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zoom RSS 字幕なしのビデオは語学の勉強になるか?

<<   作成日時 : 2012/10/14 07:55   >>

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画像 昨年、韓国からSBSドラマ『根深い木』を録画したものを送ってもらったのだが、字幕がない上、時代劇のため、聞き取りだけでは何がなんだか分からない状態。それで、今度は韓国から原作小説を通信販売で買い込んで、春先に3ヶ月かかって何とか読破(読破した矢先、実は日本語訳が出ていたこと知る。原題と邦題がかなり違うので気がつかなかった)。
 で、ようやく最近、再び字幕なしのビデオを見ている。

 最初に見たときは、チッピョンジョンだのキョンサボク、ナインといった宮廷用語が全く分からないので、ストーリーが追えない状態だったが、一通り小説を読み、用語が分かると何とかストーリーが追える程度まで聞き取れる。
 字幕なしでビデオを見ると勉強になる、という話があるが、この話、半分は合ってるが半分は間違っていると思う。字幕なしでビデオを見ても、所詮知らない単語は聞き取れない。大半は知っている単語だがごくたまに知らない単語が混ざる、程度であれば、ある程度推測も可能だろうが、知らない単語や表現が5〜10%を超えてしまえば、到底無理。従って字幕なしのビデオは復習&語学力維持の助けにはなっても、語学力を伸ばすことはない。一方、そういった意味では、当該外国語字幕があるビデオは、語学学習に非常に有効だ。分からなければその場でそのスペルを辞書で調べて語彙を増やすことが可能だ。
 今回は外国語字幕の代わりに事前に原作本を読んで頻出単語を予習したという訳だ。

 おそらく、これが母語であれば、知らない単語が頻出しても、ある程度推測して分かる、あるいは分かった気になれるのだろうが、そうでないところが非母語なのだろう。例えば、日本でDQNぶりを売り物にしているタレントと、日本語検定一級を取った外国人留学生とではどちらが日本語の読み書き能力が高いかというと、外国人留学生の方が高いであろう。それでも外国人留学生の方がDQNタレントより、日本語ができないという思いにさいなまれる。それが非母語ということだ。
 
 それと、ながら視聴が出来ない。何か別のことをしながら見ているとすぐストーリーが追えなくなってしまう。相当集中しないと聞き逃してしまう。それでもこれが家庭ドラマだったらある程度ながら視聴が可能かもしれないが、やはり耳慣れない単語、表現が頻出すると到底無理。だから1話見ると相当疲れてしまう。連続して2話を見るのには集中力が続かず、連続して見ると2話目はちゃんとストーリー把握が出来ていない。画像

 ただ、ドラマだと画面に漢字が出てくるのは良い。原作だと「チッピョンジョン」という言葉はハングルでしか出てこないので、それが本来どういう意味なのかはいちいちネットで調べなおさないといけない(辞書には見あたらない場合が多いので)。だがドラマだとすぐ「集賢殿」という看板が出てくるので、意味は自明である。それに韓国人にも難しい言葉は漢字つきの注釈が出てくれる。

 というわけでドラマの視聴も遅々としてなかなか進まない。

 ところで、ドラマのほうは原作とはかなり異なる。原作はカン・チェユンが主人公であったが、ドラマでは、もちろんチェユンは主人公の一人ではあるものの、必ずしも第一人者ではない。むしろイ・ド(世宗)が重要だったりする。群像劇の性格が強い。
 またチェユンの位置づけも全く異なる。原作は、チェユンは北辺の農家の出身であり、父が農業書を大切に思っていたことから、文字や知に対する憧れがある存在として描かれていた。ちょうどウンベルト・エーコの『薔薇の名前』がそうであったように、事大主義、保守主義に対する反発と、自由な「知」や「情報」に対する憧れ、そうして、殺人事件の捜査を通じて徐々に新しい「知」に接近していく喜びなどが描かれていたように思う。そして原作では「コグントンソ(孤君痛書?)」という本が殺人のきっかけになるのだが、これも『薔薇の名前』でアリストテレスの幻の書「詩編第2部」(この書は当然ながらエーコによるフィクション)が「殺人」のきっかけになった点と似ていた。
 しかしドラマではチェユンは父を殺された恨みを抱いた人物(奴卑出身)として描かれ、その恨みを晴らすことが彼の動機のメインである。そして、その恨みの重さをおどけた態度に隠している。それと幼なじみへの思い。それにドラマでは今のところ「コグントンソ」のコの字も出てこない。人物の位置づけも印象も原作とは大幅に異なる。現在1/3程度見たところだが「謎解き」や「知への接近、あこがれ」はかなり後退した印象。
 それと、小説ではあくまでチェユンの視点から徐々になぞが解かれていくと同時に視界が開けていく構成となっていたが、ドラマでは最初から鳥瞰的で、イ・ドと保守派との確執などの構図がはっきり呈示されている。唯一のなぞは「密本」の存在になっている。しかも「密本」などという結社は原作には存在しない。何となく悪の結社「密本」は「日本」を連想させるような名前だ。もっともイ・ドは独自の文字を考案しようとして、朝鮮の、日本やモンゴル、満州族のような「オランケ(夷狄)」化の道を邁進する一方、「密本」の方は中国中心の事大的秩序を大切にする、という意味では逆さまである。
画像 ドラマで、ユン・ジェムン演じるカリオンの正体が実は... という話が出てきて、えっ、そうきたか、と思ってしまった。

