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zoom RSS 『視線を越えて』 - 韓国国家人権委員会啓蒙映画第5弾

<<   作成日時 : 2012/04/17 06:37   >>

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画像 『6つの視線 (邦題: もしあなたなら)』以来、韓国国家人権委員会が企画した啓蒙オムニバス映画の「視線」シリーズ第5弾(アニメ版を除く)。率直に言って、このシリーズは第1弾がかなり出来が良かったものの、その後は部分的に出来のよい作品はあっても、全般的にはユーモア不足だったり、バラエティ色を強めると、メッセージが弱かったりと第1弾を超えるものはなかったというのが私の感想だが、今回は第1弾に肉薄する出来。

1.「歯、2本」(カン・イグァン監督)
 中学生ジュニョン(パク・ジョンウク)は、たまたまヨンオク(ソ・オクボル)という女の子が振り回していた野球バットに当たり、前歯2本を失ってしまった。歯医者に行くと当面ブリッジで補綴することはできるものの、長期的にはインプラントにすることを勧められる。しかし、現在はまだ無理で、高校2,3年になってからやってはどうかと言われる。
 当面、学校の補償制度でブリッジに関しては治療費は補償されるものの、将来行うブリッジまでは補償できないことが分かり、担任の先生の仲介で加害者のヨンオクと被害者のジュニョン、そして両者の母親同士が話し合うことに。その結果分かったのはヨンオク母子は脱北者であり、家計的にも苦しいという事実であった...
 親の思惑とは別に、ジュニョンとヨンオクは事故をきっかけに親しくなるのだが、周囲からは冷やかされたり、ヨンオクは「北朝鮮」と呼ばれたり。そしてジュニョンの母もまた...

2.「ニマ」(ブ・ジヨン監督)
 ニマ((Danzan Davaan Yam)はモンゴルから来た不法滞在の外国人労働者。彼女は娘を故国に置いてホテルで清掃の仕事をしている。その日、ホテルの支配人(パク・ヒョックォン)から珍しく、韓国人のコンビ相手ジョンウン(イ・ジョンウン)と仕事するように言いつけられる。
 ニマはジョンウンと仲良くしようと韓国語でいろいろ話しかけるが、慶尚道なまりのあるジョンウンは不愉快そうに彼女にまともに取り合おうとしないのであった...

3.「百問百答」(キム・デスン監督)
 周囲から将来を嘱望されるデザイナー、ヒジュ(キム・ヒョンジュ)は、チーム長ソンギュ(キム・ジングン)に気に入られ重用され、周りからうらやましがられる存在。だが彼女には悩みがあった。彼女にはボーイフレンド(ユ・ハジュン)がいるにもかかわらず、ソンギュからたびたび体を触られるのであった。
 しかもある日、一仕事が終わった後、ソンギュとワインを飲み、そのままソンギュに襲われる...

4.「バナナシェイク」(ユン・ソンヒョン監督)
 フィリピン人外国人労働者アルビン(コムビル)は、韓国人のボンジュ(チョン・ジェウン)とともに引越センターで仕事をしている。アルビンはいつもボンジュのからかいの対象だ。ある日、引っ越し作業をした家から宝石がなくなっていると引越センターの社長に苦情が。
 その家に、社長とともにその日作業に当たった職員たちが呼び出される。その家の主人から、1日だけ時間をやるから犯人は名乗り出るようにと言われる。さらに、色の黒い外国人労働者(アルビン)が怪しいとも。その話を聞いてボンジュは悩む。実は宝石をくすねたのはボンジュだったのだ。そんなボンジュの心を知ってか知らずか、アルビンはボンジュに「実は話があるんだ」と話しかけてくる。二人はともに酒を飲むとアルビンは、実は僕は犯人を知っている、と切り出してくる...

