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zoom RSS 『夜行』 - ある女子行員の叛乱を描いたキム・スヨン監督1977年作品

<<   作成日時 : 2012/04/11 22:59   >>

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画像 ある銀行員ハイ・ミスの「終わりなき日常」とそれに対する叛乱を描いた作品。『霧』のシン・ソンイル、ユン・ジョンヒのコンビが再び主演。

 イ・ヒョンジュ(ユン・ジョンヒ)は銀行の女子行員。既に30を過ぎており、周囲からはミス・オーと並んで結婚できないオールドミスと見られていた。そんな中、同僚のミス・オーがやはり同僚の男子行員と結婚することに。二人は付き合っていることを誰にも悟られないようにしてきたのだった。周囲からは一人残ったヒョンジュはますます哀れむような、からかわれるような目で見られることに。
 だがヒョンジュには秘密があった。彼女も実はやはり同僚のパク係長(シン・ソンイル)と同棲生活を送っていたのだ。二人の間はかつては結婚が話題に出たこともあったが、付き合って日の浅いころは、彼女の方が結婚式なんてばかばかしいことを、と断り、そして彼女の「商品価値」が堕ちつつあり彼女のほうがあせり始めた現在、むしろその台詞を言うのはパク係長の方になった。
 とはいえ、もはや現在の二人の関係はパク係長が自分の都合の良いときに彼女の体を貪り食うのと、彼女が彼の身の回りの世話をするだけの惰性の関係。長年連れ添って何の新鮮味もない倦怠期の夫婦のような関係になり果てている。
 ミス・オーの結婚式の直前、ヒョンジュは一人残った彼女を哀れむ上司の取り計らいで1週間ほどの休暇をもらう。その休暇で職場の同僚とともに彼女の結婚式に出席した後、パク係長に何の相談もなく、突然故郷の海辺の町へ帰郷する。
 故郷に戻ると、昔の同級生だった地元の青年実業家、チェが色目を使ってくる。彼は最近妻を亡くし、美人で有名だったがいまだにオールドミスとして残っているヒョンジュに後妻として求婚しようと考えていたのだ。
 そう、彼女は高校生当時、高校の先生と恋愛関係にあり、それは地元で広く噂になった。だが、その先生はベトナム戦争で兵隊にとられることになる。彼がベトナムに赴く直前、彼と結婚の約束を交わし、その証に彼女は彼に体を与えたのだ。しかし、彼はベトナムで戦死、「傷モノ」になった、蓮っ葉な女との噂の立った彼女は、故郷を追われるようにソウルへと去ったのであった。
 チェが後妻にと求婚してきたのも、そんな「傷モノ」の彼女なら後妻程度でちょうど良い、と考えたからに他ならない。そんなチェを適当にあしらって優越感を感じた後、ヒョンジュはソウルに戻る。
 だが、かつて高校時代に先生を純粋に思った時代の自分を思い出した彼女は、もはやただ今までのような「終わりなき日常」に戻る気はなくなっていた。パク係長の自分に対する思いは、所詮「便利な女」だから付き合っているに過ぎないと確認した後、彼女は夜毎に夜の街を彷徨するようになる。
 そんな彼女の叛乱におののいたパク係長は、結婚の籍を入れるから一緒に故郷の母親に挨拶に行こうと彼女を無理やり自分の故郷に向かう夜行列車に乗せるのだが...

 DVD付属解説パンフレットによると、本作は1973年に撮影されたが、軍事政権化の厳格な検閲のため、さまざまな部分がカットされた挙句ようやく1977年に公開が許可されたのだという。本作は単に女の男に対する叛乱を描いたのではなく、元々当時の軍事政権下の政治に対する暗喩化された揶揄が含まれていたらしいのだが、かなり大幅なカットを受けたようである。
 そのためか一見すると、50-60年代の日本映画にありがちな、もともとは純粋であったが、やがて海千山千となってしまった女の男に対する叛乱モノ、というパターンにはまる作品に見える。もちろん、それとて、保守的である韓国社会において、女だけに性的従順、都合のいい女を求める、家父長的な男のエゴに対する、社会的批判意識の現われであると見ることは出来るだろう。
 撮影技術面でも夜の町を歩くヒョンジュを手持ちで追いかけるなど、ドキュメンタリー風の手法も取り入れている。このあたりはヌーベルバーグの影響を受けた日本映画の2次的な影響か。音楽面でも、やはり1960年代の日本映画を席巻した真鍋理一郎あたりの、いかにも当時のアヴァンギャルドといった雰囲気を模したもの(音楽はチョン・ユンジュ)。
 ともあれ、1973年当時としては今までの韓国映画にないものをと、かなり意欲的に取り組まれたであろう作品であることは伝わってくる作品。

 そして、今日この作品を見ると、1970年代当時の韓国の姿が貴重。主人公たちの住むアパートは、江南の漢江沿いのアパートに設定されているが、今まで何もなかったところににょきにょきとアパートが建ち始めている模様を、今日のソウルの姿と比べると、まさに隔世の感がある。

 本作品は、1977年4月23日韓国封切り。観客動員数は135,047人(KMDBデータ)。国内未公開。

 なお韓国盤DVDは先に紹介したキム・スヨン・コレクションDVD-BOX収録のもので日本語字幕つき。画質面ではフィルムの傷等はかなり修復されている。本作はカラー。ただし、色彩は白浮き気味で、プロジェクター等で見るときは明るさを絞って見ることをお勧めしたい。

原題『야행』英題『Night Journey』監督:김수용
1977年 韓国映画 カラー 76分(KMDBデータ)

DVD(韓国盤「キム・スヨン コレクション」)情報
発行: 韓国映像資料院・Blue Kino 販売: Blue Kino 画面: NTSC/16:9(1:2.56) 音声: Dolby1 韓国語
本編:87(本作)分 リージョンALL 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面一/二層(4枚組) 2011年 12月発行 
希望価格W49500

キム・スヨン監督『霧』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201202/article_9.html

キム・スヨン監督『ある女優の告白』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201201/article_9.html

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