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zoom RSS 韓国三大迷宮入り事件の一つを描いた映画『あいつの声』

<<   作成日時 : 2011/08/21 00:23   >>

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画像 韓国1990年前後の三大迷宮入り事件の一つ、1991年ソウル江南で起こったイ・ヒョンホ君誘拐殺害事件をモデルに製作された作品。監督は『ユー・アー・マイサンシャイン』のパク・ジンビョ。韓流スターのカン・ドンウォンが出てはいるのだが、まったく顔が見えないという出演の仕方をしているのが災いしてか(かえってファンの欲求不満を募らせそうだ)、今までのところ国内未公開。

 1991年、軍事政権末期の社会的混乱の中で、世間を揺るがす凶悪事件が連続して発生していた。その中で放送局DBSの人気ニュースキャスター、ハン・ギョンベ(ソル・ギョング)の息子サンウ(イ・ヒョンチョル)が公園の遊び場から突然失跡。ギョンベが帰宅すると妻、オ・ジソン(キム・ナムジュ)は、なかなか帰宅しない息子を心配して、警察に通報しようかとギョンベに相談するが、ギョンベは様子を見ようとそれを押しとどめる。そんな中、犯人からサンウを誘拐した、警察に連絡すれば息子の命はないとの連絡が入る。
 再び警察への通報を求める妻に、ギョンベは「犯人は金だけが目的だから、自分たちだけで解決できる。俺を信じて任せろ」と、警察に連絡せず、身代金を犯人に渡すことを決意する。身代金を借金して車に積み、自動車電話で犯人と連絡を取りながら、犯人の指示通り金を乗せた車のドアを開け放し駐車するギョンベ。犯人は車を置いて家に帰れと指示するが、犯人以外の者に金を取られてはと心配なギョンベは陰に隠れて犯人が金を取りに来るのを見ていた。だが犯人は自動車電話に電話をかけてきて、それに出たギョンベに、なぜ指示通り現場を離れないのかと怒る犯人。
 ギョンベが家に帰ると、妻は心配のあまり警察に通報しており、捜査員たちが家で待ち構えていた。ギョンベは自分を信じないのかと妻を怒るが後の祭り。犯人の次の指示を待つしかなかった。
 その後犯人は何度も指示を出してくる。金浦空港前に金を積んだ車を置いておけ、あるいは、いったん外出させ、ごみ箱などにメモの残しては次々と指示をだし、金を置く場所を指定したり、金を入金する口座を指定したり... 電話も逆探知されないよう短く切られた。
 だが、捜査員たちは頼りなかった。ジソンの横に必ずいるようにと命令された女性のチャ捜査員(コ・スヒ)は、犯人の指示を受けて、子供が心配のあまり捜査員に何も告げず、お金を振り込みに出たのも見逃すし、身代金を積んだトランクの中に潜伏していたキム捜査員(キム・ヨンチョル)は、本人は犯人の顔を見ることのないまま、麻酔薬をかがされて失神し、気が付くと裸で放り出されている始末。
 ギョンベとジソンの間にも隙間風が吹くと同時に、ギョンベ夫婦の捜査員たちへの不信感、失望感も募り、それを感じ取った捜査員たちも、ギョンベ夫婦に対して距離を置いたり、またへまをやらかした捜査員同志の間でも、互いに罵り合い始まる。息子を助けられない、そして犯人が捕まらないことへのいら立ちが、犯人に対抗する側のチームワークをぎくしゃくさせるようになってきた。
 そんな中、ギョンベ夫婦と不和だった親戚イ・ジェジュン(イム・ジョンユン)が有力容疑者として捜査線上に浮かぶ。さっそく当時最新の科学的操作方法であった声紋鑑定が行われるのだが...
 
