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zoom RSS 『ある娼館の記憶』 - 滅び行く19世紀文化としての娼館を描く

<<   作成日時 : 2012/11/10 10:24   >>

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画像 2011年の東京国際映画祭で上映されたフランス映画。19世紀の終わりを、ある娼館の終焉と共に描く。

 19世紀のパリでは多くの売春は"Maison Close(娼館)"で行われていた。それは一種の社交の場であり、時に貴族や芸術家たちがそこに出入りしては、家に帰って創作活動に励む、そんな場であった。
 そんなある高級娼館で、二人の子どもを育てているマダムであるマリー=フランス(Noémie Lvovsky)の経営の下、マデレーヌ(Alice Barnole)、レア(Adèle Haenel)、ジュリー(Jasmine Trinca)、クロティルド(Céline Sallette)、サミラ(Hafsia Herzi)らがそれぞれ毎日商売に励んでいた。
 多くの者は借金を抱え、あるものは自分の借金を払ってくれて身請けしてくれる男の登場を望み、ある者は、娼婦と結婚したがる男なんていない、と強がって一人生きていく決意を固めていた。
 そんな1899年5月のある日、マデリーヌは、彼女にぞっこんである客のジャック(Xavier Beauvois)に、あなたからエメラルドの大きな宝石を貰い、求婚の印かと思う夢を見たと告げる。そして、その夢の中で、情交をすると精液が体の中に入ってきてそれが目から白い涙として、赤い口をぬらした... と語る。その時の邂逅でジャックはマデリーヌに縛っても良いかと聞き、彼女がそれを受け入れると、彼女の手足を縛り、彼女の体にナイフを当てる。そして、ナイフで彼女を何度かなで回した後、突然彼女の口を左右に大きく切り裂き、彼女は血まみれになって悲鳴を上げる。
 翌年、19世紀の最後の年である2000年。マデリーヌは大きく口が裂け「笑う女」の異名を取る。彼女はほとんど客を取らず、他の女たちのバックアップに仕事をしているが、時の怖いもの見たさ、興味本位に指名する客もいた。だが、彼女と情交しようとする客はいなかった。
 そして、女たちは定期的に医者の診察を受けなければならなかったが、時にそこで梅毒と診断され、客が取れなくなり、そのまま死の床につく女の子も出た... そんな中、建物の賃貸料も値上げを要求され、マダムもこの娼館の行く末を考えなければならなくなってきた...

 娼館を一種の舞台とすれば、その表舞台と裏舞台を描いた作品。華やかに見える社交の場の栄華の頂点にいるように見える娼婦たちも一皮むけば、借金に縛られ、身体の自由はなく、客の玩具としてもてあそばれ、病気になってしまえばうち捨てられる、人権を認められないあわれな存在。
 だが、しかし、所詮セックスの道具でしかない彼女たちも、セックスの道具としてさえも顧みられなくなれば、そのことが彼女たちの女としての尊厳を損なってしまう、そんな矛盾した存在である。そういった両義的存在としての彼女たちの存在を群像劇として描く。
 エロティシズムを扱ってはいるものの、イギリスでは18歳未満観覧禁止指定ながらも、意外にエロティックではない。むしろ、ある意味で滅び行く19世紀的貴族文化の名残の美しさをはかなむような視点ともの悲しさが募るような作品。

 とはいえ、欧米ではどうかしらないが、既に日本映画ではこのような主題で遊郭や売春婦を描いた映画作品、そして名作も溝口健二、川島雄三、神代辰巳をはじめ数多くあり、必ずしも目新しい視点の作品ではない。ただ描かれたのがパリの娼館というところ、またカメラワークやmise-en-sceneの美学にポイントがある作品であろう。

 ただ、個人的には女たちが所詮もてあそばれる存在としてしか描かれない本作は(ただし最後にちょっとした展開がある)、見ていて胸が痛む。やっぱり女性の口を裂くような行為を「もののあはれ」の中に入れてほしくない。
 あと実際にパリの娼館でこういうことがあったかどうかは分からないが、娼婦がエセ着物を着て、ハナモゲラ日本語を話すシーンがあった。当時のフランスのジャポニズム趣味を考えるとそういうこともあり得たのか?

 2011年カンヌ映画祭出品作品。

 監督のベルトラン・ボネロは1968年ニース生まれ。元々はクラシック音楽教育を受ける。2001年『ポルノグラフィー』でカンヌ映画祭、FIPRESCI賞、そして2003年『ティレシア』でカンヌ映画祭、パルム・ドール候補。

原題『L'Apollonide: Souvenirs de la maison close』英題『House of Tolerance』
監督:Bertrand Bonello
2010年 フランス映画 カラー 125分

DVD(UK盤) 
発行・発売:Universal Pictures UK 画面: PAL/16:9(LB1:2.35) 音声: Dolby5.1 仏語 本編:125分 
リージョン2 字幕: 英(On/Off可) 片面二層 発行年2012年5月 Amazon.Uk価格 £5.99

▼この作品、国内盤DVDが出ていた 2012.9発売済

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