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zoom RSS 『サニー』 - 486世代の女性に向けた応援歌[韓国映画]

<<   作成日時 : 2012/01/19 23:38   >>

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画像 2008年に『過速スキャンダル』をヒットさせたカン・ヒョンチョル監督による2011年のヒット作。

 ナミ(ユ・ホジョン)は忙しい会社経営者である夫(ペク・ジョンハク)と娘に恵まれた専業主婦。病院に入院している母親の介護をしながらも、子供も大きくなり最近自分の存在感がないように感じている。たまたま母親の見舞いに行った際、同じ病院に、かつて高校時代の同級生だったチュナ(ジン・ヒギョン)が入院しているのを知る。彼女の病室を見舞うと、彼女は離婚し、会社経営に邁進していたものの癌のため余命わずかだと知る。
 チュナの最後の願いは、高校時代の友達グループ「サニー」の全員に再び会いたいということ。ナミは興信所に依頼して友達探しを開始する。

 1980年代の軍事政権時代、ナミ(子役:シム・ウンギョン)は公務員である父(チョン・ウォンジュン)の転勤に伴い全羅南道筏橋(ポルギョ)からソウルの高校に転入してきた。家は、父、母(キム・ヘオク)、大学生の兄(パク・ヨンソ)、そしてややボケ気味の祖母(キム・ヨンオク)の5人家族。学生運動に走った兄は、父から学費を出してもらいながらも父に向かって、「いつまで政府の手下をやってるつもりなの」などと意見しては、父と対立している。
 方言をからかわれ、シンナー中毒のサンミ(チョン・ウヒ)にいちゃもんをつけられたナミは、義理硬いチュナ(子役:カン・ソラ)に救われる。彼女のグループは、テープで二重瞼を作ることばかり考えている太目のチャンミ(子役:キム・ミニョン)、口の悪さでは一番のジニ(子役:パク・ジンジュ)、怪力文学少女クモク(子役:ナム・ボラ)、ミスコリアを夢見るポッキ(子役:キム・ボミ)、堂々たる氷の女王スジ(子役:ミン・ヒョリン)。
 ナミはチュナが率いる「サニー」が、対立するソンミが属する「少女時代」との対決において、祖母から伝授された、方言の悪口を唱えることで彼らを退けることに成功。そのおかげでナミは「サニー」のメンバーとして認められることに。だがなぜか同じメンバーの中でもスジからは彼女は良く思われないのだった。
 そして学校の文化祭当日、「サニー」はダンスの演技を準備していた。だがその日、思いがけない出来事が発生する...

 386-486世代のノスタルジーに訴えるような映画はずいぶん作られてきたように思う。だがそのなかで女性を主人公にした映画はどれほど作られただろうか? 本作品はまさにその386-486世代の女性たちをメインのターゲットとして、彼らを主人公とした映画である。それと同時に彼女らの少女時代の日常を描くことで、より若い世代へのアピールも狙った作品だといえよう。
 映画は大人になったナミが友達を探していく過程と同時に、ナミの高校時代が平行して描かれる。そこで描かれるのは田舎者というハンデを背負ったナミが、ソウルっ子たちから受け入れられ、さらには、大人になってチュナからグループリーダーを引き継ぐことを通して、一人前のソウル女性として成長していく成長譚を軸に、80年代へのノスタルジーならびに中年女性たちの自分探しが描かれる。
 ただ、カン・ヒョンチョル監督は486世代の主流である元「運動圏」(=学生運動)的社会観とは一線を画しているようで、当時の学生運動を描いてもちょっと斜に構えている。例えば学生運動に走っていた兄は、警察に捕まっておそらく拷問に遭い、結局仲間を売って釈放される。そして今では自分が経営する工場で外国人労働者を搾取して訴訟沙汰になる始末。当時のデモの際の学生と警官隊の衝突も、学生たちをイデオロギーや正義に駆られた存在として描くよりは、女の子グループ「サニー」と「少女時代」との喧嘩と被せて描くことにより、むしろ当時の雰囲気、ソウルの街の風景として描いている。インタビュー付加映像を見ると、監督は、当時を軍事政権時代だと、ただ否定的に見るのではなく、その中であっても人々がそれなりに生きがいを感じたり、楽しみを感じていたそういう時代として描きたかった、という趣旨のことを話している。

