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zoom RSS Made in Chinaは本当に安いのか?

<<   作成日時 : 2011/07/18 10:27   >>

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遠藤健治,2008,「中国低価格部品調達記」,日経BP(「日経ものづくり」の本)
 この本は「日経ものづくり」で連載された記事に手を加えて単行本化したものだそうだが、ともあれ中国製は安いと安直に考えるとかえって高コストになりかねず、低コストの中国製部品や製品を導入するにはどのようなポイントを押さえなければならないのかについて語っている。

 本書で語られている、中国の部品・製品供給市場としての特色の主だったものは次のような点であろう。

・日本企業の発想: 高い品質の部品を納入するのは売り手の責任 中国企業の発想: 品質水準は買い手の要求事項。従って品質向上のための費用は買い手が負担すべき。

・日本のモノづくりの考え方は、製品を構成する一つ一つのユニットが厳密かつ高精度に規格を満たしており、それを組み上げた製品も当然高品質・高精度になるという考え方。それに対し中国の部品は安い代わりに品質のばらつきは避けられないので、部品を組み合わせる中で、一つ一つの部品のばらつきをどう調整するかという発想が必要。

・中国市場に存在する製品は玉石混合。多くの部品や製品は安いが品質もそれに比例して悪い一方、高品質の製品や部品は値段も比例してそれなりに高い。だが、安くて高品質な部品や製品は確かに存在する。しかしそれを探し出すには膨大な手間が必要である。
・中国市場の一般的傾向としては、中国の平均的所得水準がまだまだ低いこともあって、品質を犠牲にしても低価格を追求する傾向にある。
・その一方中国の部品や製品は高い品質のものが存在したとしても、品質をコントロールしてばらつきを抑えることはまだまだ苦手。
・そもそも中国には熟練工がほとんどいないので安い。逆に熟練工を確保しようとすると、長期勤務を実現するには、労働条件も向上させなければならず、コストは上昇する。一定程度の熟練を要する高品質製品の生産コストは、国際的にはどこも大差ないと考えるべき。
・中国の工場は熟練度、技術はまだまだでも臨機応変の対応は日本メーカーより融通が利くし、文句も少ない。
・メーカーが生産技術も生産設備もすべて準備しているはずという常識は中国では通じない。場合によっては、生産設備・技術指導含めたうえで作らせるということも必要。逆に生産管理の甘い工場に、こちらがすべてお膳立てして好きなように利用する、という使い方もある。

 結局、総論としては中国製品の低コストを生かすには日本側のカバー(安くて高品質なものを探す手間、あるいは品質にばらつきがあってもそれをカバーする手間)が必要だという話である。当たり前だが、日本と同じクオリティで安くできるという話ではないということだ。
 その点を承知していないと結局、安い中国部品を導入しても、その品質の低さやばらつきにともなうリワーク(修正作業)に追われ、日本的な品質保証にまつわるサービスも期待できないので結局高くつくということもまれではない、という話だ。

 こう考えると、本当に中国製の部品を採用することが本当の意味でコストダウンにつながっているのか非常に疑問がわいてくる。もちろん著者は中国では両立困難な低価格とハイクオリティの両立を目指すところに職人芸的な生き甲斐を感じている... ということは分かる。
 だが、そこに至る膨大な手間とロスを考えると本当の意味でコスト低減が実現しているのか疑問に思えてきた。結局安くて低品質な中国部品を採用することで、日本の部品を使っていれば必要のないような消耗するリワークや予備作業を強いられ、生産性の低下を招いているのではないだろうか。しかもそういった、消耗的な作業が「サービス残業」で賄われたりして... そうだとすれば、結局日本の労働者を搾取することで、見た目上の「コスト低減」が「到達」されているのでは、という疑問が浮かぶ。だとすれば安価な中国製部品を採用することがダイレクトに低コストを実現するのではなく、安価な中国製部品が日本の労働搾取を推進する引き金となって見かけ上の「低コスト」が実現されているのでは... という疑問を禁じ得なくなった。

