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zoom RSS 『星たちの故郷』 - 韓国ホステス映画ジャンルを開拓した1974年の大ヒット映画

<<   作成日時 : 2012/08/26 07:11   >>

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画像 本作は『風吹くよき日』『旅人(ナグネ)は休まない』『馬鹿宣言』『膝と膝の間』等で知られるイ・チャンホ監督のデビュー作にして、当時大ヒットを記録し、「ホステス映画」というジャンルを確立した、韓国映画史史上一時代を画した作品。原作はチェ・イノの同名の小説。

 ムノ(シン・ソンイル)は、画家とは名ばかりで、半分は、おそらく裕福であろう実家の仕送りで暮らしている、女にまめな中年の遊び人。おそらく女遊びが過ぎて今まで独身だったのであろう。彼はある日、バーで一人酒を飲んでいた気になる女、キョンア(パク・インスク)に出会い、肖像画を描いてやる。そして別の日、別の酒場で、そこで給仕をしていたキョンアに再開する。最初はムノのちょっかいを相手にしていなかったキョンアだが、結局彼と一夜を共にすることに。それがきっかけでキョンアはムノのアパートに転がり込む。
 ムノと出会ってすぐ彼を占い師のところにつれていくキョンア。彼との宮合(クンハプ=相性)を占ってもらいに行ったのだ。だが占い師は、お前は男から男へと転々とする運命で、この男とも長くは続かない、いっそ米国にでも行ってしまえ、そこなら韓国での運命も無効だろうから、と冷たく言い放たれ、泣きながら占い師の元を出て行く。

 キョンアは、元々は田舎からソウルに出てきた女の子。純真で明るかった彼女は出てきてすぐボーイフレンドヨンソク(ハ・ヨンス)が出来る。だがおそらく彼女の家柄がさほどでなかったためであろう、彼に体を許したとたんキョンアはあっさり捨てられ、彼は別の女と結婚してしまった。
 それでも彼女はめげずに妻に死に別れた中年の男性イ・アンジュン(ユン・イルボン)の後妻になる。だが彼は前妻への未練を引きずり、娘は部屋にこもったままなつかない。家政婦に聞くと前妻は彼の不貞が原因で自殺してしまったという。
 そんな彼女は彼の心をリフレッシュさせようと前妻の持ち物を処分する。アンジュンは一時キョンアの行為を怒るものの、やがて彼女の気持ちを理解し、前向きに彼女との夫婦生活をやり直そうとする。そんな中キョンアは妊娠の兆候を感じた。喜んで産婦人科に行くと、それは想像妊娠だという。しかも産婦人科から夫に、彼女に掻爬の痕跡があったと連絡がいく。前のボーイフレンドとの間に出来ていた子供を堕していたのであった。それがきっかけで彼女は夫から捨てられる。

 そんな彼女をムノはやさしくいたわる。しかしそんなムノの前にキョンアの3番目の男が現れる。ドンヒョク(ペク・イルソプ)だ。男に頼らざるを得なかったキョンアは、アンジュンに捨てられた後、ヒモであるドンヒョクに出会ったが、彼のためホステスに身を落とさざるを得なかった。そんなろくでなしの元を何とか逃げ出して出会ったのがムノだったのだ。ドンヒョクはムノにキョンアを返すように迫る。最初は拒絶していたムノだったが、何度もしつこくやってくるドンヒョクにいたたまれなくなり、結局二人は別れる

 それから年月が流れた。ある日キョンアがある酒場で働いているとの噂を聞いたムノはその酒場を訪ねる。キョンアはそこにいたがアル中状態であった。彼女はドンヒョクとは何とか別れたという。そして故郷の母に久しぶりに手紙を書いたところあて先不明で戻ってきてしまったという。そして彼女はうわごとのように言う。母さんを探しに行かなきゃ... それがムノとの永遠の別れとなってしまった。

 冬のある寒い日、キョンアは故郷に母を訪ねに出発し...

