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zoom RSS 日本人技術者争奪戦とは言うが...

<<   作成日時 : 2012/02/12 08:19   >>

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 昨年、日本の大手メーカーに勤めていた高校時代からの友人が、韓国の大手メーカーに転職した。先日旧正月の休みで帰国したのを期に久しぶりに会って向こうの事情などを聞いて、その話がなかなか面白かったので書いてみたい。
 昨年夏、やはりNHKが韓国・中国メーカーが日本のエンジニアをどんどんスカウトしているという番組をやっていたが(NHK追跡A to Z 「過熱する日本人技術者争奪戦」2011.8.11放映 http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/110811.html)、彼の話だとヘッドハンティング会社が日本の一流技術者の情報を必死に集めて、日本のメーカーから技術者を引き抜いている、というのとはちょっと違うという。むしろ、日本のメーカーが、もうエンジニアは要らないと、体の良いリストラの一環として積極的にヘッドハンティング会社に情報を流しているのではないかという。

 では、韓国の会社側の事情はどうなのだろうか。彼が移った韓国の大手メーカーは、日本側の評価では、選択と集中を経営学的に模範的に行い、市況が悪いときでも果敢に思い切った投資を集中的に行って、世界シェアを確保し、日本のメーカーを脅かしている、もしくはもはや追い越した存在として語られている。
 だが、内部から見るとちょっと違うようだ。日本から見ると選択と集中で経営資源を効率的に投資して... と見られている部分も、向こうでは、むしろ収益の柱が3本しかなく、それをどう増やしていくのかが課題なのだという。そのため、日本のメーカーの様々な分野のエンジニアに手を伸ばして次の収益の柱をどう育てるのかを探っているということのようだ。そういう意味では、「選択と集中」がグローバル経営と称するアメリカ流経営の基本に沿って、「要らない」分野のエンジニアをポイポイ捨てている日本企業の存在はまさに渡りに船。日本企業はせっかく育てた人材をただで放出するありがたい人材養成バンクのような存在だという。
 では、韓国流の経営が模範的なのか、というと、そう単純ではないようだ。彼によれば韓国企業の最大の問題点は、技術を会社の財産として育てる、という発想が欠落していることだという。彼らは、技術がなければ、その時その時で技術を買ってくればいいじゃないかという発想。トップ経営陣の役員の中には、そういう発想では会社のためにならないと心配する人もいなくはないが、一人ぐらいしかいないという。
 だから、ともかく彼らの発想は早く成果を出せ、の一本やりだという。従って人材を大切に育てようという発想もない。韓国の雇用事情は、三八線(38歳で先行リストラ=38度線にかけている)、四五定(45歳で事実上定年=西遊記の沙悟浄とのしゃれ)、五六盗(56歳の本来の定年までいる奴は泥棒だ=五六島という島の名前とのしゃれ)という言葉に知られるほど過酷であることは知られるが、事実社内に50代以上は極めて少なく、いても大半は彼のような日本人エンジニアか、ごくわずかな韓国人管理職だそうだ。そうやって、人件費の圧縮を図っているのだろう(しかし若手とは言え、韓国標準から考えればかなり高給を払っているはずである。また物価差を考えた実質購買力で考えると日本のエンジニアよりはるかに高給のはず)。だから、そのことを良く分かっている韓国人の優秀な若手エンジニアは、「そのうち日本メーカーが雇ってくれないだろうか」が口癖なのだという。だから、上から下まで誰も会社のためにがんばろうという発想はなく、その時その時で、業績が出せれば... 金が儲かりさえすれば... 、という考え方なのだそうだ。

 まぁ、そういう発想が今はやりの「グローバリゼーション」経営の発想とマッチして韓国企業が好調に見えるということなのだろうが、本当にそれがすべてなのか、本当に「選択と集中」が恒久的正解なのかは良く考えたほうがいいのではないだろうか。何だか「グローバリゼーション」経営だの「選択と集中」といった掛け声に浮かされて日本企業は自分の強みをどんどん捨てているだけではないかという疑問が浮かぶ。現に「選択と集中」を実践した結果、その「集中」した部門がこけて苦境に陥っているパイオニアのような例もある。

 先日、彼が社内で日本人社員の親睦の会を作ろうと会社の名簿を調べたところ、なんと130人あまりの日本人エンジニアが雇われているという。そして会社の技術を締める要所要所のエンジニアの大半が日本人なのだという。

