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zoom RSS 「有銭無罪、無銭有罪」 - 韓国映画『ホリデイ』

<<   作成日時 : 2011/09/01 06:54   >>

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画像 先日韓国の三大迷宮入り事件を扱った映画をいくつか紹介したが、本作品も韓国現代史上非常に重要で象徴的な事件を扱った映画作品。それは韓国で有名な「有銭無罪、無銭有罪」という諺の起源となったチ・ガンホン事件(1988年10月)だ。監督は国内では『ホワイト・バレンタイン』『リベラ・メ』『風のファイター』が公開 or DVDリリースされ、また先日紹介した『グランプリ』を撮った、ヤン・ユノ。

 チ・ガンヒョク(イ・ソンジェ)は、弟分のイ・ジュファン(ソル・ソンミン)と共にソウルのバラックが立ち並ぶ貧民街に住む青年。だが、時はちょうど88ソウル・オリンピックの開催が決まり、全斗煥政権はソウルの大規模な再開発に乗り出していた。そんな中オリンピックの敷地にするために、チ・ガンヒョクの住む貧民街も再開発の対象になる。しかし、そこに住んでいる住民の多くは、朝鮮戦争休戦後、必ずしも土地に権利を持っていないにも拘らず、空き地にバラックを建てて住みついた人々。再開発に伴う移転でも、そもそも不法に住み着いたということで、何の補償を受けられるあてもない。当然住民たちは猛反対。そこへソウル市当局は刑務所に収容されているヤクザを投入して、住民の強制立ち退きに着手した。抵抗したガンヒョクは逮捕・投獄され、ジュファンは、囚人たちを連れてきた看守キム・アンソク(チェ・ミンス)に殺されてしまう。
 ガンヒョクが収監されていた刑務所に、あの血も涙もないアンソクが副所長として赴任。因縁の二人は再会する。ジュファンの仇を取ろうとするガンヒョクに、アンソクはさらに徹底的な処罰で対抗。当初、ガンヒョクの反抗的な態度に手を焼いていて、恩赦を期待してアンソクの犬になっていた牢名主のファン・デチョル(イ・オル)も、やがてアンソクの冷酷な扱いに翻意し、彼とガンヒョク、同房のキム・チャンギョン(チャン・セジン)、チェ・ミンソク(ヨ・ヒョンス)、グァンパル(キム・ドンヒョン)、サンホ(ムン・ヨンドン)、イ・ドクマン(イ・ボンギュ)らとともに脱走の機会を伺う。
 一方彼らが収監されている間に、世間では巨額賄賂を取って逮捕された政治家たちが、非常に軽い刑を宣告されたことが話題となり、囚人たちは不満を募らせていた。
 やがて、アンソクはやがて自分が所長として赴任する別の刑務所に、ガンヒョクら特に反抗的な囚人を移管することを決定。彼らは移送されることに。だが、ガンヒョクらはその機会を逃さなかった。ついに彼らは囚人移送車を乗っ取る。アンソクを殺す機会を得た彼らだったが、彼らは命まで奪うことはしなかった。ついに彼らは脱走する。だが、脱走しても家族から歓迎されないことが分かっていたドクマンだけは脱走を取りやめる。
 彼らは一旦ソウル駅近所のある民家に押し入り、いったん休んだ後、社会に戻ろうとするが、事態はそう簡単ではなかった。厳しい現実に直面した彼らは再び集結し別の民家に押し入るものの、今後どうしたらいいか分からない。とりあえず、海外に逃亡しようとするファン・デチョル、グァンパルとガンヒョクらは別れる。
 海外逃亡を図ったデチョルは、逃亡を助けてくれると思った元後輩に裏切られて、警察の手に。そして残されたガンヒョクらは...

