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zoom RSS 『中国コピー商品対抗記』

<<   作成日時 : 2011/07/25 21:15   >>

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遠藤健治,2007,『中国コピー商品対抗記』,日経BP社(日経ものづくりの本)
 前回紹介した遠藤健治氏の「中国低価格部品調達記」が面白かったので、同著者の別の本を読んでみた。こちらは中国のコピー商品にどう対抗するかという本。前著の一年前に出版されている。やはり、ただ、中国のコピー商品をけしからんと言うだけではない視点が良い。

 遠藤氏によれば、コピー商品が蔓延するのにはそれなりに訳があるという。つまりオリジナル製品が見逃している市場が存在するか、もしくはオリジナル製品のマーケッティングミスの存在だ。
 例えば、その国に需要があるにもかかわらず進出しない(利権が絡んでいたり、進出が面倒だ等の理由で)、その国の所得水準に比べてあまりにも製品価格が高すぎる、その製品に対し、改良して付加価値をつけてほしいという需要が存在するのに、そのような需要に対して対応しない(ライセンシーによる制約や、作り手の独善的な視点や価値観の押し付け等)、ちょっとした工夫で同じ機能を維持しつつコストダウンできるのに、コストダウンしようとしない(コピー商品に学べ)、等々である。
 具体例を挙げると、例えばマイクロソフトはオフィスソフトを中国でも2万6千円程度で売っている(マイクロソフトのソフトウェア価格戦略は国際的にほぼ同額で売るという戦略である)が、中国の収入レベルを考えると、この値段は日本では1本40万円程度に相当する額であり、そんな値段でそもそもコピーを使わせずに正規品を買わせようという方が無理 注1)。これはCDやDVDなどの他の著作権コンテンツに関しても同様で、適正に買ってほしいなら、当地の収入水準に合った適正価格を設定すべきである。
 その一方でトヨタ車は日本と同じ価格か、あるいはそれ以上の価格で販売しているにもかかわらず、コピー商品はないという。実は形の上でのコピー商品は存在するのだが、厳密な意味でのコピー商品はありえない。つまり中国車とトヨタ車の価格差はそのまま品質の差として比例して現れるため、トヨタ車の品質を評価する者は、その値段に納得して支払っている一方、中国車の品質はその値段なりで、中国車をトヨタ車だと思って買う者は存在しないので、そもそもトヨタ車の市場と低品質低価格の中国車市場とは全く別の市場であり、形の上でのコピー商品がいくら出たとしても、トヨタ車市場には実害がないのだという(もちろんトヨタ車でないものをトヨタ車だと偽って売るというのは問題外に悪い)。
 そして、コピー商品が蔓延するということはその商品に対して高い評価と憧れが存在することであり、そもそもその市場で評価されない商品にはコピー商品も存在しえない、ということは理解すべきであるという。さらにオリジナルメーカーは元々優位性を持っており(コピー商品を開発する側にしてもそんなに高額には売れないので利益率を確保するのもそう簡単ではない)、また中国市場の大きさを考えれば、コピー商品以上にコストダウンをして、コピー商品を蹴散らすという戦略も十分可能だという。

 ただそうは言っても一歩間違えればコピー商品によって市場から駆逐されてしまう可能性は高い。そのあたりの遠藤氏の主張を、さらに筆者なりに整理しなおしてまとめると次のようになるだろう。

1) そもそもオリジナル品より安いコピー品(形が似ているだけでも)が作れない
これは本書には指摘がない状況だが、理論的にはありうる。この場合、コピー品は存在しない。とはいえ、こういうことが可能な事態は極めて少ないだろう。
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2) オリジナルの価格は高くても、オリジナルとコピーの価格と品質や付加価値が比例しているか、オリジナルのコストパフォーマンス(CP)が高いのでオリジナルとコピーの棲み分けができている
高価格少量販売。上のトヨタ車のような事例や、ルイ・ヴィトンなどのブランド物とまがい物との関係。ルイ・ヴィトンのまがい物の大半はまがい物と分かって買っているのであり、そういう物を買う層はそもそもオリジナル品の顧客層ではない。
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3) オリジナル品とコピー品の価格差に比べ、品質や付加価値の差があまりないか、場合によるとコピー品の方が部分的であっても付加価値に優れる=オリジナル品のコストパフォーマンスが悪い。最悪、品質や価値がコピー品に逆転される。

市場撤退を迫られる、非常に危険な事態
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4) オリジナル品とコピー品の価格差がほとんどないにもかかわらずオリジナル品のコストパフォーマンスが圧倒している。

オリジナル品が市場を席巻
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 2)のケースではそもそもコピー品とオリジナル品の市場が異なるので、実は実害が少ない。多少コピーされても有名税と割り切って鷹揚に構えていることも時に必要。ただ怖いのは、コピー品で儲けた資金を投資し技術力を高めて、3)を作ってくるようになる企業。

