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zoom RSS 『最終兵器 弓(ファル)』- 2011年韓国最高の興行成績を残した韓国映画

<<   作成日時 : 2012/03/08 07:57   >>

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画像 2011年に韓国における興行成績で、韓国映画中最高の700万人台観客動員を記録した作品。朝鮮時代を背景にした歴史アクションもの。第32回青龍映画賞で最大観客賞、主演男優賞、助演男優賞、新人女優賞、技術賞を受賞。

 本作品は、朝鮮朝時代、1623年に起こった仁祖反正(インジョパンジョン)1)、ならびにその13年後に起こった、朝鮮時代でもっとも恥辱的な戦いとして知られる丙子胡乱(ピョンジャホラン)2)を時代背景として描かれている。

 ナミ(パク・ヘイル、幼少時代はイ・ダウィッ)、チャイン(ムン・ジェウォン、幼少時代はチョン・ミンソ)の兄妹の父は、1623年の仁祖反正の際に逆賊として殺され、一族も皆殺しの目にあう。ただ、ナミとチャインだけが父の計らいで命からがら逃げ出し、父の友人である、開城(ケソン)在住のキム・ムソン(イ・ギョンヨン)の許に身を寄せる。
 その13年後、チャインは結婚する年頃に。ムソンの息子、ソグン(キム・ムヨル)はチャインとの結婚を望んでいた。しかし、ソグンの母がナミ、チャインの兄妹に、逆賊の子供だと辛く当たることから、チャインの父代わりのナミはソグンとの結婚に反対。だが、ソグンの父ムソンが息子とチャインの結婚を認めたことから、ついに二人は結婚することに。
 結婚式の当日、結婚に賛成できないナミは、妹に贈り物の靴を一足残して、裏門からムソンの家を出る。だが、家を出てしばらくいくと、満州人であるジュシンタ(リュ・スンリョン)指揮下の清軍が侵攻してくる[丙子胡乱]のに出会う。ナミを救おうとあわててムソンの家に戻るナミ。だが、屋敷には、殺された下人を除いて、すべての家族が清軍の捕虜として北に連れ去られてしまった。ナミは妹を連れ戻すことを誓い、北に向かう。
 一方、捕虜となった人々は、鴨緑江岸に連れて行かれた。そこで清軍の将軍、ウァンハン(イ・スンジュン)が、捕虜に向かって、鴨緑江を越えてしまえば二度と朝鮮へ戻れない、逃げたい奴は今から五つ数える間に、勝手に逃げてよいと宣言。捕虜たちは狐に包まれた表情で顔を見合わせるのだが...

 ポイントは妹思いのナミが、自慢の弓術を駆使して清軍の陣地に忍び込みナミを救い出そうと努力する兄妹愛とともに、ナミと清軍との追いつ追われつの手に汗を握る弓術アクションにある。このあたりのmise en sceneはスリラー映画出身の監督ならではか。但し、このアクションシーンを堪能するにはやはり高精細な大画面で見ることが必要で、20インチ程度のパソコン画面で見ると魅力は半減以下になってしまう。
 他人のネット評を鑑賞するかしないかの参考にしている人もいると思うが、ネット評でも高評価を付けている人と、並、と評価している人に分かれる。このようなネット評を参考するときに、評者の鑑賞メディアに注意したい。本作品はストーリーで見せる映画ではないので(ストーリー自体は比較的単純)、おそらくパソコン上のオンライン動画で見ている人は「並」と判断し、映画館で見ている人は高い評価を付ける傾向にあるのではないかと思われる。そもそも本作はパソコン等の小画面で見るべき作品ではない。

 おそらく韓国の人たちは本作に北側や中国に対する複雑な思いやコンプレックス、そして、ポン・ジュノの『ケムル』にも通ずる政府や社会制度不信の感覚(そしてそれに対抗するような家族愛の要素)などを読み込みながら、それらの恨を晴らす思いで本作を見ているのではないか。また、父世代の子世代へのバトンタッチ(あるいは子世代が父世代を乗り越えていく姿)のメタファーも見られる(この場合父のメタファーはナミ)。それが2011年最大のヒット作になったことにつながったのだと思われる。エプスタインの「ビッグ・ピクチャー」ではないが、相当市場調査をやって映画のコンセプトを決めているのかも。
 もちろん、そんな深読みなどしなくても、とりあえずアクション映画として十分楽しめる出来にはなっているし、歴史的背景を知らなくても兄妹愛の物語として十分楽しめる。但し、くどいようだが、アクション映画として楽しむためにはやはり大画面での鑑賞が必須。

 ところで、本作に出てくる清軍は満州語を話しているという点でも珍しい映画。満州語の台詞の比率も半分近くと結構高い。もっとも本当にきちんとした満州語を話しているのかどうなのかは、(例えハナモゲラ満州語であっても)われわれには判断がつかない。音を聞いている限りでは、韓国語と似ているような気もするが(おそらく同じウラル=アルタイ語族の言語であろうからそれはありうる)、単に俳優が韓国語なまりでしゃべっているせいかもしれない。
 ただもしこれが北京語だったりすると、いまどき韓国語なまりの北京語を話させたりすると、中国人から突込みが来るので、本格的な言語指導、もしくは中国人俳優の起用が必要になりコストがかさむ。おそらく満州語ネイティブは、ほとんど残っていないだろうし、韓国人俳優がなまりのある満州語の台詞をしゃべってしているのだとしても、それに違和感がもたれる可能性は極めて少ない。映画製作コストを削減する良いアイディアなのかも。