 その話を聞いて思わされたのは、要は韓国メーカーとは、金の流れしか分からず技術を適切に評価できず、彼らの技術を生かした経営戦略の立てられない無能な日本の経営者の下でリストラされた日本人技術者のリベンジの場となっているのではないか、ということである。
 そもそも日本技術者が開発した技術にきちんと経営資源が割り当てられないのも、財務しか分からない経営者どもが、これからは金融資本の時代だと製品開発に振り向けず財テクに走った結果ではないのか。その結果儲かっていればよいが、オリンパスのように大穴をあけて、その結果ますます自社の技術を生かした商品開発ができないという悪循環に陥っているのではないだろうか。

 先日のニュースでも日本の電機メーカーが液晶・TV事業で苦境に陥っているのに対し、韓国メーカーは有機EL等で攻勢に出ている、との報道があったが、有機ELはもともとはソニーやパナソニックが先手を打っていたはずである。おそらくソニーあたりが「もう有機ELはいーらない」とごっそりその分野の日本人エンジニアをリストラしたのを、そのまま韓国メーカーが引き取って、彼らが、「日本メーカーの経営者の目が節穴だったのを証明してやる」と奮起しているというのが実情であろう。

 友人も「まぁ、日本の会社でやっていることと大して変わらないよ」といいつつも、「いろいろあっても、とにかく社内にこの分野では自分より知識のある奴は誰もいないから... 」と、それなりに権限を与えられて、自分がやりたいように一から新規事業を立ち上げるのをそれなりに楽しんでいるようではあった。
 ただ、55歳定年後は日本企業には戻れないので、中国へ行くか台湾へ行くしかないだろうなぁとは言っていたが... NHKの報道でも出ていたが、なぜか日本企業は一旦外国に出たエンジニアを自社に迎えようという度量はないようだ。

 こう見てくると今の日本メーカーを取り巻く状況は、あの日本のシンクロナイズド・スイミングの状況とまさにシンクロしてくる。日本の水泳界は、日本のシンクロを世界に育てた井村コーチを持て余し、中国に流出させてしまった。その判断の誤りを井村コーチは中国チームを世界2位に育て上げることで証明した上で、日本で再び働きたい意向も匂わせていたのだが、日本水泳界は井村コーチに日本国内に適切な席を用意することを拒絶し、結局、井村コーチは中国チームとロンドンオリンピックまで継続契約することとなってしまった。たぶん日本チームはロンドンで惨敗するだろう。その日本シンクロ水泳界の惨状が日本メーカーの惨状と重なってくる。単に円高で悲惨なだけではない、経営判断の誤り、そしてその経営判断の誤りを認めて一旦海外に出たエンジニアを呼び戻すだけの度量のなさが日本メーカーの苦境を招いているのではないだろうか。
 オリンパスがマイケル・ウッドフォードを再び社長として招きいれようとしないのと、海外に流出した日本人エンジニアが呼び戻されないのは、共通の土壌があるように思えてならない。

 韓国メーカーが自社で技術を育てようという発想がなく、韓国の若手エンジニアが自社に忠誠心を持てないなら、逆に韓国メーカーの成長部門を、エンジニアごと買い取ってくるという発想が日本メーカーにあっても良いはずだ。
 また、韓国メーカーに技術を自社に根付かせようという発想がないとすれば、韓国メーカーの全盛は一時的なことであり、いずれ経営者が変わるなどすれば没落していく可能性は高い。むしろこれから脅威なのは設備よりも人に投資しようとする中国メーカーであろう。

追記
 これを書いている最中に、ソニーが有機ELに再参入するとの報道がなされた。だが、おそらく特許自体はソニー保有しているにせよ(あるいは売却してしまったかもしれないが...)、有機ELの開発に携わってきた第一線級エンジニアを、既ににソニー自ら大半をポイ捨てしてしまっているのではないだろうか? 韓国メーカーに追いつくのは並大抵ではないだろう。井村コーチ率いる中国シンクロ・チームに日本チームが追いつけるのかどうかというのと同じ状況ではないだろうか。とはいえ、有機EL技術を日本メーカーに任せていてはそのまま技術ごとゴミ箱行きだったろう。韓国メーカーがやる気になったことに感謝しなければならない。

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