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zoom RSS 『金の味』 - 運動圏出身イム・サンスらしい彼の最新映画

<<   作成日時 : 2013/02/17 08:55   >>

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画像 イム・サンス監督による『下女(邦題: ハウスメイド)』に引き続く最新作。テーマ的には『下女』とかぶってくるが、陰々滅々たる前作よりも、まだ救いのあるラストの分だけベター。

 韓国のある財閥一家。この一家は老会長(クォン・ビョンギル)の下、その実の娘であるペク・クモク(ユン・ヨジョン)が実権を握り、そして彼女の夫であり、日本でいう婿養子的な立場にあるユン会長(ペク・ユンシク)、息子で理事のユンチョル(オン・ジュワン)、娘で、離婚歴と子どもがあるユナ(キム・ヒョジン)がいる。そしてユン会長の下、実務・下働きを受け持つ有能な秘書室長チュ・ヨンジャク(キム・ガンウ)、そして祖国に二人の子どもを置いて働く、一家のフィリピン人メード、エヴァ(Maui Taylor)、老会長の個人秘書が彼らのために働いている。

 だが、ユンチョルが一族の相続問題で不始末をしでかす。彼らの重要な投資パートナーであるロバート(Darcy Paquet)は、ユンチョルが逮捕されるようなことになればもはや取引関係は終わりだとクモクに文句を。
 その後始末のためユン会長はヨンジャクを連れ、検察庁長官に巨額の賄賂を送ることに。そのお陰で、雲隠れしていたユンチョルは、とりあえず記者会見を済ませ、晴れて公式の場に出られることになる。クモクは私たちの金の力でコントロールできないことはないと豪語。
 一方、一度政略結婚して離婚し、今の虚飾にまみれた生活に対して、心のどこかに密かな疑問が芽生え始めていたユナは、一族のために私心なく働くヨンジャクに密かに心を寄せていたが、肝心のヨンジャクは、エヴァに心惹かれていた。ユナがヨンジャクがに惹かれているのに気づいていたクモクは、わざわざユンジャクが、ユン会長とエヴァの情事を目撃するように仕向ける。その結果衝撃を受けたヨンジャクはエヴァに、このままユン会長と上手く行けると思っているのかと問いただすが、エヴァは自信たっぷりに、私はあなたよりユン会長をよく知っていると、彼を軽くいなす。
 確かに、ユン会長は過去「婿養子」的な立場1)にストレスを感じて、色々な女に手を出してきた。だが、今、ユン会長は虚飾の世界よりも、エヴァに対する単なる情事にとどまらない誠実な本当の愛情の世界を求めていた。そしてそんなユン会長の姿を知って、金の力ですべてをコントロールするつもりになっており、ユン会長の単なる火遊びに関しては片眼をつぶってきたクモクは、彼の心まで思い通りコントロールできないことに気づき、ひそかに切歯扼腕する。

 そんな中、ユン会長はいよいよある決意を固める。一方クモクは、一家の忠実な秘書室長であるヨンジャクを呼び出すのだった...

 いかにもイム・サンスらしい作品。そして金持ちたちの虚飾に満ちた生活や思考様式を徹底的に告発するという意図は、前作の『下女』をそのまま引き続いている。いわば『下女』の続編的作品であろう。それは映画の中で引用される自身の『下女』もしくはキム・ギヨンの『下女』で明らかである。イム・サンス作品の常連的存在であるユン・ヨジョンやペク・ユンシク、クォン・ヨンギルからもその印象は強い。そして2MBなどに代表されるイム・サンス監督の特権層に対する嫌悪感も明確。
 ただ、『下女』は。既に触れたように結局救いがなく陰々滅々と終わるのに対し、自分の母親や弟に対する疑問を深めていくユナと、結局、自分の現状を疑い、彼らから離れることを選択するヨンジャクの存在に救いがある。そういった意味では前作より希望があると言えよう。
 そしてそんなキム・ヒョジン演じるユナの、当初は俗物に思えた彼女の愛らしい姿こそがこの作品の一つのチャームポイントになっている。