 そして3)になると日本企業はコピー品によって市場から駆逐されてしまう。この低価格コピー品対抗策として最悪の対応は、とにかくコストダウンすればいいんだと品質や付加価値を落としてコストダウンすること。価格のたたき合いになったら日本企業は中国企業に勝ち目はない。値段はコピー品並みになっても品質、CPが落ちてしまうと、高品質は看板倒れだったのかとかえってネガティブな評価を受けブランドイメージは失墜、たちまち市場撤退に追い込まれる。
 従ってこれに対応するには、コピー品が追い付けないように、先手を打ってより高品質、高付加価値、ハイCPを目指していくしかない。それには、中国企業も進化してくるので、高品質を維持しているだけではだめ。コピー品のなかにはオリジナル品に足りない付加価値を高めた製品を投入してくるものもあるが、それに対し先手を打って開発していくような姿勢が必要。また高付加価値のなかには、機能を増やすというだけではなく、製品イメージ戦略なども含まれる。そして技術流出にも気を付けなければならない。
 そしてできれば2)でより上を目指していくか、4)を目指していくべきである。

 このような遠藤氏の姿勢は、コピー品の蔓延には、中国人は嘘つきだのずるいなどと相手をやみくもに非難する前にまず自分の生産販売戦略ミスがないか考えろ(潜在的市場の見逃し、作り手・売り手の都合の押しつけ)、そして中国市場や企業をバカにせず、そこから学べの2点に集約されると思う。

 また遠藤氏は日本企業は人件費をケチってモノ・設備に投資する傾向にあるが、中国企業はその反対にモノ・設備をケチって人材に投資する傾向にあり、それが日本企業の基礎体力低下、さらには中国企業に対して情報収集力で後塵を拝する原因になっているとの重要な指摘も行っている。このため特に日本の中小企業で中国企業の餌食になるケースが多発しているという。バブル崩壊以後とかく人件費削減でしのごうとする傾向にある日本企業に対しては耳の痛い指摘であろう。
 日本企業の欧米企業に対する戦略的優位性は人材にその秘訣があったにもかかわらず(いわゆる日本型経営)、優秀な人材が取れることが「当たり前」に思えた瞬間、そのことが忘れ去られ、グローバルゼーションの名のもとに欧米企業のまねをして人件費削減に血道を上げる... それが日本企業の戦略的優位性を崩している可能性があるのではないだろうか。
 これは前回のレビューに述べたように日本企業こそ日本製品の優秀性を(当たり前だと思って)正しく評価できなくなっている(→そしてやみくもなコスト削減に走るが、思ったほどのコスト削減にならない)ということに通じるように思う。

 遠藤氏の主張に共感できる部分も多い。

 例えば、現在(というより10年以上前から)、東欧市場は韓国製品で席巻されている。東欧と韓国経済は深く結びついており韓国がくしゃみをすれば東欧は風邪をひくという状況は10年以上前から続いている。で、10年ほど前に1月ほど韓国に滞在する機会があって、その時に東欧から韓国に来ていた留学生にその理由を聞くと、実は東欧でも日本製品に対するあこがれがあり、需要があるのだが、肝心の日本企業の大半が東欧市場に関心がなく、その隙を韓国企業が埋めた結果こうなったのだという。
 東欧の共通語はロシア語であり英語は通じる可能性はかなり低い。しかも東欧の一か国一か国の規模はたいして大きくはない。だったら面倒な東欧なんかで展開するよりか、とりあえず英語の通じるアメリカか西欧、そして巨大な潜在マーケットのある中国で展開した方が、楽だ、と失われた90年代以降日本企業の多くが考えるようになったのだろう。実際、1980年代以前よりも、現在の方が日本の新聞に出る東欧の情報量が少なくなったように感じるし、とにかく日本全体が東欧に関心がなくなった、という気がする。
 韓国企業製品をこの本に書かれたコピー商品扱いするのは失礼かもしれないが、しかしこれはまさに、日本企業による潜在市場の見逃しの好例だろう。

 ただ遠藤氏の主張をまとめた上で考えてみると、初期開発投資にコストがかかる割には、比較的低コストでコピー品が作れてしまうような商品であると、中国コピー企業に対し、オリジナル開発企業としての優位性が十分に発揮できずに、中国市場のコピー品にしてやられてしまう可能性は高いように思う。この場合初期開発コストが中国市場におけるマイナス要因としてのみ作用することになる。
 たとえ開発初期コストが高くても減価償却が済んでいるような製品、あるいは中国市場以外に償却できる市場が存在するような製品であれば、中国市場で展開できる可能性もあるのだろうが...


1)この点は非常に同感。各国の収入格差を無視して売り手の一方的な価格政策押し付けた揚句、著作権を守らないと嘆いても、そもそもマーケッティングが間違っているものを単に相手のモラルの問題に転嫁するなといいたくなる。とくにマイクロソフトは韓国市場において一時、ライバルのワープロソフト(アレアハングル)潰しのため、ワードを10000ウォン(約1000円弱)で売りまくっていた時期があって、1000円で売れるものに、1万5000円以上の希望価格を設定するなよと怒りを覚えたことがある。

中国コピー商品対抗記 (日経ものづくりの本)
日経BP社
遠藤 健治

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http://yohnishi.at.webry.info/201107/article_12.html

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