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zoom RSS 『建築学概論』 - 70年世代のノスタルジーを直撃 初恋を痛みと追憶を描いた2012年韓国大ヒット作

<<   作成日時 : 2012/12/25 19:01   >>

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画像 2012年韓国最大級のヒット作。監督は『不信地獄』のイ・ヨンジュ。

 スンミン(オム・テウン)の勤める建築事務所に、ある日大学の同期であり、金持ちの医者と結婚した「音大(ウンデ)」ことソヨン(ハン・ガイン)が10数年ぶりに訪ねてくる。彼女の訪問に訝しがるスンミンにソヨンは済州島にある自分の実家の改築を依頼したいという。実はスンミンは学生時代、ソヨンとの気まずい記憶があった。困惑するスンミンにソヨンはいささか強引に彼に設計を依頼する。 当初は、元の家を壊し全く新しい家を建てる提案をしていたスンミン。だが彼の改築案はソヨンの気に入らない。だが、全く改築するのではなく元の家をある程度残して大幅リフォームしては、との同僚のウンジェ(コ・ジュニ)の助言で、計画は前に進んでいく。当初はぎこちなかったソヨンとスンミンだが、二人は打ち合わせが進むにつれどんどん打ち解けてくる。

 学生時代のスンミン(イ・ジェフン)は延世大学で建築学を専攻していた。彼は教養の建築学概論の授業の宿題で自分の住んでいる城北区チョンヌンの町内を調べることになるが、ちょうど同じ授業を取り、同じ町内に住んでいる音楽学部(音大)のソヨン(スジ)に出会う。彼女の実家は済州島で、彼女はその町内をよく知らないため、同じ授業をとっていたスンミンに自分の宿題を手伝ってくれるよう声をかける。
 スンミンとソヨンはともに宿題のための取材を行う過程でどんどん親しくなっていく。実は彼女は建築学科のスンミンの先輩であるジェウク(ユ・ヨンソク)が属する放送部の後輩で、その縁で建築学概論の授業を取るようになったのだ。彼女は授業出席者の中でもかわいいと評判だった。それまで女の子とつきあったことはなく、さらに父は亡く、経済的苦労の中でスンデクク食堂をやっている母(キム・ドンジュ)の女手一つで育てられたスンミンは、家柄の良さそうなソヨンに気後れも感じていた。そんなうぶで、家庭的にも引け目を感じていたスンミンはソヨンが彼に示す親しさに確信を持つことができず、女性経験豊富を自称する友人のナットゥク(チョ・ジョンソク)に彼女に対する思いをいちいち相談していた。

 ソヨンはスンミンの締めているネクタイが冴えないのに気づいて、ワインバーでの打ち合わせの際に彼にプレゼントしようと、ネクタイを買っておく。だがその日、なぜかウンジェがついてくる。実はウンジェは、会社の同僚たちに隠したままスンミンとつきあっており、結婚を約束している仲。裕福な家柄のウンジェはスンミンと結婚後は自分の留学のためアメリカに渡り、スンミンを一緒に連れて行こうと考えていた。
 そして、スンミンが席を外している間に、女の第六感が働いたウンジェはソヨンに、スンミンとの関係を伝える。そしてウンジェはソヨンに、スンミンが学生時代の初恋の話をしようとしないことなどを話した。
 ソヨンは戻ってきたスンミンに、とぼけてあなたの初恋相手って誰、と尋ねる。だが彼は君の知らない人だとごまかす。その横からウンジェは彼の初恋の女性は「アバズレ」だったそうよ、と口を挟む。そしてソヨンはプレゼントのネクタイをスンミンに渡しそびれることになる...

 仕事が進むにつれ、ソヨンに夫の陰が見あたらないのが気になっていたスンミン。済州で彼女と顔を合わせた際、一人暮らしなのだろうと思い切って聞くと、実は夫とはうまくいっておらずずっと別居状態で、ごく最近夫と正式に別れたのだと言う。そして父親(イ・スンホ)が病気のためソウルの病院に入院しておりもう余命がさほど長くないこと、そして父を連れて済州に帰りたいので、そのために彼に済州の実家の改築を依頼していることなどを話す。彼女の境遇に心を動かされるスンミン。
 そして、ソヨンはスンミンに設計変更を依頼する。済州に帰って生活をやり直すためにピアノをおくスペースが必要なのだと。

 だが、当初はこの仕事に乗り気でなかったスンミンが、どんどんこの仕事にのめり込んでいくのを見て、不安を感じたウンジェは、設計変更により、自分たちの結婚・留学計画に支障が出ることを理由に、これ以上スンミンが関わることに反対する。一方スンミンは、老いた母を一人韓国に残していくことが気がかりだった。そしてソヨンのことも...

 ソヨンと親しさが増していくことに有頂天になっていたうぶな建築学科生のスンミン。だが、建築学科中、女の子たちからの一番人気で、スマートで家柄も良いジェウク(ユ・ヨンソク)がソヨンに関心を示しており、またソヨンもジェウクに憧れているようなのが気がかりだった。
 そんな中、ソヨンはスンミンの住んでいる町内から、江南方面のおしゃれなワンルーム・マンション(韓国式で言うと「オピステル」)に引っ越そうかと考えているとスンミンに言う。江南はジェウクが住んでいるところでもあった。
 それでも、ナットゥクのアドバイスに従って、初雪が降る日、二人で近所にある空き家になっている韓国式伝統住宅で会おうと、スンミンはソヨンに提案する。ナットゥクによればその提案に女性がうなずけば、その女性は彼の愛を受け入れたことになるのだという。すると、意外にもソヨンは何も躊躇することなく、絶対約束ね、と答えた。
 しかしいざソヨンが江南に移ると、彼女の帰りを、近くに住むジェウクが車で送っていくこともあった。そんな中、ひどく悩んだスンミンは「建築学概論」講義最終日、ある決意をする...