 ただ、本作は人々の日常生活にある、このままでいいのかという疑問を出発点に描きながらも、問題提起的な志向性は、娯楽映画に徹するためかあえて避けているようだ。例えば、ナミがチュナに出会って過去の仲間探し&サポートにのめり込んでいくのは、今の自分が家族の中で果たすべき役割のなかに埋没し、自分らしさが発揮できない、あるいは自分とはどんな存在なのかを見失ってしまったところから出発している。だがその問題意識は(おそらく現代韓国主婦の多くが共感しそうな意識)、会社経営者の妻という自分自身の地位や社会的立ち位置自体に対する疑問にはつながらない。
 夫は妻が望めば気前良くお金をくれ、妻のやろうということにも干渉しない「理解ある」夫ではあるが、しかしなにぶん忙しく妻の悩みそれ自体には向き合おうとはしない。だが、ナミが苦海に身を沈めた仲間をいくらかでも救おうと、彼女を囲う店主に向けて小切手を切るとき、チャンミはその姿をかっこいいと賞賛したが、その小切手は元々夫が彼女に仲間たちのために使えと渡した小切手だったのだ。
 
 その意味では、女たちの生活上の問題から出発しつつ、女同士の友情を描いた意欲作ではあるものの、自己否定や革新とは無縁であり、あくまでハッピーエンドの娯楽映画に徹している。もっとも韓国の人たちは、激しい競争社会のなかで自己否定や自己改革にもはや飽き飽きしているのかもしれない。あくまで娯楽作として割り切って見るのが正しい鑑賞法だろう。

 本作の韓国公開は2011年5月4日。韓国での観客動員数は7,226,134人(2011.7月末現在、Cine21データ)。国内未公開だが、提供がCJ E&Mであること、そして韓国でかなりのヒットを記録したところから、国内で何らかの形で公開される可能性は高いだろう。ただ日本でのマーケッティングはかなり苦戦を強いられそうだ。日本人とは80年代軍事政権時代のノスタルジーを共有できるはずもなく、また韓流スターが出るわけでもない。全羅道方言を使った言葉の面白さも伝わらない。かといって韓国社会好事家が好きそうな社会派映画というわけでもなく、娯楽作として好作品ではあり、見に行けば日本人でも十分楽しめるのだが、その前に日本国内での宣伝ターゲット設定に苦労しそうだ。韓国ドメスティックな要素の大きい作品。

 カン・ヒョンチョル監督は済州道出身。龍仁大学映画映像科卒。短編映画を何本か製作しキャリアを積んだ後『過速スキャンダル』で長編デビュー。デビュー作が800万人クラスの観客動員を記録し、この一作だけで興行監督の名を欲しいままにした。第2作である本作も700万人代の大ヒットを記録。以上Daum映画データベースより。

 なお韓国盤Blu-ray(監督版)は初回限定で劇場版DVDがつく。Blu-rayはもちろん画像クオリティには文句がない。また韓国盤DVDはやはり初回限定で監督版本編、劇場版、特典ディスクの3枚組で販売されている。

原題『씨니』 英題『Sunny』 監督:강형철
2011年 韓国映画 カラー 125分(韓国劇場版)

DVD(韓国盤)情報
発行: CJ E&M 販売: Art Service 画面: 1080p (1:2.35) 音声: DTS-HD5.1 韓国語 本編:135分 リージョンA
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(劇場版DVD付2枚組) 2011年 12月発行 希望価格W33000

『過速スキャンダル』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201008/article_16.html


追記

本作品は、2012.3大阪アジアン映画祭にて上映予定。
http://www.oaff.jp/program/screening/11.html

日本公式サイト
http://sunny-movie.com/

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