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zoom RSS 映画におけるキュビズムまたはエッシャーの騙し絵 -『ロマンス・ジョー』

<<   作成日時 : 2012/08/04 07:56   >>

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画像 イム・スルレ監督がプロデューサーを勤めた、シネ21新人監督発掘プロジェクトで製作された韓国映画。監督は長年ホン・サンスの助監督を努めたイ・グァンググ。キュビズムもしくはエッシャーの騙し絵のような映画のナレーティヴが、視聴者を幻惑する。

 田舎からソウルにいる映画監督志望の息子(キム・ヨンピル)を訪ねてきた両親(キム・スウン&パク・ヘジン)。だがソウルにいるはずの息子は失踪し、やむを得ず旅館に宿泊し、息子の後輩(キム・ドンヒョン)を呼び出す。後輩もあちこち連絡してくれたが全く連絡がつかないという。後輩は、そういえば数日前、映画製作の現場を何度かともにした女優Bが、本人を貶めるうわさが流れて自殺した日、彼に呼び出されて酒をともにしたが態度がおかしかったという。失踪申告をしようかといわれ、両親は「まさかそこまでは...」

 一方、300万人動員実績のあるイ監督(チョ・ハンチョル)の次回作シナリオ作業が遅れている。プロデューサー(先の映画監督志望の息子とおなじキム・ヨンピル扮)は、田舎のモーテルに部屋を取り、監督から携帯電話を取り上げ、無理やり置いてきてカンヅメにする。
 しかたなく部屋に入った監督は、暇つぶしにコーヒーの出前を頼むと、コーヒーを持ってきた女の子(シン・ドンミ)が、実は監督の作った映画(そして自殺した女優Bが出演していた映画)のファンだと分かる。女優に役をやる代わりに寝たでしょう、と追求する女の子に、監督はあくまでも、彼女はそんな人ではないと否定する。ネタに詰まっている監督に、女の子は30万ウォンで「ロングステイ」に切り替えるなら、と彼女が見聞きしたという「ロマンス・ジョー」の話を始める。

 彼女がコーヒーの出前の注文を受けて、モテルのある部屋に来ると、彼女が言うところの「ロマンス・ジョー」こと男(これも先の映画監督志望の息子と同一のキム・ヨンピル扮)が一人沈んだ様子で酒を飲んでいる。部屋に入ると、どうも配達先を間違えたらしい。あわてて出るものの、男の様子が気になって再び部屋に戻る彼女。話を聞くと男は映画監督で、自殺した女優Bと2度ほどともに仕事をしたという。馬鹿なことを考えないように、と説得する彼女に男は話を語り始める。

 高校教師の娘チュヒ(イ・チェウン)。彼女は男と寝たという噂が立ち自殺を試みる。そこへ一方的に彼女に恋焦がれていた少年時代の「ロマンス・ジョー」(イ・ダウィッ)が彼女を追って、彼女が自殺を試みた林に入り、彼女を見つけ病院へ連れて行く。
 病院から連絡を受けて病院へ急行する両親。チュヒを心配する母親(ソ・ヨンファ)の横で、父親(チョ・ドクジェ)は看護婦に、自分は教師で噂が流れると困るからくれぐれも外部に口外しないように看護婦に頼む。そんな夫の姿に母親は怒りを爆発させる...

 微妙に登場人物、話が少しずつずれて、いくつかのエピソードが始まるので、これは何なんだ、と思わされるが、徐々に話が一つに収斂していく。そのエピソードの重なり具合がちょうど映画ナレーティブにおける「キュビズム」のような効果を醸し出している。
 だが、話が収斂する最後に、通常の映画では、映画というフィクションの枠の中での「事実」を構築していくのであるが、本作は、フィクションという枠の中での「事実」を決定的に否定することで、逆に、映画が作られた、もしくは今、劇映画を見ている、という事実性が立ち上がるという、映画を鑑賞しているという行為自体への異化効果が引き出される。
 これはちょうど、フェイク・ドキュやあるいは、キアロスタミの『クローズ・アップ』のように、決定的な事実性を映画に投入することで逆に観客に映画というフィクションの枠を観客に意識させる、映画を異化させようという試みに似ている。
 だが、フェイク・ドキュやキアロスタミの試みが、映画という「枠」自体を浮き上がらせる異化であるのに対し、本作の場合、映画の虚構の中の「事実性」を否定することで、逆にその映画が作られた、もしくは映画を鑑賞しているという「事実」を異化するという点でヴェクトルが正反対といえる。

 このあたりの監督の映画異化の仕掛けを面白いと思える人にとっては、本作の野心的な試みを高く評価できるだろう。一方、映画に従来の劇映画の枠の中での「事実性」、リアリティをあくまで求めてしまう人にとっては、「何がなんだか」に終わってしまう作品といえる。本作はシネフィル向きの作品であり、観客を選ぶ作品と言えよう。

 2012.03.08韓国封切り。韓国での観客動員数は3,402人(KOBISデータ 2012/6/30現在)。国内未公開。

 監督のイ・グァングクは1975年、ソウル生まれ。ソウル芸大映画科卒。短編『住民登録証更新期間』(2000)、『パパ、どこ?』(2003)、『どんづまりの家』(2007)を演出。またホン・サンス監督の『劇場前』『海辺の女』『よく知りもしないくせに』『ハハハ』で助監督としてつく。本作はシネ21の新人監督発掘プロジェクト当選作にして、長編デビュー作。

 なお、韓国盤DVDの画質は、解像度は甘く、輪郭のゴーストも目立つ。最近のART Serviceの画質を踏襲している。

原題『로맨스 조』 英題『Romance Joe』 監督: 이광국
2012年 韓国映画 カラー 115分

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: ART Service 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1/2 韓国語 本編:115分
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2012年 6月発行 希望価格W25300


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