yohnishi's blog (韓国語 映画他)

アクセスカウンタ

zoom RSS 「お手本の国」は意外とウソではない - 『「お手本の国」のウソ』

<<   作成日時 : 2012/08/02 00:01   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 田口理穂ほか,2012,『「お手本の国」のウソ』、新潮社(新潮新書)

 この本を手に取ろうとする方は、例えば、「ドイツは戦争責任を反省しているが、日本はあまり反省してないというのはやっぱりウソで、ドイツだってあまり戦争責任を反省していないんだろう。日本は何で自虐論がまかり通るんだ」などと思って手にしようとするのではないだろうか?

 だが、残念ながらそういった期待の多くは裏切られる。おそらく本書で、表題どおり常識のウソが明らかにされるエピソードは、「アメリカで裁判員制度はうまくいっている」「金融危機で窮乏化したギリシャは悪いお手本である」ぐらいで、残りはタイトルとは裏腹に、やっぱり「お手本の国」はそれだけのことはある、と思わされることになる。
 ただ、それでも「お手本の国」のウソと言いうるのは、社会的文脈を無視して制度だけを「お手本」にして導入してもうまくいかない、もともとの社会的文脈をちゃんと考えろ、というメッセージであろう。

 例えば、「少子化対策のお手本の国フランス」の場合は、少子化が止まっているという事実が否定されるわけではない。やはりうまくいっているのだ。しかし、それらの施策は「少子化対策」として打たれているわけではない。家族のあり方はどうあるべきかに関する、長年の政策的模索の結果、少子化が留まっている、という現在の結果があるのであって、決して「少子化対策」を目標として家族政策が打ち出されたわけではないことが明らかにされている。また移民が出生率を引き上げている、という説も否定されている。

 また、「戦争責任反省のお手本の国ドイツ」の場合、確かに今、右翼の台頭という問題も出てきているが、それは戦争責任反省が個人、家族レベルまで徹底して行き過ぎた結果の反作用、副作用として出てきた話であり、日本とは比べ物にならないほど、ナチスやヒトラーに対する反省、戦争責任の自覚が社会的に徹底していることがやはり示されている。日本で家庭内で子どもが親の戦争責任を追及するなんてあり得るだろうか? それを考えると、ドイツの「自虐度」は、日本とは比較にならないほど高い。日本で言う「自虐」はドイツと比べると、「自虐」と言うのもおこがましいレベルだ(レポーターは、日本は、ドイツ程まで反省の必要があるのか、と疑問を呈してはいるが)。

 そして、結局日本がいつまでも戦争をちゃんと反省していない、戦争責任の自覚が足りない、とみなされることに関しては、例えばドイツの人たちの「ヒトラーは[戦争責任を取って]死んだのに、天皇はなぜ天寿を全うしたのか」という素朴な疑問にちゃんと答えられない限り、海外に対する、日本の戦争責任に関するアカウンタビリティを果たせない、とむしろ日本のこの問題に関する努力不足を指摘する。

 「教育政策模範国家フィンランド」に関しては、確かに旧フィンランド大使館職員だった北川達夫氏が提唱した「フィンランド・メソッド」なるものは存在しない、と指摘している。つまりフィンランドでは個々の教師の裁量が大きく、ある特定の教師の個人的教育実践方針をあたかも国全体が取り組んでいる政策であるかのように喧伝してしまった、と指摘している。
 しかし、フィンランドの教育力が高いのは事実、また競争に関しても、高校レベル以上では競争はやはり存在するものの、それを重視することなく、競争と学力向上を結び付けて考えていないのも事実であると指摘する。
 従って、競争よりも、個々の教師の裁量を高め(=画一的な教育方針ではなく、教師による教育方針の多様性を認めることになる)、子供たち一人ひとりに向き合う教育を行うことが、フィンランドの教育水準の高さを支えているということになる。これは職場の規律維持という言葉で、個々の教師の裁量を狭めて上意下達を図るとともに、教育現場への競争の導入を図るという、橋本徹流教育改革とは正反対である。

 結局「お手本の国」の「ウソ」の部分とは、その施策の社会的背景や哲学を考えずに、それから切り離して施策だけ導入すればうまくいく、と考えることであって、やはり多くの「お手本の国」はそれなりにやはり「凄い」のである。

 但し、アメリカの裁判員(陪審員)制度のレポーターは、自分が当事者だったら到底受けたくないような制度であると指摘し、それでも行われているのは、結局アメリカ人は陪審員制度が良いのだという、信心のためのようだと述べている。もっとも日本の裁判員制度に関してここで書かれている程度のことを書いてしまったら、完全に守秘義務違反。逆に日本の裁判員制度がうまくいっているように見えるのは、裁判員に守秘義務が課されて、問題点が明るみに出ないせいかも?

 また、国民生活が「窮乏化」して、だめな国家の「手本」として伝えられるギリシャも、ギリシャの緊縮策などは日本と比較すれば全然大したことはなく(日本で言えば多少節約が求められる程度)、国民生活は相変わらず豊かで窮乏化などとは程遠いという。このような背伸びした国民生活を可能にしている最大の要因はEU諸国からやってくる多くの観光客であり、外国人観光客の訪れやすさは日本の比ではないという。

 このようにマスメディアが伝えていることは大嘘、という期待で読むと多くは肩透かしにあう。それでも、社会的コンテキストを無視した報道や政策の猿真似は非常に問題が多いことが分かる。アメリカのロー・スクールをまねた日本の法科大学院のものの見事な失敗を見れば、そのことは明らかであろう。



「お手本の国」のウソ (新潮新書)
新潮社
田口 理穂ほか

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 「お手本の国」のウソ (新潮新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「お手本の国」は意外とウソではない - 『「お手本の国」のウソ』 yohnishi's blog (韓国語 映画他)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる