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zoom RSS 高齢者の愛情を描く韓国映画『あなたを愛しています』

<<   作成日時 : 2011/08/27 06:38   >>

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画像 2011年公開の韓国映画。高齢者たちのほのぼのとした愛情を描くとともに、彼らの新しい社会関係性の構築の困難さを描いていく作品。原作は2007年に出版されたカン・プルの漫画「あなたを愛しています」(全3巻, Web連載もあり)で、2008年には演劇化され大学路で公演されて、演劇公演としては異例の12万人の観客を動員したという(DVD付属パンフレットより)。

 引退後、孫、子に囲まれながら牛乳配達のアルバイトをして小遣い稼ぎをしながら悠々自適で暮らす、ソウルに住むキム・マンソク老人(イ・スンジェ)。彼は口は悪くとっつきは悪いが、情のあるキャラクター。ある早朝、配達をしている途中でクズひろいをする老女(ユン・ソジョン)が、リアカーを引くのに苦労している姿を見かけ、手伝う。
 やがて、何度となく見かける彼女の姿にやがて彼は、彼女の姿を心待ちにするようになる。ところがある日、駐車場の入り口で彼女が駐車場管理のアルバイトをしている男性、チャン・グンボン(ソン・ジェホ)と一緒にいるのを見て、彼女には夫がいたのかとがっかりしてしまう。
 それからしばらくしたある日、キム・マンソクは公園で、痴呆の老女(キム・スミ)に出会い、彼女に引き回されて、町内あちらこちらをバイクに乗せて走り回らされることに。実は彼女は、チャン・グンボンの妻でチョ・スニ。その間、うっかり家に鍵をかけ忘れたため、彼女がどこかへ行ってしまったとチャン・グンボンは、クズ拾いの女性と大慌てで町内を探し回っていたのだった。
 そんな経緯で、キム・マンソクとチャン・グンボンは友達になり、またチャン・グンボンが彼の憧れの女性の夫であるとの誤解も解ける。クズ拾いの女性は、ソンと言い、名前がない。かつて江原道の田舎から、親の目を逃れて男と家出して来たものの、いつか男は家庭を出奔し、以来一人で辛い毎日を耐えて暮らしてきたという。
 キム・マンソクは彼女に国から年金が下りるはずだというと、彼女は知らなかったという。そこで、孫娘ヨナ(ソン・ジヒョ)が勤める洞事務所(日本の区役所に相当)に行くと、そもそも彼女は戸籍も住民登録もされていないことが分かり、事務所で新たに登録することに。事務所から彼女の名前を問われたマンソクは、即席で、彼女にイップニ(可愛い/きれいな人)という名前を付けるのだった。
 マンソクの彼女に対する気持ちを見透かした孫娘のヨナは、マンソクにきちんと彼女に自分の気持ちを告げるべきだと告げる...

 本作品は、前半は老人たちの淡い恋心をいユーモアを持って描いていく。だが後半は一転して、いささか悲劇的な様相を帯びる。そこで問題にされているのは、チャン・グンボン夫婦の悲劇に関していえば、高齢者をないがしろにするような社会的風潮である。チャン夫妻に子供たちはいるのだが、皆独立して生活しているばかりか、親とろくにコンタクトもとろうとしない。食堂をやっている娘がチャン夫妻に会いにやってくるのは、金の無心だけである。そうした中、チャン夫妻は子どもたちに「迷惑を掛けない」選択肢を取ろうとする。
 一方、マンソクとイップニの間に立ちはだかるのは、高齢者の恋愛に対する不寛容だろう。幸い、マンソクの孫娘はマンソクに理解はあるものの、イップニはそのような世間的モラルから自由になれなかった。おそらくそれだけではなく、マンソクに対する劣等感と申し訳ないという感情がないまぜになって、ああいう選択が彼女のささやかな自尊心を守る、唯一最後のとりででもあったのだろう。

