青年フィルム」を設立し、現在代表を務める。設立後『ハッピーエンド』『ワニとチュナ』『嫉妬はわが力』『後悔しない』『オールドミス・ダイアリー』『俺たちに明日はない』『朝鮮名探偵: トリカブトの秘密』『依頼人』等を製作。『後悔しない』以降、本名のキム・グァンスの代わりに母方の姓をつなげたキムチョ・グァンスの名で活動。
 2005年以降はプロデューサーよりは監督業に取り組み、主として同性愛関連映画を撮影。
 2008年に、ビョン・ヨンジュ監督、オ・ギミン・アイフィルム代表、チョ・ヨンガク・ソウル独立映画祭執行委員長、キム・ギョンヒョン監督らと共に進歩新党支持を表明。以後、進歩新党で活動している。
 本作が初長編作。(以上 Wikipedia韓国語版の記述を参考に執筆)

 なお、韓国盤DVDの画質は最近のArt Serviceの画質に準じ、かなり盛大にローパスフィルターがかかって解像度が落ちている。特に遠景は全体にソフトフォーカスがかかっているようで、大画面で投影すると非常に気になる。またパッケージにはリージョン3とあるが実際はALL。また、監督らのオーディオコメンタリーに、インタビュー、予告編等の付加映像が本編ディスクに収録。
 また付録としてシナリオ、並びにコンテブック(PDFファイル)収録のデータCDが付く。これはなかなか良いアイディア。画像

1)この点について明確に批判した映画が、『私の友達、その妻』である。拙ブログ記事参照。http://yohnishi.at.webry.info/201001/article_7.html

2)韓国日報 2011.10.12「同性愛者が本質的に悩むことは、大きな長所...」(韓国語)
http://news.hankooki.com/lpage/culture/201110/h2011101220594486330.htm

原題『두 번의 결혼식과 한 번의 장례식』英題『Two Weddings And a Funeral』
監督:김조광수 2012年 韓国映画 カラー 106分(Daum映画データ)

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: Art Service 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:106分 リージョンALL(表示は3)
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層2枚組(本編DVD+データCD) 2012年 12月発行 希望価格W25300

韓国のクィア映画

『R.E.C.(アール・イー・シー)』- 韓国ゲイ恋愛事情を描く映画
http://yohnishi.at.webry.info/201207/article_2.html

異色の三角関係を扱ったラブコメ韓国映画 『ハロー、マイラブ』
http://yohnishi.at.webry.info/201002/article_9.html

2013.6追記
本作品は、第4回アジアクィア映画祭にて国内上映された。上映日2013.5.26, 31。
第4回アジアクィア映画祭サイト
http://aqff.jp/2013/index.php



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