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zoom RSS 『ララ・サンシャイン』 - 理論派キム・アロン監督長編デビュー作

<<   作成日時 : 2012/03/14 00:33   >>

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画像 『ハロー・マイラブ』(2009)のキム・アロン監督の長編デビュー作。女性の強姦によるPTSDを扱った作品。

 ララことキム・スジン(ヤン・ウニョン)は映画脚本家。現在彼女は映画プロダクション社長パク・チョルン(イ・チャニョン)とともに次回作の企画に取り組んでいるが、脚本のアイディアがなかなか煮詰まらない。さらにパク社長はスジンに心を寄せているが、スジンはそんな彼の気持ちに気づかない振りをして、彼の誘いに乗ろうとしない。
 そんな彼女が、次の企画の題材にどうかと持ってきたのは、正当防衛で犯人が無罪とされた美術館での殺人事件の記事。美術館の職員であるイ・ミラ(アン・ジヘ)が館内で彼女を強姦しようとした男をナイフで刺し殺したが、正当防衛が認められ無罪となったのであった。社長はそれも面白いかもしれない、と賛成してくれ、スジンの取材のため事件担当警察署の刑事に会えるように手配もしてくれ、取材を進める。
 ある程度取材を進めたところで、スジンと社長は脚色の方向について話し合うが、二人の考えはかみ合わない。社長はもっと扇情的にするために、犯人の女性が執拗に被害者を刺すことにしようというが、スジンはそれでは正当防衛にならないと反対する。一方、スジンは、犯人は10数年前に被害者に強姦され、その復讐のため正当防衛を偽装して緻密に計画された殺人という方向にしたいと主張するが、社長はそんな昔のことの復讐のため今さら殺人を起こすなんて説得力がないと言う。
 だが、スジンは自分のアイディアに固執するとともに、実際に起こった事件も自分のアイディアどおりだったのではないかと考え、それを証明するために警察の担当刑事に、さらに事細かに根掘り葉掘り取材をするとともに、自分の推理は合っているかどうかの確認を求める。さらに、無罪となった犯人ミラにも直接会って取材をしようとするが、彼女からは取材を拒絶され続ける。
 だが、スジンには、そのアイディアに固執する理由があったのだ。そして彼女が男性に興味を持てないことにも... しかも彼女はシナリオ準備作業を進めながら、それと平行して「便利屋」に請負殺人を依頼する。果たして、それらの理由とは...

 本作品を見て気づいたのは、キム・アロン監督の持ち味とは、大島渚監督のようにかなりロジカルな理論派であるという点である。
 本作品の基本テーマは女性の性暴力を受けたことによるPTSDの痛みを描くことにある。その痛みの男女の受け止め方の差(というよりは男性側の鈍感さ)を、この事件の脚色の方向に対する社長とスジンの違いに描くとともに、性暴力によるPTSDの痛みを、ナイフで切りつけるような肉体的な痛みの比喩として提示する試みがなされている。率直に言って、この試みが成功しているのか、あるいは妥当なのかは、良く分からない。
 しかし、男女の間で共感の得にくい感覚を、より普遍的に共感しやすい別感覚の比喩として表現することで、共感を獲得していこうという、きわめて緻密かつ理性的な戦略的試みは評価したい。感覚的なものををロジカルな戦略で表現する... ここにキム・アロン監督の真骨頂があるように思われる。
 また、個人的にはヤン・ユニョンの理知的な美しさが存分に堪能できる点も評価。彼女が演じている役柄としては『ハロー、マイラブ』と近いものがある。なお、随所にウォン・カーウェイの『恋する惑星』にインスパイアされたイメージが登場する。DVDのジャケットも、『恋する惑星』でブリジット・リンが演じた役柄にインスパイアされてヤン・ウニョンが扮している。

 本作品は、2009年10月22日封切り。韓国での観客動員数は312人(KOBIS 2009年データ)。国内未公開。

 なお、本作の韓国盤DVDは全般的に輪郭強調がかなりある。ただし、画像のコントラストが高めということと、引きの映像が少ないため、印象としてはそう解像度が落ちるという感じはない。付加映像として監督の短編『温室』を収録。なお英語字幕はなく、韓国語字幕のみ。

原題『라라, 선샤인』英題『La La, Sunshine』監督김아론
2008年 韓国映画 カラー 63分(韓国上映版)

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: WIDE MEDIA 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby2 韓国語 本編:63分
リージョンALL 字幕: 韓(On/Off可) 片面一層 2012年 1月発行 希望価格W25300

『ハロー・マイラブ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201002/article_9.html

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