 これらの背景に存在するのは、やはり急速な社会の変化に伴う社会関係の急速な変動であり、それらに今日の老人たちが翻弄されているということだろう。今まで、韓国の老人たちは、家族というタテ型の社会関係(多世代家族)に守られて過ごしてきた。だが、急速な社会関係観の変化や、社会移動の増加に伴い、多世代家族が解体過程にある中、タテ型の社会関係の衰退により、韓国の老人たちはどのように自分たちの社会関係性を再生すべきか戸惑っている状況にある。
 おそらく、韓国の老人たちは、多世代家族に守られたタテ型関係から、同世代同士連帯する、慣れないヨコ型の関係へと急速に移行を迫られつつあり、それに向けておずおずとその一歩を踏み出している段階にあるのだろう。それがマンソクとグンボンのいささかぎこちない友情であったり、マンソクとイップニのおずおずとした恋愛関係であったりするのではないか。

 またイップニが、文盲でかつ戸籍も住民登録もない存在として描かれているのを見ると、われわれ日本人から見ると、韓国社会の、植民地支配ー朝鮮戦争を経た社会的混乱の根深さ、深刻さを感じさせられる。もっとも日本でも最近「幽霊戸籍」となっている行方不明老人の大量存在が指摘されており、無戸籍者はいないものの、日本においても、このように社会的に遺棄された高齢者が大量に存在しているというのは、きちんと認識されていないだけで、実のところ韓国と大して変わりないのかもしれないが。

 監督は今日の棄老社会的傾向に批判的であるのは確かであろう。但し、老人の恋愛感情を肯定的に描いているところを見ると、それが単純に、以前の様な多世代家族関係の復活の主張では必ずしもないように思われる。

 なお、出演俳優はTVドラマ『ベートーベン・ウィルス』で痴呆になるオーボエ奏者を演じていたイ・スンジェ、そして『オルガミ(罠)』で恐ろしい姑を演じていたユン・ソジョン、『麻婆島』でも監督とパートナーを組んでいたキム・スミ、『あの時あの人たち』で朴正熙大統領役を演じるなど多数の映画に出演しているソン・ジェホなど。オ・ダルスも助演で顔を出している。

 本作品は2011年2月17日封切り。韓国の観客動員数は1,580,450人(2011.4.17現在。Cine21データ)。韓国ではヒット作となり、ネット評でも老人たちの愛情を温かく描いた作品として高評価を受けている。特にDaum映画では9.6と極めて高評価。日本未公開。

 監督のチュ・チャンミンは1966年生まれ。大邱大学卒業。1998年『すごい話』『太陽はない』助監督、1999年『幸福な葬儀社』助監督・脚本、2000年、短編映画『4月の夢』発表、第4回富川(プチョン)国際映画祭韓国短編部門受賞、2001年フィンランド、第31回タムフェレ国際短編映画祭、スペイン、第29回ヒュエスカ国際映画祭、フランス、第19回エクサン-プロヴァンス国際短編映画祭出品。2005 年『麻婆島』を発表しヒットする。『麻婆島』以来高齢者社会に関する問題意識はあると思われる。2006年『愛を逃す』を経て、2010年本作撮影。2011年封切り。

 なお、韓国版DVDの画質に関しては、先日紹介した『世界で一番美しい別れ』 に準ずる。


原題『그대를 사랑 합니다』英題『I love you / Late Blossom』監督:추창민
2011年 韓国映画 カラー 118分(韓国劇場公開版)

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: KD Media 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:118分 リージョン3
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(付加映像付き2枚組) 2011年 6月発行 希望価格W23100

『愛を逃す』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201002/article_3.html

『世界で一番美しい別れ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201108/article_11.html

カンプル原作漫画(Web版) 「あなたを愛しています」 Daum漫画俗世間 (韓国語)
http://cartoon.media.daum.net/webtoon/view/iloveu

2012.12付記
本作は、『拝啓、愛しています』との邦題で2012.12.22より国内劇場公開。
http://www.alcine-terran.com/haikei/ (公式サイト)

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