 本作品は、イ・チャンホ監督の長編デビュー作にして当時大ヒットを記録した。ソウルの国道劇場では1974年4月に封切られて、延々のロングラン、46万4000人の観客数を記録したという。本作はかならずしも「ホステスもの」というジャンル映画を意図していたわけではなかったと思うが、本作がきっかけで『ヨンジャの全盛時代』(1975)『朝帰りの女(朝、退勤する女)』(1979)などの一連の「ホステスもの」映画が流行することになったという。
 本作を見ると『朝帰りの女』などは完全に本作の亜流だということが良くわかる。

 今日見てみると、もはや今日とは大きく変わってしまった当時の韓国の様々な社会規範や制約、生き辛さが活写されていて興味深い。当時の韓国では一度女が男で失敗してしまうと、それがスティグマになり社会的に行き場を失ってしまっていた。そのため、離婚して韓国では行き場を失って日本やアメリカ渡る女性も多かった。そんな時代の女性にとっての閉塞感が非常に良く描かれている。当時の韓国社会は女性にとってアリジゴクの巣の縁を歩くようなもので、一度縁から転落してすり鉢の底に転がり込んでしまうと二度と這い上がれない社会であった。
 そして、社会身分的格差の激しさ。こちらのほうは今日の韓国でも依然として健在かもしれない。遊び人のムノ
が、そこそこ面倒を見ながらも結局最終的にキョンアを引き受けることをしないのは、彼女の「身を持ち崩した女」というスティグマもさることながら、やはり家格の違いが大きかったのではないか。そしてそれが何の屈託もなく当たり前のこととして描かれている当時の韓国世相にも驚かされる。占い師の、いっそ米国にでも行ってしまえ、という言葉も決して根拠なき発言ではなかったのだ。

 今日の韓国ドラマも、平凡な女の子が財閥の男を捕まえる逆転玉の輿ドラマがはやっているのも、逆にそれが依然難しい社会的現実の反映のような気がする。とはいえ、昔は絶対逆転玉の輿などありえなかったのが、美人でさえあれば、場合によってはそういうことも可能でありうるようになったという点が今日の違いであろう。韓国における整形手術の流行も、「肉体美」を先天的なものから後天的なものにすることによる、人間の自由・機会平等の拡大、あるいは「肉体美」の、一種社会的「貨幣」メディア化と見ることが出来るだろう。

 女性が見れば、なんと男に都合の良い... と思われるかもしれない。そして今から見れば何と古くさいで済まされるかも知れない。ただその社会的制約の中で、ある種、田村泰次郎の「春婦伝」などの小説に近いロマンが描かれたのも事実なのだ。

 当時の時代を感じさせるイ・チャンヒらの歌が挿入されているのも良い。

 本作品は1974年4月26日韓国封切り。本作は国内未公開と思われる。

 イ・チャンホ監督は1945年ソウル生まれで、弘益大学建築美術学科卒。1965年父の意向で申フィルムに入社。シン・サンオク監督の『無宿者』『内侍』に助監督として付く。1974年本作品でデビューし、大ヒットを記録。それに引き続き『昨日降った雨』(1974)も成功し、青春映画監督を自負した。
 1976年大麻吸引事件で4年間の活動停止を余儀なくされたが、それがむしろ社会的認識を広げることになった。その後1980年『風吹くよき日』で再び認められた、80年代には作品性のある映画作家として認識される一方で、興業性のある作品も作れる映画監督としても認識された。作品性のある系列映画として『アダムの子供たち』(1981)『馬鹿宣言』(1983)『旅人(ナグネ)は休まない』(1987)等がある一方で、興業性ある作品として『膝と膝の間』(1984)『於宇同』(1985)『外人球団』(1986)等ヒットし、広く亜流作を産んだ作品群もあった。
 その後は『ディープ・ブルー・ナイト』(オ・ビョンチョル監督)など映画製作も手がけ、1990年代以降も『天才宣言』等監督したが、1980年代ほどの注目を浴びることはなかった。最近ではベテラン監督を集めた2011年のオムニバス映画『マスター・クラスの散策』で一編を監督している。(以上監督経歴はDaum映画データベースを参考に執筆)

 Movie Plexの韓国製DVDだが、一応16:9のアナモルフィック収録の1:1.85画面比(パッケージの表示は4:3フルスクリーンとなっている)。ただこれがオリジナルの画面比なのかどうかよくわからない。解像度は例によってVHS程度でCATV放映用マスターの流用らしい。ロール末端の画面の傷やほこりなどもそのまま。当然字幕もなし。但し、実収録実時間はDaumデータベースの時間と一致してるので、欠落部分はない模様。
 やはり韓国映画史の一時代を画した作品であることは間違いないので、韓国映像資料院からより良質なマスターより再刊を期待したいところだ。

原題『별들의 故郷』 英題『The Stars Heavenly Home』 監督:이장호
韓国映画 カラー 109分

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:Movie Plex 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 韓国語 本編109分(収録実時間)
リージョンALL 字幕: なし 片面一層 2012年 3月発行 希望価格W16800

『朝帰りの女(朝、退勤する女)』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201106/article_6.html

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