yohnishi's blog (韓国語 映画他)

アクセスカウンタ

zoom RSS シン・サンオク監督1958年作『地獄花』

<<   作成日時 : 2011/09/26 12:03   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 2 / コメント 0

画像 シン・サンオク監督の7作目の作品で韓国映像資料院企画DVD-BOX「戦後の風景」収録作品。上京した兄を追って上京した弟の兄弟のソウルでの彷徨を描く。

 軍隊を除隊し田舎に戻ったドンシク(チョ・ヘウォン)は、出稼ぎに行くとソウルへ上京したまま消息を絶った兄ヨンシク(キム・ハク)の行方を追ってソウルへ上京した。だが上京するなりスリに有り金の大半を盗まれて困惑する始末。だがたまたま街角で出会った占い師に、もうすぐ兄に会えるはずだが、間もなく別れることになるだろうと予言される。
 果たして、占い師の予言通り、市場で走り去る兄の姿を見てドンシクは必死に追いかけ、何とか兄に出会うことができた。実は兄のヨンシクはパンパン(洋公主)のソーニャ(チェ・ウニ)のヒモ兼強盗団の頭目になっており、米軍の補給処などから物資を盗み出しては横流しをして食いつないでいた。そんなヨンシクは故郷の母に合わせる顔がないとわざと消息を絶っていたのだった。
 パンパンの集う置屋に赴いたドンシク。そこでやはりパンパンのジュディ(カン・ソニ)に出会う。ジュディは戦争で両親を亡くし仕方なくパンパンをして暮らしていたが、一日も早くこの生活から足を洗いたいと思っていた。ハンサムなドンシクに惹かれたジュディは、ドンシクに田舎に戻った時に自分も連れてってくれないかとそれとなく訊いてみるが、それには口を濁すドンシク。所詮パンパンの自分と結婚などしようと思わないのだと悲しく思うジュディ。
 一方、ソーニャに惚れきったヨンシクは大きく儲けたところでソーニャと結婚して田舎に連れていこうと考える。しかしソーニャはソウルを離れる気も今の生活から足を洗う気もないようであった。それどころか、ソーニャはヨンシクよりハンサムなドンシクに乗り換えようと、彼に粉をかけ始める。果たしてヨンシク、ドンシク兄弟の運命は...?

 戦争で焼け跡となったソウルの片隅でさまよう人々の生活のリアリティを描いた作品。テーマとしてはなかなか面白いのだが、シン・サンオク監督のまだ7作目とあってやはり演出やmise-en-sceneにまだまだ未熟なところ、現代の基準から考えるともたつくところが見られる。シン・サンオク作品は60年代になると、今日の基準で考えても観賞に耐えうる作品を残しているが、この当時はまだまだなようである。シン・サンオク監督及び撮影監督であるカン・ボムグとも日本留学組でないことが影響していると思われる1)。但し、部分的には自動車で車や列車を並行に追いかけるカメラワークなど、当時としてはかなり斬新で、今日の基準から見ても観賞に耐えうるカメラワークを工夫している部分が見られ、後の大映画作家の片鱗を見せている。またパンパンを天職と思い、自分の欲望のためには裏切りも辞さない悪女型の女性主人公、ソーニャの存在も当時としては型破りだったろう。ただ、先日紹介した『未亡人』や、ハン・ヒョンモ監督の50年代最大のヒット作『自由夫人』など、朝鮮戦争後の韓国社会の混乱が儒教社会をはみ出す新しい女性像を生み出させていたであろうことは間違いない。
 それと、男と女の気持ちのすれ違いといった現代的テーマが、当時の世相の中にきちんと展開されている点も評価したい。またチェ・ウニの若かりし魅力全開の姿が見られる点も高ポイント。

 本作品は、1958年4月20日公開。おそらく日本国内での公開は今までないものと思われるが、今回のDVD-BOXの発売で日本語字幕付きで見られるようになった。

 韓国盤DVDの画質は、今までの韓国映像資料院企画のDVD-BOXに準じる。フィルムの傷やほこりは取り切れていないが、韓国映像資料院のDVDの中では比較的良く修復されている方だと思われる。なお最初のタイトルロールは失われているが、本編の内容自体の欠落はないようだ。

1)シン・サンオク監督は東京美術学校(現在の東京芸術大学)に留学(1944-45年)してはいるが、映画は日本で学んだことはない。

原題『지옥화』英題『The Flower in Hell』監督:신상옥
1958年 韓国映画 モノクロ 86分(KMDBデータ)

DVD(韓国盤「戦後の風景」)情報
発行・発売 Blue Kino 画面: NTSC/4:3(1:1.33) 音声: Dolby1 韓国語
本編:86(本作)分 リージョンALL 字幕: 韓/英/日(On/Off可) 片面一層(4枚組) 2011年 7月発行 
希望価格W44000

「戦後の風景」DVD-BOX収録作品 『未亡人』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201108/article_9.html

「戦後の風景」DVD-BOX収録作品 『金』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201204/article_1.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『ある女子大生の告白』 - 新「メロドラマ」の誕生を告げた、韓国映画史上画期的な作品
 1958年に撮られた、シン・サンオクの7番目の劇映画で『地獄花』に引き続いて封切られた。経済的に支えてくれた祖母の死をきっかけに経済的に困窮する女子法科学生が、国会議員の愛人の娘だと偽って名乗り出ようとするというプロット。本作品は大ヒットし、シン・サンオクの名前を世に知らしめるきっかけとなった作品。前作の『地獄花』とは公開時期が3ヶ月程度の差しかないのに、作品の完成度は著しく上がり、今日見ても当時の大ヒットは十分頷ける。日本の流れを引きずった「新派調」に西洋の香りをかぶせた新しい韓国「メ... ...続きを見る
yohnishi's blog (韓国語...
2013/08/18 15:17
海外版DVDでしか見られない日本映画(4) 『黒い河』 - 小林正樹監督1956年作
 戦後の様相濃い、米軍厚木基地前である大和市にあるバラック長屋を舞台に繰り広げられる、焼け跡庶民達の食っていくための「闘い」を活写した小林正樹監督作品。原作は富島健夫、脚本は『あなた買います』と同じ松山善三。本作の封切りは『あなた買います』の後の1957年。 ...続きを見る
yohnishi's blog (韓国語...
2013/09/08 21:30

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
シン・サンオク監督1958年作『地獄花』 yohnishi's blog (韓国語 映画他)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる