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zoom RSS 『ヘファ、ドン』 - 2011年韓国独立映画話題作

<<   作成日時 : 2012/03/01 00:22   >>

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画像 2011年韓国で公開された『番人』『茂山日記』と並ぶインディーズ映画の話題作。高校時代に未婚のまま妊娠してしまった女性のその後の心の痛みを描く。

 ソウル郊外に住む22歳のヘファは、動物病院で働らきながら、飼えなくなった犬の救済活動を行っている。一人住まいの彼女の家には、引き取り手のない犬が何匹も引き取られており、彼女は献身的に犬たちの世話を焼いていた。そんな彼女の背後に、彼女をひそかに付回す男が一人...

 5年前、17歳(韓国式の数え歳で18)の女子高生だったヘファ(ユ・ダイン)は、やはり高校生だったハンス(ユ・ヨンソク)と付き合っていた。だが彼女は妊娠してしまう。当時彼女は父は既になく、同居の年老いた母、それに3人の歳の離れた独立した兄がいた。彼女はハンスと将来を約束した上、母と兄に相談して、とにかくハンスが一人前になるまで一時的に自分の生まれてくる子供を母にお願いすることにする。
 ところが、ハンスはヘファを自分の母になかなか合わせようとしない。やむを得ずヘファはハンスの家に母と押しかけると、ハンスの母は、ハンスはカナダに留学させるつもりだ。子供のことはお宅たちの考えを尊重するから、その代わりハンスのことは諦めてくれと言う。そしてハンスもそれっきり姿を現さないのだった。
 ヘファは高校も中退を余儀なくされ、生まれた子供は、1日ですぐ亡くなる。そうして彼女はハンスも子供のこともきっぱり忘れて、新しい人生を送っていたのである。そして彼女は、母親がいなくなり息子一人残された勤務先の動物病院の院長にひそかに恋焦がれてもいた。
 今日、ヘファの母親は痴呆となり、兄の家に引き取られヘファは一人住んでいる。だが、今日彼女が犬たちを救済すべく何匹も自宅で買っているのは、子供を亡くしたことによる代償行為なのだろう。

 そんな彼女を付回していたのは5年ぶりに現れたハンス。ハンスは彼女に声をかけようとするが、彼に深く傷つけられた彼女は、振り返ろうともしない。ハンスは、自分たちの子供たちが、実は死んでおらず、彼らに知らせずに養子にやられたことを突き止めて、養子先の大学教授の家の周辺を何度もうろつくが、教授に取り押さえられてしまう。
 その一方、ヘファは痴呆となった母が、実は自分は母の本当の子ではなく、50を越えた父が浮気した女に産ませた子だという事実を話すのを聞いて、衝撃を受ける。
 そんな中、ヘファは、ハンスから受け取った手紙で、自分の子供が養子に行ったという事実を知らされ、そして、娘の通う幼稚園に行って娘を一目見ようとの提案を受ける...

 本作のアイディアは、DVDの付加映像によると、元々監督がTVドキュメンタリー製作に従事していた際、その取材の中で捨て犬救助のボランティアをしていた女性を取材し、その彼女が病気の犬を救助しようとして何ヶ月もその犬を捕まえようとしても、すんでのところで逃げられた場面に遭遇したという。その時彼女は「なぜあの子は人の心が分からないの」と涙を流したのことが、おそらく彼女の心の奥にあるなにかの痛みに重ねているように思えて、それから本作のアイディアが沸いたという。 
 ただ、主人公のキャラクターは、主演のユ・ダインのキャラクターをかなり反映した形にしたそうである。

 とにかく初長編とは思えない完成度の高い作品で、心情描写の確かさに白眉。ヘファのハンスに捨てられた痛みとその心の後遺症、さらに自分の複雑な出自を知ったたり、信頼しきっていた母から嘘をつかれたことを知っての複雑な思い、そしてそれらが絡み合っての動物病院長へ寄せる微かな希望とそれが破られたときの痛み... これらの心情描写が、感性的というよりはどちらかといえば極めて緻密な論理的構成力とクローズアップを多用した映像描写に起因する説得力を以って、視聴者に迫ってくる。
 フラッシュバックを多用した、現在と過去を何度も往復する複雑な構成を持っているので、時間軸の交錯で混乱する人は、高校生の時のヘファと現在のヘファの違いに特に注意を払いながら見ていただきたい。
 感情の流れを極めて分析的・構成的な手法によって説得的に展開していく、構成力・テクニックには感服させられる。
 なお、本作品の題名『ヘファ、ドン』は、Daum映画の記事によると、ソウルの恵化洞のことではなく、ヘファの「冬(ドン)」、ハンスを無視していたヘファが彼の提案に心動かされる「動(ドン)」、ヘファの子供に対する辛い追憶の意味である「童(ドン)」、そして最終的には拒絶していたハンスの気持ちに同化していく「同(ドン)」の意味を兼ねているという。ちなみに映画冒頭に出てくる、再開発を控えて放棄された街は、恵化洞ではなく、京畿道高陽(コヤン)市のタンヒョン洞でロケしている(監督コメンタリーより)。

 本作品は、釜山国際映画祭上映時にはチケットが即時売切れになるほどであり、またユ・ダインらの演技力の高さも話題となった。2011年2月17日封切り。観客動員数は11,197人(KOBISデータ 2011年)。国内未公開。

 ミン・ヨングン監督は1976年生まれ。漢陽大学演劇映画科卒。1996年短編『週末』で釜山国際映画祭招待、さらに2006年『泥棒少年』で国内外の有数の映画祭に招かれた。さらにオムニバス『ワンナイト・スタンド』の「一番目の夜 - 熱病」の演出を担当、人々に深い印象を残した。本作が初長編作品。

 本作品のDVDであるが、比較的輪郭強調が少なく画像の解像度は比較的高い。HDリマスター高画質の看板に偽りなしというところか。最近の韓国映画の中では水準以上だろう。但し一部動きの激しいところで画面が荒れる傾向にある。ただ当然Blu-rayに匹敵するような精細感はない。なお付加映像ディスクに監督の短編映画『泥棒少年』が収録されていて、お得感は高い。

原題『해화, 동』英題『Re-encounter』監督:민용근
2010年 韓国映画 カラー 108分

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: DS MEDIA 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:108分
リージョンALL 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(2枚組) 2012年 1月発行 希望価格W25300

『ワンナイト・スタンド』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201104/article_17.html

追記: 本作品は『短い記憶』との邦題で一般公開(2012.6.9より)
公式サイト
http://mijikaikioku.jp/

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韓国ドラマ『風吹く良き日』と映画『ヘファ、ドン(短い記憶)』
 家内が友人よりKBS毎日ドラマ『風吹く良き日』を録画したもの(もちろん日本のBSだかCSで放映したバージョン)を借りてきて見ることになった。  主人公は、役所に勤務する夫婦+息子二人、娘一人、夫の母と、長男の息子のチャン一家。子どもや孫の名前が、長男テハン、次男ミンググ、孫ドンニプ、娘マンセ、と4人合わせて大韓民国独立万歳の駄洒落になっている。  これにテハンのガールフレンド(→嫁)であるクォン・オボク、ミンググの女性の友達ソルジ、妻の友人で孫ドンニプの通う幼稚園の先生であるイ・ガン... ...続きを見る
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2012/06/09 14:27

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