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zoom RSS 『TATSUMI』 - 辰巳ヨシヒロを通して見る、日本戦後精神史

<<   作成日時 : 2013/02/05 00:26   >>

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画像 シンガポールのエリック・クー監督によって作られた、全編日本語のシンガポール・アニメ映画。辰巳ヨシヒロの自伝的漫画「劇画漂流」をベースに彼の短編劇画5編を組み合わせてアニメ化。メインのナレーション自体は辰巳ヨシヒロ本人、その他の声優は別所哲也が一人六役を務めている。

 平成7年、手塚治虫の7回忌に出席した辰巳は、手塚と同時代を生きた幸せを語る。そこから辰巳ヨシヒロの回想が始まる。

「地獄」挿入

 1948年、13歳の辰巳、2歳上の肋膜炎を病んでいた兄(後の漫画家、桜井昌一、「ゲゲゲの女房」の戌井のモデル)の影響で漫画を書き始める。やがてS24以降創刊されはじめた漫画雑誌に投稿するように。やがて毎日新聞に取材されたことがきっかけで手塚治虫に激励される。やがて手塚は東京の仕事が多忙になり東京に。

「いとしのモンキー」挿入

 一方辰巳は漫画を書き賞金稼ぎ。だがある日病院から帰ってきた兄に原稿を破られる。辰巳は生活の苦しさを忘れるためにも漫画執筆に専念。

 そして日の丸文庫のため大阪のアパートで合宿生活。生まれて初めて自由を満喫する。

「男一発」挿入

「黒い吹雪」の執筆。これで創作の醍醐味を知る。一方マンガに対して子どもに悪影響を与えるという非難。それに対して大人向きのマンガとして「劇画」というコンセプトを考える。子ども漫画にはない深みと高度な心理描写を盛り込む「劇画」。
 このコンセプトを持って東京へ上京。石川フミヤス、さいとうたかをらと「劇画工房」を立ち上げる。このような動きに、心の師匠と仰いでいた手塚治虫は嫉妬を感じていたと後に聞く。
 高度成長にわく世間。それを象徴するように、1964年には海外旅行も自由化された。

「はいってます」挿入

 高度経済成長の爛熟記を迎えた1970年代の日本。世間が浮かれる一方、辰巳には依頼される仕事が極端に減り、一人世間から取り残されていると感じ、耐えられなくなっていた。世間の好景気も自分には届かない... そんなどす黒い恨みを作品としてはき出して、「ガロ」などに投稿していた。
 そんな中漫画のアイディアを練るためいつも通っていたコーヒー店で後に奥さんとなる女性に出会う。

「グッドバイ」挿入

 いま、75歳を迎えた辰巳。しかし、彼には、まだまだ書きたい世界がある...

 辰巳ヨシヒロのマンガはどこかで読んでいたと思うが(おそらく原作付きで作画のみ担当してた漫画だと思う)、率直に言って印象に残った作品はなかった。それにこの映画で描かれた、主に「ガロ」などに発表されたという5編の短編マンガはいずれも読んでいない。ただ改めて本作で見て、辰巳ヨシヒロは、こんなに作家性の高い作品を発表していたのかと驚かされた。人脈的には、ゴルゴ13シリーズを描いているさいとう・たかをや石川フミヤスと近いのだろうが、同じ「劇画」といっても作品性は全く対照的。少なくともここで紹介される内容を見る限り、アイディアも秀逸な、いずれも傑作である。
 「劇画漂流」こそ手塚治虫文化賞を受賞しているが、国内よりも海外で高く評価されている作家であることは間違いない。

 ともあれ、本作品では1940年代から高度成長期に掛けての、日本人のいささか屈折した戦後精神史がものの見事に表現されている。例えばアメリカに対する、そして、戦争を遂行してきて日本を負けに追い込んだ世代に対する屈折した思い... そして行動経済成長のなか、取り残された人々の思い... 吉田喜重の『秋津温泉』あたりとややかぶってくる。
 アメリカはニッポンの「トモダチ」だから、日本がアメリカと戦争していたなんてあり得ないな、などと言えてしまう世代、そして、何の屈託もなく「ニッポンを取り戻せ」などと叫んでしまう世代にこそ是非見て頂きたい作品だ。

 しかし、エリック・クーの、辰巳ヨシヒロの世界、そして戦後日本人の心情をものの見事に読み取り再現する理解力は凄い。はっきり言って、彼は今の多くの日本人よりもはるかに「戦後日本」を深く理解していると思わざるを得ない。
 そして辰巳の「東京漂流」の世界をアニメにしえなかった日本、それどころか、東京国際映画祭で上映したきり、未だ一般劇場公開さえ至っていない、辰巳の作品世界を評価できない今の日本の情けなさを思わざるを得ない。

 本作品はカンヌ国際映画祭、ある視点部門で2011年5月17日初上映。シンガポールでは同年9月11日封切り。第84回アカデミー賞外国語映画賞、シンガポール代表候補作。脚本・監督はエリック・クー、そして声の出演は辰巳ヨシヒロ本人と別所哲也。また一部シンガポール在住の日本人がエキストラ声優として出演。テーマ音楽の作曲は、エリック・クーの13歳の息子クリストファー・クー。以上、Wikipedia英語版の情報を元に執筆。

 なお、DVDはUK盤のほか、2012.10に出た香港盤(Edko Film)がある。US盤もKimStimより刊行予定がある(2013年5月)。また青林工藝社からおそらく本作の国内公開を見越して2012年に、本作に含まれる短編5作+αを含んだ、辰巳ヨシヒロ短編集「TATSUMI」が出版されているが、肝心の映画の方はいまだ配給が付いていないようだ。

原題『TATSUMI』監督: Eric Khoo
2011年7月 シンガポール映画 カラー 98分


DVD(UK盤)
発行・発売:Soda Pictures 画面: Pal/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 日本語 本編: 96分
リージョン2 字幕: 英(On/Off可) 片面二層 発行年2012年5月 Amazon.uk価格 £18.00

CANNES Q&A: 'Tatsumi' Director Eric Khoo (The Hollywod Reporter 2011.5.15)
http://www.hollywoodreporter.com/news/cannes-qa-tatsumi-director-eric-188489

KimStim ("TATSUMI" アメリカ配給元) Webページ
http://www.kimstim.com/

付記
ようやく遅ればせながら国内公開が決まったようだ。2014.11.15より劇場公開
公式サイト
http://tatsumi-movie.jp/




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『TATSUMI』 - 漫画家辰巳ヨシヒロ氏死去
 3/10付け朝日新聞によると、漫画家辰巳ヨシヒロ氏が 3/7に悪性リンパ腫で亡くなったという。 ...続きを見る
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