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zoom RSS 男子高校生の微妙なパワーゲームを描く韓国映画『番人』

<<   作成日時 : 2011/10/01 07:26   >>

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画像 本作は韓国映画アカデミー製作の作品で、監督のユン・ソンヒョンは卒業生。今年韓国のインディー映画の中で一番の注目作と言って良いだろう。

 高校生であったギテ(イ・ジェフン)が死んだ。父子家庭で育ったギテ。自分の息子の死に納得のいかない父親(チョ・ソンハ)は、担任の先生の紹介を受けて、息子と親しかったというジェホ(ペ・ジェギ)に事情を聴きに行く。ジェホは事情はよく分からないと、ギテと親しかったのはベッキーことヒジュン(パク・ジョンミン)だと彼の電話番号を教え、父親は彼に会いに行く。しかし、ヒジュンは、ギテが死ぬ暫く前に転校しており、転校前までは何の問題もなく、死の当時の事情は分からないと言う。父親はギテがヒジュンともう一人の男の子とよく写真を撮っていたのだが、と尋ねると、彼はそのもう一人はドンユン(ソ・ジュニョン)であり、自分はギテとは高校入学後の付き合いだが、ドンユンはギテと中学以来の親友の筈だと言ってドンユンの電話番号を伝えるのだった。
 だが、ドンユンに幾ら電話してもつながらない。しかも一番の親友だったというのに、ドンユンは息子の葬式にも顔を出さなかった。ドンユンが何かカギを握っているのではと思ったギテの父は再びヒジュンを訪ね、ドンユンを探してほしいと頼む。仕方なくヒジュンはジェホに連絡すると、ドンユンはヒジュン転校後、学校を退学し、以来近所でもだれも見かけていないという...
 少年たちにコンタクトをとろうとすればするほど釈然としない気持ちが打ち消せなくなる父親。少年たちは何か隠しているのではないか...

 実は、ギテとヒジュン、ドンユンは中学以来のマブダチ。ドンユンがセジョン(イ・チョヒ)を気に入って、彼女と付き合うきっかけを作るために3対3の集団デートを企画した時も付き合った。ドンユンはお蔭でセジョンと付き合うようになったが、一方ギテはその中の一人ボギョンに告白されたのに彼女を振ってしまった。
 だが、ギテは、高校の不良とまではいかないものの煙草を吸ったりする斜に構えた生徒グループの「番長」格に。ジェホら新しい子分もできた。しかしギテは父子家庭であることもあって、他の生徒にコンプレックスを持っており、自分の地位を守るために虚勢を張ろうと必死だった。そんな中でボギョンを振ってでも友情を守ろうとしたヒジュンに対して、ジェホら子分をバックにいじめに近い悪ふざけを繰り返す。それに切れたヒジュンは彼と絶交しただけでなく、転校を決意する。ドンユンは二人を和解させようと努力するが何の助けにもならなかった。
 最大の親友だと思っていたヒジュンが離れて行ってしまった後、ギテは、ヒジュンに対する彼の態度を批判し、同時にセジョンにかまけるドンユンにも攻撃を。そしてドンユンとセジョンを引き離すために卑劣な手段に出る...

 男子高校生の微妙な社会関係とその息詰まるような緊張感をリアルに描いて秀逸。テーマ的には台湾映画『九降風(九月に降る風)』に近いものがある。体面、虚勢、権力、友情の微妙なバランスが徐々に崩れていくその丁寧な描写が優れている。ギテは自分の権力や体面を守ろうとして、自分の友情をまず犠牲にしてしまう。それは韓国人特有の親しくなったものへの「甘え」意識の発現だったかもしれない。だが、コンプレックス意識を持ったギテの「甘え」表現は、それはヒジュンやドンユンにとって受忍の限度を超えるものだった。こうして権力は獲得したものの友情は失ってしまうギテ。失ってからあわててギテは埋め合わせしようとするものの、結局それは功を奏しない。

 台湾映画『九降風』と同様、男の子たちの友情の崩壊を描いているが、印象はかなり違う。韓国社会全体の雰囲気がそうなのかは分らないが、少なくとも本作との比較でいえば、こちらの方が閉塞感が強く、また体面や社会的成功が重要視されているような印象。そして権力・虚勢(や金)のために友情を犠牲にするというテーマは男子高校生の世界に限らず普遍性をもつものであろう。
 また、危うい社会関係のバランス表現ということでは、韓国と日本との感覚や形式の違いこそあれ、いじめに遭わない様に人間関係に神経を使いながら暮らしている現代の日本の若者にも共感を持って見られるのではないだろうか。

 なお、映画の進行は、ギテの死後、父親が息子の友人を一人ひとり訪ね歩くシーンと、過去のギテら3人組の過去のシーンが交錯する。父親シーンは基本的には、過去シーンを交錯して挟むものの、父親シーンの時間軸は時系列的に進むが、過去シーンに関しては、おおむね時系列的ではあるものの時のその中で前後する場合があるので、やはり時間軸が交錯すると混乱する人はあらかじめ頭に入れた上で見ておいたほうがよい。

 本作は韓国では2011年3月3日封切り。韓国での観客動員数は18,388人(2011年4月末までの値, KOBISデータ)。第15回釜山国際映画祭、ニューカレンツ部門受賞。他ロッテルダム国際映画祭等に出品。日本ではアジアフォーカス福岡国際映画祭2011で英題の『Bleak Night』の名で上映された。

 監督のユン・ソンヒョンは1982年生まれ。ソウル芸術大映画科および韓国映画アカデミー卒業。2008年短編『子供たち』で全州国際映画祭短編部門審査委員賞受賞。他に短編『旅行劇』(2008)、オムニバス『バナナシェイク / 視線を越えて』(2011, 人権啓蒙映画第5集)等がある。

  韓国盤DVDの画質は優秀。最近韓国盤DVDはインディー映画の方が画質が良い傾向があるがこれは何なのだろうか。付加映像として監督の短編『子供たち』(ただし無字幕)と予告編が収録されている。

原題『파수꾼』英題『Bleak Night』監督:윤성현
2011年 韓国映画 カラー 117分(韓国公開版)

DVD(韓国盤)情報
発行: CJ E&M Pictures 販売:ART Service 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:117分
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2011年 6発行 希望価格W25300

台湾映画『九降風』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200901/article_14.html

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『視線を越えて』 - 韓国国家人権委員会啓蒙映画第5弾
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