 『不信地獄』とは、題材が一転したイ・ヨンジュ監督であるが、実は本作の構想は古く、2003年に既に本作品の初稿を書き上げていたという。だが果たして映画化可能なのか、ずいぶん悩んで、ずっと暖めたままだったところ、本作の製作社であるシム・ジェミョンプロデューサーにいい作品だから、当たるかどうかはともかく、是非映画化してはと提案を受け、映画の製作に踏み切ったということである。

 現在30代半ば、あるいは後半に足を踏み入れるとおぼしき主人公たちの回想シーンはおそらく90年代半ばもしくは末に設定されていると思われる。『サニー』など、過去を追憶とともに回想していく作品は、今まで軍事政権末期、あるいは民主化運動の時代が大部分であったように思われるが、本作品はその中ではもっとも最近を扱っている。もっとも初稿が2003年だったということは、その時点での回想の対象が90年代末というのは考えにくいので、おそらく、2012年に製作されるに当たって、回想の対象も変えられたのであろう。例えば、彼女からCDを借りたのはいいが、家にはアナログレコード用のターンテーブルしかなくて聞けなかった、というエピソードなどは80年代末なら大いにあり得ても、90年代末ではいくら韓国とはいえ、絶無ではないにしろちょっと不自然なエピソードである(ちなみにCDの発売開始は1980年)。

 あとから回想してみれば、誰でもが世間知らずで愚かだったと思わざるを得ない、初恋の胸の震えと痛みをノスタルジーとして扱った作品。恋人同士のすれ違い、思惑の掛け違いも、メロドラマの王道をいく作り。同じ初恋の追憶を扱った(しかも時代的には同一)台湾映画『あの頃、君を追いかけた』と比較すると、よりこちらの方がロマンチシズム指向。また家族や家柄といった要素もさりげなく描きこまれているのも韓国らしさか。
 ともあれ、初恋のほろ苦い思い出を描いて秀逸。とはいえ、初恋ものの期待を良くも悪くも裏切らないとも言える。韓国で大ヒットした理由は、過去の追憶が気になり始めた70年代生世代の大学生時代(=経済的に成熟した時代)のノスタルジーを駆り立てる初の映画だったということが大きいのではないだろうか。『サニー』が大ヒットしたのも、386〜486メイン世代の感覚とは異なるノスタルジー感覚を反映した初の映画だったということが理由であろうが、こちらは中学〜高校時代で、恋愛ロマンスを想起させるものではなかった。そして、それ以前のノスタルジーものは386-486世代向けだったのだ。
 韓国盤Blu-rayの付加映像では、関係者のインタビューの中で本作のシナリオを読んだとき、非常に映画化が困難なのではないかと思ったという証言がたびたび飛び出していたが、逆に韓国の映画人たちはこの作品のどこを映画化困難だと思ったのかが不思議。付加映像を見る限り、業界ではなかなか映画化されないシナリオとして有名だったらしいが... 但しミョン・フィルムのプロデューサーは映画化困難なシナリオとの噂は、シナリオを初めて読んだとき知らなかったそうだ。ひょっとすると初稿から大分手が入っているのかもしれないが...

 日本人として本作品を見ると、90年代半ばから末において、豊かになってきた韓国の消費生活を象徴する(そして映画の中でも鍵となるアイテムとして扱われる)製品の多くが日本製であったこと(たとえばSonyのディスクマンだったり、富士フイルムだったり)に感慨を覚えるとともに、それがもはや彼らにとって追憶のアイテムになってしまっていることに一抹の寂しさを感じる。

 本作の韓国封切りは2012.3.22。韓国での観客動員数は約410万5000(KOBISデータ。2012.6月末)。国内では2012年韓国映画ショーケースで上映。

 なお、映画に出てきたCDは「展覧会(Exibision)」の『記憶の習作』(1994年5月発売)。
http://www.yes24.com/24/goods/162237

 監督のイ・ヨンジュ監督は、1970年生まれ。90年延世大学建築学科に入学。卒業後建築事務所に勤務。ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(2003)で助監督。終了後デビュー作用として本作シナリオ初稿を執筆。長年シナリオ準備を行いながら2006年『不信地獄』で監督デビュー。

 韓国盤Blu-rayはCandle Mediaが刊行・発売。Candle Media製のBlu-rayは今回初めて見るが、CJのBlu-rayが隅々までシャープな印象であるのに対し、全般的にソフトな絵作り。

原題『건축학개론』英題『Architecture 101』監督: 이용주
2012年 韓国映画 カラー 118分

Blu-ray(韓国盤)情報
発行・販売: Candle Media 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声:Dolby5.1 韓国語 本編:118 分 リージョンA
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2012年 10月発行 希望価格 W31900

本作品は2013.5.18国内公開決定
公式サイト
http://www.kenchikumovie.com/

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