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zoom RSS 「アメリカ、尖閣見捨てない」は本当か?

<<   作成日時 : 2012/09/29 01:16   >>

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 9/17のNHKニュースで報道された、アメリカのパネッタ国防長官の「日中両国の領土紛争に関しては、当事者間での平和的な解決を望むという発言」、これは「尖閣には日米安全保障条約を適用する」とも発言したことで、日本ではアメリカは尖閣を見捨てるつもりはないと解釈されているようだ1)。

 だが本当だろうか。私は、アメリカが日本を支持するつもりがあるならば、当然「尖閣諸島は日本領であるという立場を全面的に支持する」と言うべき局面だったと思う。そもそも沖縄軍政下で、歴史的背景を知った上で尖閣諸島を沖縄の範囲として管理下に置いていた立場として当然だろう。
 それが「当事者間で解決を」とは、状況を良くわかっているはずのアメリカが、中国の尖閣諸島要求にも一定の根拠があると認め、一方的に日本に立場を支持する訳ではない、と宣言したに等しい。これは非常に重大かつ深刻な発言だ。中国の強硬な姿勢がエスカレートしてきているのも、アメリカが全面的に日本を支持している訳ではないと感じたからではないか2)。

 「尖閣には日米安全保障条約を適用する」とアメリカが発言したから、と安心する向きもあるかも知れないが、よく考えてほしい。もしアメリカが「尖閣は日米安全保障条約適用範囲外だ」と発言したらどうなるか。当然、尖閣を守る気もないアメリカ海兵隊の沖縄オスプレイ配備をなぜ認めるのか、なぜアメリカ海兵隊の再編に日本が思いやり予算をつけなければならないのか、という疑問が沸騰して、日本から何の金も引き出せず、譲歩も取り付けられない、という話になりかねない。そもそもアメリカは世界的な軍再編計画でドイツにも「思いやり予算」を要求したが、ドイツはほとんど応じていない。韓国だって負担額を大幅に値切っている。言うがままに金を出しているのは日本だけだ。
 だから内心「尖閣なんてどうでも良い」と思っていても、巨額な損失を覚悟しない限りそんなことを言い放つなんてあり得ない。アメリカは損をしてまで「尖閣知らないよ」とは言わないというだけだ。その中での「当事者間で解決を」は、アメリカ側の中国側への最大限の譲歩以外あり得ないだろう。

 アメリカは尖閣を見捨てないから安心だ、などと思っているのは平和ぼけならぬアメリカぼけの末期症状だろう。これは、ポツダム宣言の際、「黙殺」と言っておけば「拒否」とは取られないだろうという、日本の自己満足的な一方的ご都合主義解釈と同じである。
 はっきり言ってアメリカは「日本さん、好きなだけ中国と揉めてね。その間中国市場はうちでごっそりいただくから」と言っているのだ。ただし軍事衝突だけは起こらないよう手は貸す、というだけの話だ。

 では、アメリカが倫理的に非難されるべきなのかというと、そうではない。外交において、限られた制限の中で自国の利益を最大化するのは当然のことである。そういった意味では、米中韓ともその当然のロジックで動いているだけである。ひとり日本だけが「思いやり」などという訳の分からない概念を持ち出して、自らの利益を捨てているに過ぎない。

 注1)で引いた冷泉氏は、アメリカは決して二枚舌ではない、と述べているが、現にパネッタ発言は日本と中国で異なって解釈されているのをどうご説明なさるおつもりか。アメリカは二枚舌ではないが、勝手に自分に都合良く解釈してぬか喜びしている日本人がバカであるとでも説明するつもりなのか?

 かつて産経ニュース/新聞2010.5.28付け記事“「こんな総理、かなわんわ…」 鳩山発言に石原都知事激怒 全国知事会議”で、当時の鳩山首相が全国知事会議でアメリカは日米安保の立場で行動したとしても「(尖閣諸島の)帰属問題は日中当事者同士で議論して結論を出す、と私は理解をしている」と発言したとして、石原慎太郎東京都知事が「日中間で尖閣諸島の帰属を協議しようって、こんなバカをいう総理大臣いるのか? 正式に(米国から)返還されたんだ。ばかな会合だよ。ナンセンス!」と報道陣にぶちまけたと報道されている。しかし、図らずも当時の鳩山首相の対米認識が正しかったことが立証された。バカな奴だったのは鳩山の方ではなかったのだ。