5.「真実のために」(シン・ドンイル監督)
 失業中のイングォン(キム・テフン)とその妻ボジョン(シム・イヨン)。イングォンに先輩の紹介で職が決まりかけたその時、妊娠していたボジョンは流産の危険性が疑われ緊急入院する。ゴルフ練習場で清掃婦をしているボジョンの母(キム・ソスク)が病院へ慌てて駆けつけると、実はイングォンとボジョンが入院費300万ウォンを入れたハンドバッグを病院の待合室に起きっぱなしにしていたことが判明する。
 慌てて待合室に戻るが既にバッグの姿はない。病院の事務長から病院ではCCTVで監視しているからそれを確認するまで警察に通報するのは待ってくれと言われる。やがてCCTV監視担当者が駆けつけてCCTVの映像を確認しようとするが、故障のためなのかどうか、CCTVの録画がされていないことが判明する。
 それに精神的衝撃を受けたボジョンは...

 今回は全部で144分に及ぶ力作。この中でもっとも出来の良いものはユーモアと問題意識のバランスのとれた、独立映画の話題作である『番人(Break Night)』のユン・ソンヒョン監督による「バナナシェイク」であろう。おそらくユン・ソンヒョン監督は直ちに商業映画監督としてデビューしても十分な作品を作れるほどの力があることを見せつけてくれる。外国人労働者をただかわいそうな存在と見る視線を拒否し、この国(韓国)の主人公だと思っている韓国人であっても時と場合によっては外国人労働者になりうる、という、外国人労働者との立場の交換可能性を、ユーモアを以て鋭く描いた視点が秀逸。
 そして、『サグァ(リンゴ&謝罪)』のカン・イグァン監督の「歯、2本」も中学生の淡いロマンスと、周囲の思惑の落差を絡めて描いて秀逸。『いま、このままがいい』のブ・ジヨン監督の「ニマ」も外国人労働者と韓国人労働者の心の交流と連帯を描いて暖かい。 『バンジージャンプをする』などの商業映画監督としてこの中では一番実績のあるキム・デスン監督が生硬なセクハラを扱った作品を撮っているのはちょっと意外。
 そして『訪問者』『バントゥビ』などのシン・ドンイル監督の「真実のために」は監視社会のご都合主義を鋭く告発する作品となっている。

 「視線」シリーズの第1回はユーモアと問題意識のバランス具合が絶妙だったが、その後はややユーモアを欠く告発調が目についたり、あるいは問題意識のありようが今ひとつだったりとなかなかバランスが取れなかった印象であった。今回はそのあたりのバランスが回復されるとともに、かなり気合いの入った作品群という印象。特に、ユン・ソンヒョン監督の実力のほどが見られた点は拾いものであった。

 ただ今回の視線シリーズを見ると、韓国の人権問題の焦点は、脱北者を含めた外国人(移民)労働者問題と経済格差問題が最大の問題になっているということが見て取れる。

 ちなみに「バナナシェイク」で流暢な韓国語を駆使するフィリピン労働者役で出演したコムビルは実はネパール人。
実生活はネパール料理店「イェティ」を経営しながら、外国人タレントとして活躍しているそうだ1)。

 本作品は、2011年4月28日韓国封切り。観客動員数は1,729人。国内未公開。

 なお、DVDの解像度は比較的優秀で、DS Mediaは最近の韓国DVDの画質が手抜き気味な中、一人気を吐いてクオリティを維持しているといったところ。

1)「バナナシェイク」俳優インタビュー (フロンティア・タイムズ=Nate 2011.4.26)
http://pann.news.nate.com/info/251052646

原題『시선 너머』英題『If you are me 5』監督:강이관, 부지영, 김대승, 윤성현, 신동일
2011年 韓国映画 カラー 144分

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: DS Media 画面: NTSC/16:9(1:1.85/1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:144分
リージョンALL 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2012年 1月発行 希望価格W25300

『番人(Break Night)』(ユン・ソンヒョン監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201110/article_1.html

『私の友達、その妻』(シン・ドンイル監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201001/article_7.html
『訪問者』(シン・ドンイル監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200810/article_15.html
『バントゥビ』(シン・ドンイル監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200911/article_3.html

『サグァ』(カン・イグァン監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200903/article_9.html

『恋愛万歳』(ブ・ジヨン監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201204/article_4.html
『今、このままがいい』(ブ・ジヨン監督)映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200911/article_5.html

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