 なお、原題を直訳すると「最終兵器 弓」だが弓という意味の韓国語固有語「ファル」は漢字「活」と同じ音であり、タイトルには「活」という字が躍る。これは主人公が弓を駆使するということと、映画の中で、弓は人を殺すために使うのではない、活かすために使う、という台詞があるので、それにかけている。ただ、その台詞が物語の中に活きているかというといささか疑問。例えば、劇中でナミはウォンハイを簡単に殺す機会を得るのに、敢えて見送る場面が出てくるが、後から考えると結局無意味だったりする。

 本作の韓国封切り日は2011.8.10。韓国での全国観客動員数は7,470,633人(KOBIS 2011年データ)。日本未公開。但し、韓国映画2011年最大ヒット作ということで(ただし、韓国内での2011年最大ヒット作は『トランスフォーマー3』)国内封切りされる可能性は高いだろう。

 本作の監督である、キム・ハンミンは1969年生まれ。東国大学大学院修士課程終了(演劇映画学)。短編『太刀魚怪談』で注目を集める。既存のスリラー映画のパターンを脱したスリラー映画を目指す、ということをトレードマークに短編から長編デビュー作『極楽島殺人事件』(2007)『携帯電話』(2009)を経て本作。

 なお、筆者が入手したのは米国盤Blu-ray/DVDディスク。1枚分のパッケージにBlu-rayとDVDの2枚が収録されている。欧米ではBlu-rayの普及がまだまだで普及させようという意図なのか、最近Blu-ray、DVDのダブルパッケージが増えている。それでいて従来のDVDやBlu-ray単独と比べてそんなに価格が高くなっておらずお買い得感がある。
 韓国盤はDVDが先行販売されており、Blu-rayは3月にこれから出る予定。韓国ではBlu-rayディスクがあまり売れないので、実売価格も米国盤のほうが安い。本作のような作品は、高精細の大画面(100インチ以上)で見るのが望ましいので、韓国語字幕や韓国語のオーディオコメンタリーにこだわる理由がなければ米国盤Blu-rayディスクがよいだろう。
 Blu-rayディスクの画質だが、解像度は非常に高い。またくっきり、はっきりのハイコントラストな鮮明映像で、いかにもデジタル的という仕上がり。フィルムの粒状感もあまり感じられないので、おそらく撮影当初から素材はもともとデジタルなのではないか。フィルムらしさが好きという方には好みに合わないかもしれない。

1)Wikipedia韓国語版によると、宮廷の中の西人(ソイン)一派が、朝鮮第15代王、光海君(クァンヘグン)ならびに大北(デブク)一派を追い出し、綾陽君(ヌンヤングン)を擁立した事件。この結果光海君は江華島に流され、光海君が重用した重臣たちは逆賊として処刑された。なお、明と後金との間でバランスを取る中立外交政策を採ってきた光海君がその位を追われ、朝鮮の外交政策が大きく変わったことが、後の丁卯胡乱そして丙子胡乱へとつながっていった様だ。

2)やはりWikipedia韓国語版によると、1627年の丁卯胡乱についで1636年12月から37年1月にかけて起こった、清(後金)による朝鮮侵略戦争で、わずか2ヶ月の清軍の攻撃で朝鮮が屈服した屈辱的な戦い。後金から清へと国号を変えた満州族軍は朝鮮を侵略、朝廷は南漢山城へ移って抗戦したが、食糧不足から屈辱的な降伏を喫する。

原題『최종병기 활』英題『War of the Arrows』監督:김한민
2011年 韓国映画 カラー 122分(韓国上映版)

DVD(US盤)情報
発行・販売:Well Go USA 画面: HD1080p/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1/2 韓国・満州語/英語(吹替) 本編:123分
リージョンA 字幕: 英(On/Off可) 片面一層Blu-ray/片面二層DVD2枚組 2012年 2月発行 希望価格$29.98
※DVD単独版もあり。

『極楽島殺人事件』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200909/article_16.html

『携帯電話』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201103/article_4.html

『最終兵器 弓』満州語の監修を行った高麗大学民族文化研究院キム・ギョンナ講師インタビュー(韓国語)
http://blog.naver.com/PostView.nhn?blogId=storytori&logNo=10117565660

付記 2012.9
本作品は『神弓 KAMIYUMI』の邦題で一般劇場公開中。
http://kamiyumi.jp/about/



国内盤Blu-ray&DVDコンボセット(2012.12発売)

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『最終兵器 弓(ファル)』Blu-ray / DVD画質比較
 『最終兵器 弓(ファル)』のアメリカ盤はBlu-rayとDVDのコンボなので、果たしてどれぐらい画質差があるのかを撮影してみた。プロジェクターでスクリーンに投影したものをデジカメで写したもの。  上がBlu-ray、下がDVD。  アメリカ盤DVDも、そんなに悪いわけでなく、輪郭協調も比較的少ないが、それでも解像度差ははっきりでる。 ...続きを見る
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2012/03/18 06:49

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