 そして、実際は必ずしもコストダウンにつながっていないにもかかわらず、日本企業のとりあえず安さの中国頼み、という姿勢が取引先の日本の下請け部品メーカーを疲弊させ(結局いくら頑張ってもその部分が金銭的に評価されない)、日本企業のハイクオリティな技術や志気の低下を招きつつあるのではないか?
 日本企業の高い品質&サービスクオリティに慣れきった元請け企業は、それが「タダ」だと錯覚し、下請けに無理難題のコスト低下を押し付けたり、とりあえず安いからという理由でむやみに中国発注に変更しているのではないだろうか。だとすれば日本企業が最も日本企業を正しく評価できていないことになる。

 本当に日本企業は値段の高さに胡坐をかいているだけでコストダウンの努力が不足しているだけなのだろうか? もちろん慣習的に今までの商慣行を変えないというのではダメだろうが、もっと日本企業自身が日本企業の技術力やサービスクオリティを金銭的にきちんと評価する、ということが必要なのではないだろうか? でないと日本企業自身が技術的向上のインセンティブを失ってしまうし、気づいてみたら日本の全土にペンペン草が生えているというディストピアもまんざら空想の世界だけでもないようなのだが...

 また、半導体代理店の話の様に、競争の激化は表面的な価格の低下は招いても、クオリティ保障的な部分を含めた側面では必ずしも低コストを実現しないという話も興味深かった。Made in Japanの半導体の「ハイクオリティ」は、必ずしも技術力の問題ではなく、むしろ日本の流通の仕組みにある、という点も盲点だった。

中国低価格部品調達記 (日経ものづくりの本)
日経BP社
遠藤 健治

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『中国コピー商品対抗記』
遠藤健治,2007,『中国コピー商品対抗記』,日経BP社(日経ものづくりの本)  前回紹介した遠藤健治氏の「中国低価格部品調達記」が面白かったので、同著者の別の本を読んでみた。こちらは中国のコピー商品にどう対抗するかという本。前著の一年前に出版されている。やはり、ただ、中国のコピー商品をけしからんと言うだけではない視点が良い。 ...続きを見る
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内 容 ニックネーム/日時
なかなか真っ向からこの点を指摘される事が無いので評価したい、被害者は数多でしょうにお世話になってるお客さん(中国)の気分でも害したらと合うんの呼吸か、安いだけの中国製粗悪品、それも大手スーパーや名のある小売店で今だに大手を振って出回る”目玉焼きも出来ない焦げ付かないフライパン””歩きも出来ない通勤革靴””体中痛くなって眠れないマットレス”さらにこものではハンコを押せない朱肉”....きりもなし.....悪貨は良貨を駆逐するの喩えで結局のとこ潰れるのは良貨の日本で空洞化は進行してゆく.....経営は目先の稼ぎなのか.....結局は中国の思うつぼに......生き残りのつもりが番町皿屋敷....ミイラとりがミイラとも言いますか....正直者の日本の会社は小さいとこから潰れていくって段取り?極力”中国製”とあったら買わないことにはしてます。
安物買いの銭失い
URL
2011/07/18 10:59
コメントありがとうございます。
Made in Chinaがすべてダメだと言うつもりはありません。グローバル化でコストダウン圧力が高まっているのは事実ですから。

ただ、目先の安さに惹かれずに、アフターサービスや品質保証といった、目に見えない総コストを考えた上で判断してほしいということです。またその上であまりコストが変わらないようだったら日本企業を選択するという、日本の元請け企業に日本の下請け企業を育てる視点が必要なのではないかと。もちろん日本の企業が胡坐をかいているだけでさらに努力が必要という部分もあるとは思いますが。

ただ日本流「サービスはタダ(実はサービスコストは価格に反映されている)」に慣れてしまい、日本の元請け企業自体がサービスや商品性を見極める目を失ってしまっているのかもしれません。

日本企業も中国企業のように「サービスはタダ」はやめて、サービスコストの外部化が必要なのかもしれません。それがグローバル化への道なのかも。
yohnishi
2011/07/19 12:46

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