 一方若干疑問点も残る。フィリピン人エヴァのキャラクター設定は、私の見立てではいささか韓国人的過ぎるような気がする。また、未だ男権至上主義(韓国語だと、男性為主[남성위주])的な韓国社会において、なぜ女性であるクモクを権力者として設定したのか?おそらく、クモクの存在をパク・クネに例え、クォン・ビョンギル演じる老会長に、パク・クネのシンボリック・バックグラウンドであるパク・チョンヒをシンボライズしているのでは、と思われるが、もしそのような意図で作られているとすれば、個人的にはちょっと疑問。因みに前作の『下女』では、女たちが権力争いをしているように見えて、結局男権至上主義的構図を支えることにつながってしまうという、張芸謀の『大紅燈籠高高掛(邦題: 紅夢 )』の現代韓国富豪版的作品だった(但し、空恐ろしさは張芸謀に及ばない)。
 確かに、パク・クネは開発独裁のパク・チョンヒの娘であり、それにノスタルジーを感じる勢力に支持されているかも知れない。そういう意味でイム・サンスの気持ちは十分分かるのだが、それでも、フォーマルな局面における男権至上主義の強い韓国において、やはり女性が大統領になったということのシンボリックな意味合いは、決して小さくないと思うのだ。そして、パク・クネさえも2MBの新自由主義的政策への批判を余儀なくされているという側面も決して過小評価できない。
 そういう意味で、財閥などの「持てる」勢力とひっくるめて、パク・クネを批判するつもりだとするならば、その点に関しては私は必ずしも共感できない。

 かつての運動圏世代の問題意識、政治意識を明確に出すイム・サンス作品はいずれも好悪がはっきり分かれる作品であろうし、若干マンネリズムに陥っている気味もある。しかし、個人的には前作である『下女』よりは本作をより評価したい。そして、彼の今作における、ゴミのような世間ではあるが、それでも金の力で左右できないものはやはりある、というメッセージに関しては私は買いたい。

 本作は2012年5月17日韓国封切り。韓国での観客動員数は1,166,018人(KOBIS 2012年データ)。カンヌ国際映画祭出品作。なお本作は『蜜の味 テイスト オブ マネー』との邦題で国内劇場公開開始。

 なお、本作の香港盤Blu-rayであるが、ジャケットには96K Upsamplingとある。確かに精細感はあるが、ややシャープネスフィルターがかかっているようで、ナチュラルというよりは多少人工的。ややハードでヒステリックな画像イメージと言ったらいいか。

 オリジナルソースは、クレジットがすべて英語であるところから、カンヌ出品あるいは香港等で配給した国際版であると思われる。但し、上映時間は変わらないので、クレジット部分のみ韓国国内公開版と異なるのではないかと推定される。
 香港盤刊行の後、韓国盤Blu-rayが刊行される予定だが(2013.3 Candle Media 予価W29700)、おそらくソースは異なるであろう。但し価格は圧倒的に香港盤が安い。また、韓国盤DVD(希望価格W23100)はほぼ香港盤Blu-rayと同時刊行となっている。香港盤DVD, VCDもあり。

1)厳密に言えば韓国には日本のような「婿養子」は存在しない。男系の血統を非常に重んじるからである。


原題『돈의 맛』英題『Taste of Money』監督:임상수
2012年 韓国映画 カラー 115分

Blu-ray(香港盤)情報
発行:驕陽電影・販売: 華娯有限公司 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:115分
リージョンA 字幕: 中/英(On/Off可) 片面一層 2012年 11月発行 希望価格HK$190.00(DVDはHK$170.00)
香港題『錢慾劫』



国内公式サイト(クロックワークス)
http://www.klockworx.com/movies/movie_447.html


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