 日本のアメリカへの「思いやり」政策の果てがこれである。

 とりあえず、仮に尖閣があくまで日本固有の領土だとの立場に立つならば、日本政府が直ちにやるべきことは、アメリカのこの認識に抗議を申し入れると共に、米軍思いやり予算の凍結&削減をちらつかせることだろう。これができなければ、日本政府は、「日本固有の領土だとの立場」を事実上放棄したと国際的に認識されても仕方なく、中国政府になめられ続けても文句は言えない。
 もちろん、アメリカに文句を言わぬまま、中国との間に国境紛争があると認めた上で、中国と真摯に交渉していくという方向性もある。
 最悪なのは、アメリカにも抗議できないくせに、中国に対して強硬姿勢を貫こうという現状の姿勢の継続であり、これでは子犬が虎の威を借りてキャンキャンと吠えているだけだと、国際的に見透かされてしまうだろう。つまりアメリカが尖閣を日本に返還したのは必ずしも正しくないと認めた(し、それに日本は抗議できない)のに、日本は正当性なくアメリカに与えられたという事実に居座っている、と見られてしまう図式だ。
 そして日本企業の中国市場での損失も止まらない。ま、日本企業は中国市場から全面撤退しても構わないというなら、それも結構だが。

 ともあれ、もし日本が、尖閣は日本固有の領土であるという立場を貫く気があるのなら、今は相当に「ヤバい」局面であり、正念場であるということを理解しなければならない。しかし日本のネットもメディアも、一方は馬鹿馬鹿しい方向に興奮し、もう一方は「冷静な態度」を気取っているという違いがあるとは言え、結局アメリカぼけであふれかえっているのは同じだ。政界はそれに輪をかけてひどい。

 因みに鳩山元首相の政治家としての資質を問う声があるが、私は個人的には彼の政治的認識力は高く評価している。ただ政策を実現する上での方法論が欠落していたのだ。ただ、それはそれまで民主党が政権を担当したことがなかったためでやむを得ない側面もあった。そういう意味では、アジテーターではあっても、政治的認識に疑問がある上に、方法論の欠如を問われて、それは自分が考えることではなく官僚が考えることだ、とうそぶく橋下徹より遙かにましだと思うのだが。

 また、国民も政治的不満をぶちまけてどんどん首相のクビをすげ替えるのはよいが、クビをすげ替えるたびに、より資質の低い者が首相になっているように感じるのは私だけか? ショッピング感覚で政治家のクビをすげ替えてはいけないのではないだろうか。

1)例えば冷泉彰彦「習近平=パネッタ会談の意味と尖閣問題」2012.9.21,ニューズウィーク日本版Webサイト http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2012/09/post-480.php

2)例えば中国国際放送局(CRI) 日本語版Webで、中国がパネッタ発言をどう受け止めたかが分かる。
http://japanese.cri.cn/881/2012/09/19/145s198572.htm

付記
 この記事公開後、9.30朝日新聞の書評欄で、佐々木俊尚氏による「戦後史の正体 1945-2012」(孫崎享著)に対する書評が掲載された。果たして、本書が、書評通り陰謀史観なのかどうかは未読なので分からないが、少なくとも下記の一点は全面的に同意できる。

「そもそもどの国であれ、自国の国益を第一として動くのが当たり前だ。だから本書のまえがきにもあるように「米国は日本を大切にしてくれている」「いや、日本を使い捨てにしようとしている」という議論自体が意味がない。米は日本にとって守護者でもなく、国益のために日本を利用しようとする「他者」にすぎない。そういうリアリズムが戦後の日本人には欠けていた。」

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 孫崎享,2012,『不愉快な現実 -中国の大国化、米国の戦略転換』講談社現代新書。率直に言って、彼の主張は非常に慧眼であると思うし、私は本書での孫崎氏の主張の大半に同意する。  本書もまた、先日紹介した浅羽祐樹氏の『したたかな韓国』と同様、不都合な事実に向き合おうとしない日本を憂慮し、「悪魔の代弁人」(という言葉は孫崎氏は使っていないが)をつとめて(つまり考え得る最悪のシナリオを提示して)、日本の外交政策に警鐘を鳴らすという形を取っている。 ...続きを見る
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2013/06/19 00:11

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