 「有銭無罪、無銭有罪」とは金のある奴は無罪、金のない奴は有罪という意味である。当時、チョン・ドファンの親族らが巨額賄賂を取っていたことが明るみになったにもかかわらず、判決では微罪で済んでしまったのに対し、保護監護法という法律の存在により(2005年6月廃止)、単純な窃盗犯であっても本来の量刑より長い量刑を課すようになっていた。1)このため無銭飲食の様な悪質度の低い犯罪であっても、非常に長い量刑を課される一方、収賄など、政治家や権力者が課される可能性の高い罪では、非常に軽い刑が宣告されることが常態化していた。「有銭無罪、無銭有罪」とはこのような不公平な事態を告発する言葉であり、この事件のモデルになったチ・ガンホンが実際に事件現場でメディアら周辺を取り囲む人々に叫んだ言葉である。この言葉が出てきたバックグラウンドを、実際の事件をもとにフィクション化して描いたのが本作品。あくまでフィクションなので登場人物も実在の名前ではなく、実際の名前をもじった仮称になっている。
 モデルとなったチ・ガンホン人質事件は、当時韓国のTVで生中継され、そのチ・ガンホンの発言と共に、多くの人々の関心を引き付けたようだ。わが国でいえば浅間山荘事件に匹敵するような事件と言って良いだろう。

 本作品の前半のエピソード、特にガンヒョクとアンソンの対決ストーリーはほぼ完全なフィクション。但し、オリンピックを控えて貧民たちを、ヤクザなどの囚人を動員して、無理やり力づくで立ち退かせるというやり方は、実際によくおこなわれたことらしい。勿論法的には彼らは不法占拠であり、何の権利もないというのは確かなことなのだが...
 後半、彼らが脱走してからの経緯は、ネットなどの情報を見ると、場所や人などは架空化されているものの、ある程度実際に起こった経過を踏まえて描かれているらしい。映画の中では犯人たちは人質に対して比較的紳士的にふるまったように描かれているが、実際の犯人たちも紳士的だったようだ。
 また本作品ではビージーズの「ホリデイ」がテーマ曲として流れるが、これも実際にチ・ガンホンが警察に「ホリデイ」のカセットテープの差し入れを要求し、その歌を聴きながら死んでいったようである2)。ちなみに、本作品の映画化に当たり、ビージーズの「ホリデイ」著作権使用料が制作費のかなりを占めた様である。
 韓国の現代史ならびに社会理解、および軍事政権末期の世相を知るためには必見の一本と言えよう。

 本作品の韓国封切りは2006年1月19日。韓国での全国観客動員数は1,121,8626人(2006.2.12現在、Cine21データ)。本作品は残念ながら日本未公開。

 なお、筆者が入手したのは香港盤DVD。画質に関しては、ローパスフィルタ適用による輪郭強調は多少あるものの、解像度はかなり優秀で、比較的コントラストは高く、色彩も問題ない。ただ、NTSCの限界か、PAL優秀版の様な生々しさを感じられるようなところまでは今一歩届かず、微妙にベール一枚かぶったような雰囲気。これ以外に韓国盤DVD(KD Media 初発2006.4)が存在する。

1)この問題は、カン・ウソク プロデュース、キム・サンジン監督の映画『光復節特赦(公開邦題: ジェイル・ブレーカー)』でも象徴的に描かれている。
2) なお、このとき警察は間違えてビージーズではなく、スコーピオンの「ホリデイ」を差し入れたとの俗説が流れているが、Wikipedia韓国版の「チ・ガンホン」記事によれば、それは誤りで、実際は正しくビージーズの「ホリデイ」を差し入れたと書かれている(2011.9.1閲覧)。

原題『홀리데이』英題『Holiday』監督:양윤호
2005年 韓国映画 カラー 120分(韓国劇場公開版)

DVD(香港盤)情報
発行・販売 Universe Laser 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1/2 韓国/広東語 本編:122分
リージョン3 字幕:中/英(On/Off可) 片面二層(2枚組) 2006年10月発行 希望価格HK$50

チ・ガンホン (Wikipedia韓国語版)
http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%A7%80%EA%B0%95%ED%97%8C

チ・ガンホン人質劇 (Wikipedia韓国語版)
http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%A7%80%EA%B0%95%ED%97%8C_%EC%9D%B8%EC%A7%88%EA%B7%B9

『グランプリ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201105/article_14.html



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