 DVD収録の付加映像によると、題材は、パク・ジンピョ監督が、テレビ・ドキュメンタリー制作時代に本件を扱ってから、映画化したいとずっと温めていたものだという。既に三大迷宮入り事件の一つである華城連続殺人事件に関して、これをモデルにして作られた『殺人の追憶』という紛れもない傑作が存在する中、本作は被害者家族同士、ならびに被害者家族と捜査員との間の、事件の進行に従って深まる、心理的・人間関係的葛藤に焦点を当てることによって、もう一つのソリューションを追求している。『殺人の追憶』を超えるのは難しいものの、基本的には狙い通りの映画を構成することに成功しているのではないだろうか。もう一点の狙いは、当時公訴時効が迫っていた本件の情報提供を改めて呼びかけることも目的だったようだ。

 なお、被害者の父親が人気ニュースキャスターという設定はフィクションであるが、フィクションであることを明確にするために、被害者名や被害者家族の名前は、実名とは変えている。ただしWikipedia韓国版の記述を見ると1)、場所などは変えてはいるものの、車に身代金を置いておくように指示したり、ごみ箱に指示メモを置いて行動を被害者家族に指示したり、身代金を振り込ませようとしたこと、さらに事件発生後44日目に死体が発見されたという経過は、実際もそうだったようだ。また、被害者家族と不和だった親戚が有力容疑者として浮上したというのも実際にあったことのようだ。

 ただ、日本人から見て、韓国人の社会制度不信は目を見張るものがある。ニュースキャスターという国民から注目される存在が、誘拐事件を解決するのにまず、警察を関与させずに解決しようと迷いなく決断するという設定には驚くしかない(多分日本であれば、自分の社会的立場も考えると、自ら警察不信を持っていると表明するような行動は慎むだろう)。いかに韓国の警察が市民からの信頼のない存在であるかが如実に示される。韓国映画を注意深く見ていると、ところどころで警察や社会制度に対する韓国人のどこか信じきれないという潜在的不信感が表明されているのに出会うのだが、本作はその極め付けと言えよう。韓国社会に関心を持っている方には、一見の価値のある作品。ただ、もうちょっと欲を言えば、夫婦関係の掘り下げが若干弱いと言えようか。事件発生前の夫婦関係がどのようなものであったのかを掘り下げていれば、事件発生後の夫婦関係の変化(映画を見ている限り、どこか根本的な部分で相互の信頼関係がないように見える)がより説得力を持って提示できたのではないかと思うのだが、モデルとなる被害者家族があった分そのあたりは逆に難しかったのかもしれない。

 なお、カン・ドンウォンが犯人役に抜擢されているとはいえ、主に声の出演で、姿が見える場合は顔は全く映されないので、カン・ドンウォン目当てに本作を見ようとする人は注意が必要だろう。

 なお、本作は2007年2月1日、ソルラル(旧正月)映画として封切り。観客動員数は290万33人(2007年2月末時点、Cine21データベース情報)。日本未公開。

1) イ・ヒョンホ君誘拐殺害事件(Wikipedia韓国語版)参照
http://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%9D%B4%ED%98%95%ED%98%B8_%EC%9C%A0%EA%B4%B4_%EC%82%B4%ED%95%B4_%EC%82%AC%EA%B1%B4

原題『그놈 목소리』英題『Voice of a Murderer』監督:박진표
2006年 韓国映画 カラー

DVD(韓国盤)情報
発行: CJ Entertainment 販売: Bear Entertainment 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語
本編:122分リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(付加映像付き2枚組) 2007年 9月発行 
希望価格W15400(再発価格)

三大迷宮事件の一つカエル少年失踪事件をモデルにした『子供たち』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201107/article_10.html

付記: 2011.9.3からのK-Movieセレクションでの国内上映が決定したようだ
K-Movieセレクション2011サイト(『あいつの声』上映予定)
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/lineup/20110722_7765.html

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コメント(2件)

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シネマート六本木で「カン・ドンウォン祭」関連企画で9月3日から上映されますね。
これをきっかけに、日本語字幕付きDVD発売ということにはならないでしょうか。
yuki
2011/08/23 13:21
教えていただきありがとうございます。さっそくK-MOVIEセレクションへのリンクを追加させていただきました。SPOが上映権を購入しているとすれば、十分国内版DVD発売は考えられると思います。というより今回の上映はDVDのプロモーションではないでしょうか?
yohnishi
2011/08/23 17:26

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