 まあ、既にベストセラーになってしまっている本なので、原作どおりだとネタバレするから何とか違えようとドラマ製作者も必死だったのだろう。だが、これがいいのやら悪いのやら...

 因みにドラマ出演者の中でソイ役のシン・セギョンがなかなか可愛い。この人は映画『五感図』『アコースティック』『青い塩』などに出ていたらしいが未見。いずれも韓国では興行的に失敗した映画だ。もっとも、Wikipedia韓国版に出ている写真を見ると今ひとつピンと来ない。この人は髪の毛が短い方が(あるいはひっつめ髪が)似合うように思う。時代劇向けの女優だろう。それとムヒュル役のチョ・ジンウンがなかなか男前。やはりWiki韓国版を見ると、『犯罪との戦争』に出ていたとあって、はたと思い当たったが、率直に言って現代劇ではぱっとしない印象。この人も現代劇より時代劇が似合う人のように思う。

おまけ
 このドラマがリアルタイムに放映されたときは、ちょうど昨年のソウル市長選(&韓国の統一地方選挙)があった頃であり、その開票経過&結果が、ドラマに写り込んでいる、その市長選の得票結果が面白い。明らかに新興の金持ちが多い区でハンナラ党(現セヌリ党)ナ・ギョンウォン候補の得票が多いという露骨な比例ぶり。ハンナラ党の得票が上回っているのが江南、松坡、永登浦区の三区。そして労働者、あるいは貧困層の多い区ほど明らかにパク・ウォンスン候補の得票が多い。九老、衿川といった工場労働者地帯はもちろんのこと、タルトンネの多い(多かった[過去形]?今は貧困層といえばコシウォン[考試院]族なのかも。もちろんコシウォンも多い)冠岳区などもパク・ウォンスン候補の得票が多い。
 韓国の政局はまさに階級対立の先鋭化で動いていると言える。

 イ・ミョンバクの「反日」竹島発言で、国内でも嫌韓感情が高ぶらせて声高に発言している連中が増えているが、韓国における対日感情に関しては、韓国内のこのような階級対立の先鋭化、そして、大統領の「反日」発言にもかかわらず、韓国内では、日本大使館前に慰安婦の銅像を建てたとしても、中国のように大使館や日本関連企業に対して焼き討ち等の暴力行為が行われたり、日本人個人が暴力的な被害を受けたりすることがない、という状況から総合的かつ冷静に判断することが求められている。

カリオン役ユン・ジェムン主演映画『隣の男』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201010/article_14.html








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内 容 ニックネーム/日時
たしか昨年の末にこの翻訳本の書評が「毎日新聞」に載っていました。図書館で借りて読もうと思いましたが、ずっと予約者数が何十人という状態が続いていて、やっと9月に借りて読むことができました。原書やドラマと比べるとずっとラクですね、やっぱり。
私の感想等は、2回に分けてブログに載せておきました。ご覧いただければ幸いです。
→(1)
http://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/25dbbd839d4a616a4a71768840b37fc9
→(2)
http://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/3503c1af403d7d311ee29e4033a2afb4
私も、ドラマが原作とずいぶん違うのに驚きました。(面倒そうなので結局見ないままです。)
ヌルボ
2012/10/27 01:14
 コメントいただきありがとうございます。ブログの内容は拝見させていただきました。いつもヌルボさんの慧眼には感心させられます。
 ドラマでは親族の敵討ちになっていて、原作では親族関係的な要素はほとんどないので、やっぱり韓国ドラマのキーワードは「親族」でなければいけないのかと改めて思わされます。
yohnishi
2012/10/27 08:03

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