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zoom RSS 中国映画の日本語字幕に出る人名はなぜカタカナなのか?

<<   作成日時 : 2011/10/21 22:46   >>

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 最近ネットを見ていると、中国語が出来る方などを中心に、映画の字幕に出てくる人名がカタカナによる音表記なのは不便だという声がかなり上がっている。

 平凡社サイトに「中国語音節表記ガイドライン」http://www.heibonsha.co.jp/cn/があがってたりするが、そもそも漢民族のしゃべる言語は中国標準語である北京語だけではない。香港映画中心に広く使われる広東語、台湾で最近増えている台湾語/閩南語、客家語、最近ぼちぼち出てきた上海語など、方言の範囲にとどまらない異なる言語存在し、それぞれ発音がかなり違う。しかも以前であれば、香港映画なら広東語、大陸映画なら北京語と単一の言語が使われることが多かったが、地域間の交流の進展や、台湾における本省人の社会的地位の向上と相まって北京語、広東語、台湾語、客家語などの多言語が混ざって使われるようになっている現状で、人名を何語の音を標準に記すのかということ自体問題になっている。
 そういうことを考えれば中華系映画における人名表記はカタカナではなく漢字でという要求が出てくるのは、至極当然である。読みは異なっても漢字表記は同じだからだ。

 とはいえ、今まで漢字表記が標準にならなかったのは次のような理由があると思う。

1. 国際映画市場の標準語が英語だから
 極めて当然だが国際映画史上における標準語は英語であり、後は多少フランス語が使われる程度であろう。ということは当然プレスキットに始まり、配役一覧等も英語、アルファベット表記の資料は充実しているだろうが、中国語映画であったとしてもそもそも中国語で書かれた資料があまり出てこないということがあるのではないか。
 さらに配給会社の担当スタッフも、たとえその会社で中華圏映画を配給したとしても、ご当人は中国語がさっぱりというケースも多々あるのではないだろうか。そうなると字幕の最終確認にはアルファベットの人名表記と字幕を照らし合わせる、という話になり、結局カタカナ表記に帰着してしまうのではないか。

2. 字幕もひょっとすると中国語から訳したり確認していない
 最近は中国語から字幕を作成する字幕翻訳家も育っているだろうから、今はそんなこともあまりないだろうが、ちょっと前までは中国語映画といえどもそもそも中国語から訳していないというケースが多々あって、その名残で人名はカタカナ表記という習慣が保たれているのではないだろうか。
 特に英語圏の映画やドラマだときっちり翻訳用の資料が制作元から提供されることが多いが、アジアだと必ずしもそういう資料をきっちり提供してくれるとは限らない。実際家内が韓国ドラマの字幕作成関連のアルバイトをやっていたことがあるが、韓国ドラマの場合制作元からきちんと資料が出てくることが少なく、仕方なくネイティブを雇って台詞を起こすということが多いのだそうだ。
 映画の場合、制作元がきちんと台本等の翻訳用資料を用意しなくても、国際映画祭に出品されている限りは英語に翻訳された字幕データとスポッティング材料は絶対あるので、それを使って英語から翻訳し、最後に中国語のわかる専門家の校閲を頼むということがありそうだ。
 また、商業字幕は最後に1秒間に4文字の日本語に納めなければならないという制約がある。つまり単に中国語が良くできれば字幕の翻訳が出来るというわけではない。すると今のケースとは逆に、中国語の材料から中国語の専門家が下訳を作成し、それを英語やフランス語しか読めない字幕専門翻訳家が英語字幕を見ながら、字幕らしく修正していくということもありうるだろう。その場合でも英語字幕との照らし合わせになるので、漢字の名前だと不都合が起こるのだ。

3. 字幕作成システムがUNICODEに対応していない
 映画に字幕をつけて上映用プリントを焼いたり、放映したり、ビデオディスクにオーサリングしたりするには、今日ではコンピュータソフトウェア上で作業をしている。しかしこれらのソフトウェアの日本語の文字コードがShift-JISしか対応しておらずUNICODEに対応していないと、中国人の人名には日本語で通常使われない漢字もあるため、表示不可能な場合が出てくる。
 たとえばTVの放映現場でよく使われるSSTという字幕作成・表示システムの場合、以前のバージョンではUNICODE非対応だった(SST G1から対応1))。こうなると面倒を避けるため、人名や地名は全部カタカナ表示でいこうという話になってしまう。中国のよく出てくる地名でShift-JISコードになくて困るのは「深圳」。これが特に「深セン」と表示されていたら、Unicode非対応システムを使っているから漢字表記できないと思って間違いないだろう。

 このような制約条件は、中国の国際映画市場におけるプレゼンスの拡大や、中国語専門字幕翻訳家の養成、それにコンピュータソフトの発展に従い徐々に解消されるであろうが、なかなか一朝一夕に解決される問題ではない。


 ところで、新聞やTVに関しても中国人や韓国人の漢字の姓名をどう読ませるかという問題が存在する。TVに関しては現在はほぼ相互主義で統一されている。つまり相手の国が現地読みを尊重するならば日本でも現地読みを尊重し、相手が尊重しないなら日本も日本式に読むという方式だ。この結果韓国人名は現地読み、中国人名は日本式読みとなっている。このような方針を決定した背景には在日韓国人の牧師崔昌華氏がNHKを相手取って起こした韓国人名の読み方を巡る訴訟 2)が影響を与えていると思う。
 新聞において中国人名の読み方は、朝日では現地読みのふりがなを振っているが、読売ではそのような対応なく、胡錦濤中国主席は仮にかなをふったとしても「こきんとう」。たぶんネトウヨはそれを朝日は中国におもねっているからだと批判するだろう。しかし中国語がわかる人には、あるいは中国人にとっても、胡錦濤が「フーチンタオ」だろうが「こきんとう」だろうがどうでもいいことだ。漢字さえわかれば現地読みもわかるのだから。しかも中国の何語を使うかによって「現地」読みさえ一つに決まらない。
 胡錦濤に「フーチンタオ」とふりがなを振ってもらって恩恵を被るのは、筆者のように中国語は分からないけど、英語ニュースに接する機会がある人間である。つまり「こきんとう」という読みしか知らないと、英語ニュースの上でHu Jintaoと出てきても誰のことかさっぱり分からないのだ。ところが「フーチンタオ」というふりがなに接していればHu Jintaoがすぐ誰のことだかピンとくる。筆者は中学生の時初めて英字紙を見てMao Zedongがさっぱり誰のことか分からず、調べてみたら毛沢東(もうたくとう)だったことが分かって衝撃を受けたことがある。「マオ・ツォートン」というふりがなを見たことがあれば、Mao Zedonが誰のことかすぐ分かったろうに。中国要人の日本語読みしか知らないと英字紙の国際ニュースを見ても何のことだか分からない、ということになりかねないのだ。
 つまり朝日は読者に英語ニュースにも接する人々を前提としており、読売はそうでないということなのである。

1)SST G1の新機能の説明書(カンバス サイト)参照
http://www.canvass-net.com/solution/products/sst_g1/pdf/sstg1.pdf
2)「崔昌華」(Wikipedia日本語版)参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B4%94%E6%98%8C%E8%8F%AF

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